熱帯低気圧発生

 グアム島のあるマリアナ近海で、11月29日9時に熱帯低気圧が発生しました。

 この熱帯低気圧が発達して台風になるか、この時点でははっきりしていません(図1)。

図1 地上天気図(11月29日9時)
図1 地上天気図(11月29日9時)

【追記(11月30日13時)】

 気象庁は、11月30日9時にマリアナ諸島で、熱帯低気圧が台風に発達したと発表しました。

 台風21号の発生です。これにより、本文の一部を書き換えました。

 過去の台風の統計では、12月の台風は北緯10度くらいを西進し、フィリピンに上陸することがほとんどです。

 ごくまれに北上するものがありますが、日本の南海上の北緯20度位までしか北上しません(図2)。

図2 12月の台風の平均経路
図2 12月の台風の平均経路

 とはいえ、小笠原諸島は、平成15年(2003年)12月1日に台風21号が接近したように、10年に1回くらいは12月に接近することがあります。

 気象庁では、11月29日21時に、この熱帯低気圧が24時間以内に台風に変わるとして5日先までの進路予報を発表しています(図3)。

図3 熱帯低気圧の進路予報と海面水温(11月29日21時の予報)
図3 熱帯低気圧の進路予報と海面水温(11月29日21時の予報)

 これによると、熱帯低気圧は海面水温が、台風が発生・発達する目安の27度を上回る29度以上という海域を西進しながら台風に発達します。

 そして、台風になったあと、北上しながら向きを東に変え、小笠原諸島に接近しそうです。

 つまり、10年に1回くらいしかない、12月の小笠原諸島接近になりそうです。

令和3年(2021年)の台風

 令和3年(2021年)は、7月~9月に発生数が若干少なかったことから、台風21号が発生したとしても、平年より少ない発生数となっています(表1)。

表1 令和3年(2021年)の台風(11月29日現在)と平年の台風発生数・接近数・上陸数
表1 令和3年(2021年)の台風(11月29日現在)と平年の台風発生数・接近数・上陸数

 台風の中心がそれぞれの地域のいずれかの気象官署等から300 キロ以内に入った場合を、台風の接近といいますが、熱帯低気圧が台風21号になって小笠原諸島に接近すると、接近数は平年並みの12個となります。

 また、台風の中心が北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合を「台風の上陸」といいます。

 令和3年(2021年)は、これまで、台風8号が7月に宮城県石巻市付近に、台風9号が8月に鹿児島県枕崎市付近に、台風14号が9月に福岡県福津市付近に上陸し、これまでに平年並みの3個が上陸しています。

遅い上陸台風

 気象庁では、台風の定義として北西太平洋(東経180度以西で南シナ海を含む)の熱帯低気圧のうち、最大風速が17.2メートル以上のものとしています。

 そして、このような基準が適用された昭和26年(1951年)以降について、台風統計を行っています

 ちなみに、昭和25年(1950年)以前については、このような定義がなく、「この頃がこの台風の最盛期で、最大風速は10メートルであった」というように、今でいうと熱帯低気圧であるものまで台風と呼んでいました。

 また、熱帯低気圧と温帯低気圧の区別がはっきりしておらず、天気図に前線を引くこともありませんでした。

 このため、台風が温帯低気圧に変わるということは考えておらず、台風で発生したら、最後まで台風でした。

 台風統計がある昭和26年(1951年)以降で、最も遅く上陸した台風は、平成2年(1990年)の台風28号です(表2)。

表2 上陸日時が遅い台風
表2 上陸日時が遅い台風

 なお、上陸日時が遅い台風6つのうち、半分の3つが和歌山県に上陸です。

 昭和25年(1950年)以前の台風については、上陸として扱っている台風でも、現在の基準からみれば、上陸時にはすでに「熱帯低気圧」に衰えていたり、温帯低気圧に変っていたりするものが含まれています。

 また、逆に当時の乏しい観測貸料では、上陸した台風を見逃している場合も十分に考えられます。

 以上のことを承知で古い資料で調べると、4個の台風が11月と12月に上陸したことになっています。

明治25年 (1892年)11月24日に東海地方に上陸した台風。

明治27年(1894年)12月10日に九州南部か11日に関東地方に上陸した台風。

昭和7年(1932年)11月15日に房総半島に上陸した台風。

昭和23年(1948年)11月19日に紀伊半島に上陸した台風。

 このうち、最大の被害が発生したのは、今から89年前、昭和7年(1932年)の台風です。

 子供の成長を祝う七五三の日である11月15日に上陸したことから、通称「七五三台風」と呼ばれた台風です(図4)。

図4 「七五三台風」の経路(図中の白丸は6時の位置)と昭和7年11月14日18時の天気図
図4 「七五三台風」の経路(図中の白丸は6時の位置)と昭和7年11月14日18時の天気図

平成2年(1990年)の和歌山

 平成2年(1990年)は、最も遅く台風が上陸した年というだけでなく、台風上陸数が6個と、当時、上陸数の年間最多を記録しました。

 その後、平成14年(2002年)に台風が10個上陸し、平成5年(1993年)と平成28年(2016年)に台風が6個上陸しています。

 近年、台風が多く発生する年と、全く上陸しない(上陸数0)年が出現するようになり、年による差が大きくなっています。

 このため、平成2年(1990年)の6個上陸は、現在は2位タイの記録となっています。

 また、平成2年(1990年)の6個上陸のうち、4個が和歌山県上陸です(表3)。

表3 平成2年(1990年)の上陸台風
表3 平成2年(1990年)の上陸台風

 このとき、筆者は気象庁予報課で予報官をしていましたが、台風当番の班長として、偶然ですが、当番の関係で和歌山県に上陸した4個の台風すべての台風上陸情報をつくりました(図5)。

図5 平成2年(1990年)に和歌山県に上陸した4個の台風の経路
図5 平成2年(1990年)に和歌山県に上陸した4個の台風の経路

 3回目の21号、4回目の28号になると、台風発生時から「ひょっとしたら当番の関係で〇〇日頃に和歌山県上陸」と思ったりしました。

 また、台風上陸情報を作るときには、「後日混同しないように上陸地点の名称をかぶらせない」と考えましたが、紀伊半島南部の知られている地名としては白浜町と田辺市しかなく、結果的に白浜が多くなってしまいました。

 このことは、後に、筆者が和歌山地方気象台長として和歌山に赴任する縁だったのかもしれません。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。

図1、表1、表2の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:饒村曜・宮澤清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計 月別発生数・存在分布・平均経路、研究時報、気象庁。

図3の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典:饒村曜(平成5年(1993年))、続・台風物語、日本気象協会。

図5、表3の出典:気象庁資料をもとに筆者作成。