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北陸は春一番が吹いたものの、その後の強い寒気南下で大雪

饒村曜気象予報士
日本海の寒冷低気圧に伴う雲の渦巻(2月15日15時)

北陸地方に春一番

 令和4年(2022年)2月15日、北陸地方で前年より5日早く春一番が吹きました。

 新潟地方気象台が北陸地方の春一番を発表するようになったのは、平成11年(1999年)からで、このうち平成12年(2000年)と平成18年(2006)は春一番が観測されなかったことから、データは21年分しかありません。

 このため平年値はないのですが、21年分の平均をとると2月21日になります(図1)。

図1 北陸地方の春一番
図1 北陸地方の春一番

 春一番は、北日本と沖縄を除いて、立春以降、最初に吹く南よりの強風のことで、春分までに条件を満たさない場合は、「春一番が観測されず」となります。

 定義は地方によって多少変わりますが、北陸地方の春一番の定義は次4つの条件が目安です。

北陸地方(新潟県、富山県、石川県、福井県)における「春一番」

(1) 「立春」から「春分」の間であること。

(2) 日本海で低気圧が発達すること。

(3) 新潟、富山、金沢、福井のいずれかの気象台で風速(10 分平均値)10メートル以上の南成分(東南東~西南西)の風が観測された場合。かつ、上の気象台を除く新潟、富山、金沢、福井のいずれかの気象台で風速(10 分平均値)6メートル以上の南成分の風が観測された場合。

(4) 最高気温が前日より高いか、ほぼ同じであること。

 2月15日9時の段階で、日本海に低気圧があり、金沢地方気象台で南西の風11.6メートル、新潟地方気象台で南東の風8.7メートルと、南よりの最大風速を観測しています。

 また、9時段階で前日より気温が1度程度高くなっていましたので、文句なく春一番です。

 ただ、日本海の低気圧は、冷たい空気の塊である寒冷低気圧で、普通の低気圧とは違っています。

 このため、例年のように、春一番の吹いた後に一時的に寒くなっても、暖かい春に向かうのではなく、春一番のあと、最強の寒波が南下して寒くなる見込みです。

寒冷低気圧

 寒冷低気圧は、上空の低気圧で地上天気図ではほとんど現れません

 しかし、今回は地上天気図でもはっきり現れているほどの強い寒冷低気圧です(図2)。

図2 地上天気図(2月15日15時)
図2 地上天気図(2月15日15時)

 そして、気象衛星でみると、日本海の低気圧に対応する雲は、台風のように、はっきりした雲の渦巻きです(タイトル画像参照)。

 一般的に、寒冷低気圧は動きが遅く、長続きします。

 そして、寒冷低気圧の南東側では下層に暖気が入って大気が非常に不安定となり、激しい対流活動が起きますが、今回の寒冷低気圧も同じです。

 日本海の寒冷低気圧は、動きが遅く、2月17日の段階でも日本海にあります(図3)。

図3 予想天気図(2月17日9時の予想)
図3 予想天気図(2月17日9時の予想)

 寒冷低気圧の西側では等圧線がほぼ南北方向にのび、その間隔が混んでいます(図3)。

 このため、強い北風によって平年よりも強い寒気が西日本に向かって流れ込む状態が続く見込みです。

 そして、寒冷低気圧の南東側に当たる東北地方の日本海側から北陸では大気の状態が非常に不安定となり、大雪が降りやすい状態が続く見込みです。

 2月16日~17日の48時間降雪量は北陸地方の山沿いを中心に多くなり、1メートルから1メートル50センチとなるところもある見込みです(図4)。

図4 48時間予想降水量(2月16日~17日)
図4 48時間予想降水量(2月16日~17日)

 気象庁は早期注意情報を発表し、5日先までに大雪警報の可能性を「高」「中」の2段階で発表しています。

 これによると、2月16日は北海道南部、17日は福井県と岐阜県で「高」となっており、北陸地方を中心に「中」があります(図5)。

図5 大雪警報を発表する可能性(早期注意情報)
図5 大雪警報を発表する可能性(早期注意情報)

 2月16日から18日は、西日本を含め日本海側の広い範囲で雪となり、まとまった雪となりそうです。

 また、福岡の2月16日の最高気温は4度という予想で、西日本は今冬一番の寒さとなりそうです(図6)。

図6 福岡の最高気温と最低気温の推移(2月16~22日は気象庁、2月23日~3月3日はウェザーマップの予報)
図6 福岡の最高気温と最低気温の推移(2月16~22日は気象庁、2月23日~3月3日はウェザーマップの予報)

 寒冷低気圧は普通の温帯低気圧とは違います。

 最新の気象情報を入手し、注意・警戒をしてください。

タイトル画像、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

図6の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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