Yahoo!ニュース

南鳥島で日本で一番早い初日の出 夏より太陽に近いのに寒いのは地軸の傾きが原因

饒村曜気象予報士
令和3年(2021年)の南鳥島の初日の出

地軸の傾きが季節を作る

 地球は1年間かけて太陽のまわりを公転しています。

 地球と太陽の距離は同じではなく、7月頃に1億5210万キロと遠くなり、1月頃に1億4960万キロと近くなります。

 つまり、1月頃は7月頃に比べて太陽に近く、その分だけ太陽からのエネルギーを多く受けています。

 太陽から多くのエネルギーをもらっている1月頃が寒いのは、地球の回転軸が23.4度という傾きをもって太陽の回りを公転しているからです(図1)。

図1 地球の自転と公転
図1 地球の自転と公転

 太陽の光が斜めから入射する場合と、真上から入射する場合では、単位面積当たりの光の量が違いますが、地球の回転軸が傾いていることにより、より真上から太陽の光を受けることで暑くなる時期と、より斜めから太陽の光を受けることで寒くなる時期ができます。

 北半球の1月は、太陽の光が斜めに当たって寒くなる時期にあたっており、太陽が近くなって温かくなる効果を打ち消しています。

 地軸の傾きが、夏と冬ができる原因です。

 ただ、同じ夏と冬でも、高緯度の国と低緯度の国では様相は少し違います。

 高緯度の国では、冬は太陽が当たらず極端に寒くなるため、夏と冬の気温差が大きくなり、夏と冬の二季という感じになります。

 逆に、低緯度の国は 1年中、ほぼ太陽が真上にあって常夏という感じになるため、雨季と乾季の 二季という感じになります。

初日の出

 地球の回転軸が傾いていることにより、季節によって日の出の様子が異なります。

 冬の頃は、同じ緯度であれば、南から夜があけますが、春分の頃は、同じ緯度であれば同じ時刻に夜が明けます。

 タイトル画像の左側は、令和3年(2021年)1月1日の夜明けで、気象衛星で見ると、南東側のほうから夜があけています(タイトル画像参照)。

 これに対し、夏至の頃の夜明けは北東側のほうから夜が明けてゆき、春分と秋分の頃の夜明けは、東側の方から夜が明けています(図2)。

図2 春夏秋冬の6時の気象衛星可視画像(いずれも令和3年(2021年))
図2 春夏秋冬の6時の気象衛星可視画像(いずれも令和3年(2021年))

 このため、日本の国土で一番早い「初日の出」は、本土のはるか南東の海上の南鳥島となり、時刻はで5時27分です。

 ただ、南鳥島には、自衛隊と気象庁の職員が業務のために常駐しているだけで、定住している人はいません。

 人が定住している場所となると、小笠原諸島の母島だと思われますので、初日の出は6時20分です。

 また、北海道・本州・四国・九州でいちばん早く初日の出を見られるのは富士山の山頂で、6時42分です。

 さらに、北海道・本州・四国・九州の平地でいちばん早く初日の出を見ることができるのは、千葉県の犬吠埼で、6時46分です。

 初日の出は南東方向にゆくほど早くなりますので、北海道の納沙布岬は、犬吠埼よりも東にあっても、初日の出は6時49分と、犬吠埼より3分遅れです。

 そして、6時51分が東京、6時53分が仙台、6時59分が新潟、7時1分が名古屋、7時5分が大阪と金沢、7時6分が札幌、7時10分が高知、7時16分が広島と那覇、7時17分が鹿児島、7時22分が福岡となっています。

 西高東低の冬型の気圧配置の中での初日の出ですので、太平洋側の地方では見ることができた人が多かったと思います。

 初日の出の時刻は、毎年ほぼ同じです。

 初日の出を見ることが出来なかった人は、来年、今年の初日の出の時刻に東の空を見てください。

 常に、初日の出の時刻に雲があるわけではありません。

図1の出典:饒村曜(平成26年(2014年))、天気と気象100、オーム社。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事