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気象予報士試験に合格しただけでは気象予報士になれない 11月21日は気象予報士の誕生日

饒村曜気象予報士
天気予報(提供:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

気象予報士になるには

 気象予報士になるには、気象業務支援セターが実施する気象予報士試験に合格しなければなりませんが、合格しただけでは気象予報士になれません。

 気象予報士試験に合格したあと、気象庁に登録の申請をし、登録したことで初めて気象予報士になります。

 気象業務法では次のようになっています。

第二十四条の二 気象予報士になろうとする者は、気象庁長官の行う気象予報士試験(以下「試験」という。)に合格しなければならない。

2 試験は、気象予報士の業務に必要な知識及び技能について行う。

第二十四条の四 試験に合格した者は、気象予報士となる資格を有する。

第二十四条の二十 気象予報士となる資格を有する者が気象予報士となるには、気象庁長官の登録を受けなければならない。

 ただ、気象予報士試験に合格後、登録申請する期間が明示されていませんので、気象庁も随時受け付けています。

 合格後、しばらくたってから登録申請をしてもかまいませんので、気象予報士試験に合格しても、すぐに登録をしない人も少なからずいます。

 老化防止などのため毎年受験して複数回合格している人や、実際に気象に係る業務をすることになった時点で登録することを考えている人などがいるからです。

 気象庁では、気象予報士試験の合格者から申請があった場合、「気象業務法の規定による罰金刑以上の刑に処せられ、その執行が終った日から2年を経過しない者」や、「気象業務法の規定による登録の抹消の処分を受け、その処分の日から2年を経過しない者」以外は登録しています。

 つまり、事実上、登録申請すれば登録されて気象予報士になります。

最初の登録通知書

 最初の気象予報士試験は、平成6年(1994年)8月28日に行われ、2777人が受験し、500人が合格しました。

 合格率は18パーセントでした。

 気象庁は、平成6年(1994年)11月21日には、それまでに手続きを済ませた441人に対して登録通知書を伝達しています。

 つまり、この日が気象予報士誕生の最初の日、つまり、誕生日です。

 同年12月18日には、第2回気象予報士試験が行われ、313人が合格しています。

 また、翌7年(1995年)3月19日には、第3回気象予報士試験が行われ、277人が合格しています。

 このように、平成6年度(1994年度)の気象予報士試験は3回行われましたが、平成7年度(1995年)以降は、8月と1月の年2回の実施となっています。

 令和3年(2021年)8月22日には第56回の気象予報士試験が行われ、これまでの受験者の合計は20万7472人で、合格者は1万1449人と、合格率は5.5パーセントとなっています(図1)。

図1 気象予報士試験の受験者数と合格率の推移
図1 気象予報士試験の受験者数と合格率の推移

 受験者数が一番多かったのは、平成18年(2006年)8月27日の第26回試験で、5074人、一番少なかったのは、平成8年(1996年)1月28日の第5回試験で、2461人でした。

 気象庁のホームページによると、令和3年11月1日現在、1万1084人が気象予報士として登録されています。

 都道府県別にみると、東京都が2113人と一番多く、次いで神奈川県の1219人、千葉県の950人、埼玉県の678人、大阪府の600人となっています。

 人口1万人当たりでみると、一番多いのが千葉県の1.51人、次いで東京都の1.50人、神奈川県の1.3人、宮城県の1.2人、北海道の1.0人となっています。 

 つまり、人口比で気象予報士が多いのは、首都圏や北日本で、逆に少ないのは西日本といえるでしょう(図2)。

図2 人口比で気象予報士が多い都道府県と少ない県
図2 人口比で気象予報士が多い都道府県と少ない県

 

気象予報士になってみて

 気象庁情報利用推進課では、気象予報士に対して10年に1回、アンケート調査を実施しています。

 平成26年(2014年)7月の気象予報士現況調査結果によると、気象予報士資格の満足度について、満足と非常に満足を足すと61パーセントになっています(図3)。

図3 気象予報士資格の満足度
図3 気象予報士資格の満足度

 10年前に比べると、11パーセントも増えています。

 満足の理由としては、社会的地位が向上したが33.5パーセントと一番多く、地域の防災力向上に役立つ地域活動など社会貢献できたからが19.3パーセントとなっており、就職または起業に結びついたが12.2パーセントとなっています。

 一方、不満と非常に不満を足して14パーセントありますが、10年前に比べると半減しています。

 不満の理由として、資格を生かせる場が少ないが一番多く59.9パーセントもあります。

 次いで、就職に結びつかないからが17.4パーセントとなっています。

 10年前の調査では、複数回答とっており、単純比較はできないのですが、資格を生かせる場が少ないが一番多く76.5パーセント、次いで就職に結びつかないからが40.2パーセントとなっています。

 気象予報士という資格の大きな問題点は、この2つと思われますが、満足している人が増えたのは、少しは改善傾向にあるのではないかと思います。

 今年、令和3年(2021年)5月17日から、約半年にわたってNHKの朝ドラ「おかえりモネ」が放送されました。

 モネと呼ばれている主人公の永浦百音が気象予報士になって活動をする物語ですが、ドラマの中では、気象予報士が、社会の色々なところで活躍していました。

 多くの人が持っている「気象予報士はテレビで天気予報を話す人」というイメージを変えたのではないかと思います。

 気象予報士が、社会の色々なところで活躍しているということが、もっと認知されれば、気象予報士という資格の大きな問題点は改善するのではないかと思います。

図1の出典:気象業務支援センターのホームページをもとに筆者作成。

図2の出典:気象庁のホームページをもとに筆者作成。

図3の出典:気象庁ホームページに加筆。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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