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東シナ海を北上中の台風12号は温帯低気圧になっても注意継続

饒村曜気象予報士
前線による雲と台風12号の雲(8月22日18時)

台風12号のもととなった熱帯低気圧

 令和3年(2021年)の台風12号は、8月としてはちょっと珍しい現象です。

 台風12号の発生は8月20日15時ですが、そのもととなっている熱帯低気圧は、8月10日15時に中部太平洋から西太平洋に入ってきたものです(図1)。

図1 台風12号の経路と海面水温(8月22日9時)
図1 台風12号の経路と海面水温(8月22日9時)

 8月16日には一時的に熱帯低気圧が消えていますが、熱帯低気圧は海面水温が台風が発達する目安の27度以上という海域を進みましたので、雲の渦は継続して西進を続けました。

 秋が進んでくれば、太平洋高気圧の勢力の南への張り出しが弱くなり、太平洋高気圧の南縁に沿って、台風や熱帯低気圧が中部太平洋から日付変更線を越えて西進することがあります。

 しかし、8月は太平洋高気圧の勢力が強く、太平洋高気圧の南縁に沿って西進する台風は少なく、むしろ、太平洋高気圧の中で発生し、ゆっくり北上してきたり、迷走する台風が多くなります。

 令和3年夏の太平洋高気圧は、みかけより弱いのかもしれません。

宮古島付近を通過

 台風12号は、8月22日14時すぎに沖縄県・宮古島付近を通過しました。

 台風12号は、中心付近より南側に発達した積乱雲の塊を伴っており、宮古島では、台風が通過してからのほうが、風や雨が強くなっています(図2)。

図2 宮古島の気圧、風速、1時間降水量(8月22日)
図2 宮古島の気圧、風速、1時間降水量(8月22日)

 台風12号は、通過前より通過後の吹き返しの風に警戒が必要な台風です。

 その後も北上を続けますが、台風の進行方向には前線が次第に形成されています(図3、タイトル画像参照)。

図3 台風12号の進路予報と気象衛星画像(8月23日3時の予報)
図3 台風12号の進路予報と気象衛星画像(8月23日3時の予報)

 このため、台風12号は日本海で温帯低気圧に変わる予報ですが、温帯低気圧に変わったとしても、引き続き、前線に向かって湿った空気を送り込むことには変わりがありません(図4)。

図4 予想天気図(8月23日21時の予想)
図4 予想天気図(8月23日21時の予想)

 大雨に対して注意継続が必要です。

タイトル画像、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。

図2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図4の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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