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温帯低気圧のような台風8号が上陸へ 中心から離れている場所での強い風や雨に警戒

饒村曜気象予報士
台風8号の雲(白矢印は中心付近、7月26日15時)

台風8号の上陸

 日本の東海上の台風8号が西進して東北から関東に接近・上陸の可能性があります(図1)。

図1 台風8号の進路予報(7月26日21時)
図1 台風8号の進路予報(7月26日21時)

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 この台風は、日本海に抜けた後、温帯低気圧に変わる予報ですが、7月26日3時から12時までの予報では、日本海に入った後、熱帯低気圧に変わるという予報でした。

 7月15日に台風6号に発達する熱帯低気圧が発生した時点から、日本海に入ったら温帯低気圧になるという予報でしたが、一時的にせよ、熱帯低気圧に変わるという予報になったのは、この台風の特殊性もあります。

 というのは、この台風は、温帯低気圧と台風の中間の性質を持っているからです。

 多くの台風のように、中心付近には高い雲がなく、上空の暖かい空気の塊(暖気塊)もありません。

 一般的に、低気圧は熱帯低気圧と温帯低気圧に分けられます。

 水蒸気が水滴に変わるときの熱をエネルギーとする熱帯低気圧は、水蒸気が豊富な熱帯の海上で発生・発達します。

 一方、冷たい空気が暖かい空気の下に潜り込むという位置エネルギーの変化をエネルギー源とする温帯低気圧(単に低気圧と呼ぶことが多い)は、冷たい空気と暖かい空気が接している前線上で発生・発達します。

 ただ、数は少ないのですが、台風のような温帯低気圧や、温帯低気圧のような台風も存在します。

 低気圧も多様性があります。

 台風8号は、対流圏の下層は熱帯低気圧と同じ性質が見られますが、上層では寒気を伴っていて温帯低気圧の性質も持っています。

 温帯低気圧のような台風ですので、一般的な台風のように、強い風が吹いたり、大雨が降りますが、違う注意点があります。

 それは、中心部より中心から離れた縁辺部で風や雨が強いということと、一般的な熱帯低気圧より広い範囲で強風が吹くということです。

台風8号の雨や風

 台風8号は中心付近に高い雲がありませんので、中心付近より、縁辺部で強い風が吹き、強い雨が降ります(タイトル画像参照)。

 台風8号の西側や北側に発達した雲の塊があります。

 台風8号は、日本の東を北西へ進み、7月27日の午後には東北から関東に接近し、上陸するおそれがありますが、台風の中心が接近する前の27日朝から発達した雲がかかる関東地方や東北地方の沿岸部では注意が必要です(図2)。

図2 雨や風の分布予報(7月27日3時の予想)
図2 雨や風の分布予報(7月27日3時の予想)

 また、台風8号は、台風を発達させる水蒸気はやや少なく、暴風域を持つほどには発達しないと予想されていますが、上空に寒気が入ってくるなど、温帯低気圧として発達する要素を持っていますので、大雨を降らせる可能性もあります。

 また、台風が暖かくて湿った空気を持ち込みますので、大気の状態が非常に不安定となり、28日にかけて雷を伴った非常に激しい雨が降り、大雨となる所がある見込みです。

 東北地方と東日本では、土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水や氾濫、暴風や高波に警戒・注意が必要です。

 また、竜巻などの激しい突風や落雷にも注意が必要です。

タイトル画像、図1、図2の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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