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台風14号接近 急加速のち減速して温帯低気圧に変わるときは要注意

饒村曜気象予報士
台風14号の雲と地上天気図(9月14日21時)

台風14号の停滞

 台風14号が東シナ海で速度を落とし、ほとんど停滞しています。

 最盛期のフィリピンの東海上から沖縄の南海上では、中心気圧が905ヘクトパスカルの猛烈な台風まで発達していましたが、現在は992ヘクトパスカルまで衰えています。

 しかし、引き続き東側には広い雨雲を伴っています。

 この台風14号は、週末にかけて温帯低気圧に変わりながら東進し、西日本を襲う見込です(図1)。

図1 台風14号の進路予想(9月15日3時)
図1 台風14号の進路予想(9月15日3時)

 台風の進路予想は、最新のものをお使いください

 台風14号が存在している東シナ海の海面水温は、台風が発達する目安の27度より高いのですが、台風に向かって多量の水蒸気が流入する状況ではなくなっています。

 このため、台風としては勢力を維持することが難しくなり、徐々に中心気圧があがり、風も弱まってきました。

 日本上空の強い西風の領域が北上していたことから台風14号の動きが遅かったのですが、この強い西風の領域が南下してきましたので、今後、台風14号が温帯低気圧に変わりながら急加速する見込みです。

台風の急加速と温帯低気圧の発達

 台風が温帯低気圧に変わる時に急加速することは珍しいことではありません。

 そして、ほとんどの場合、温帯低気圧に変わったあとに急減速し、その温帯低気圧が発達します。

 台風が遠くにあると油断していると、あっと言う間に近付き、そしてなかなか去らない、それどころか風や雨がさらに強まるという、危険な台風も混じっています。

 過去には、昭和29年(1954年)の台風15号や、平成3年(1991年)の台風19号など、北日本に大きな被害をもたらした台風もあります(図2)。

図2 洞爺丸台風の速度変化
図2 洞爺丸台風の速度変化

 昭和29年(1954年)の台風15号は、洞爺丸台風と名付けられた台風です。

 青函連絡船「洞爺丸」が函館港沖で座礁沈没するなどで1500名以上がなくなり、青函トンネル建設のきっかけとなりました。

 また、平成3年(1991年)の台風19号は、青森県でリンゴの被害が顕著だったことから、通称「リンゴ台風」と呼ばれている台風です。

台風14号は低気圧に変わってからが危険

 気象庁の予報では、台風14号は9月15日0時に東シナ海で992ヘクトパスカルですが、16日21時には山陰沖の日本海で温帯低気圧となり、中心気圧は988ヘクトパスカルと、台風の時より発達しています。

 台風の進路予想は、台風が温帯低気圧に変わる16日21時までですが、専門家向けの予想天気図では、温帯低気圧に変わりながらさらに発達し、北日本を襲う予報となっています(図3)。

図3 専門家向け予想天気図(網掛け部分はまとまった雨が降る領域)
図3 専門家向け予想天気図(網掛け部分はまとまった雨が降る領域)

 気象庁では5日先までについて、警報を発表する可能性を「高」「中」の2段階で発表しています。

 これによると、台風が東シナ海にある9月15日~16日は、西日本に停滞する前線が活発化したことにより九州を中心に大雨の可能性があります。

 また、9月17日~18日は、台風から変わった低気圧が発達することで、東北と北陸で暴風の可能性があります(図4)。

図4 早期注意情報(15日・16日の大雨と17日・18日の暴風)
図4 早期注意情報(15日・16日の大雨と17日・18日の暴風)

 台風14号は、台風としては衰弱期に入っているといっても、停滞前線を刺激して大雨を降らせたり、低気圧に変わって暴風が吹く可能性がありますので、油断できません。

 厳重な警戒が必要です。

タイトル画像、図1、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:饒村曜(平成5年(1993年))、続・台風物語、日本気象協会。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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