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南東に進む大きな移動性高気圧は気温が上がらない

饒村曜気象予報士
西日本を中心に広がる晴天域(4月26日6時40分の衛星画像)

春の移動性高気圧と秋の移動性高気圧

 春や秋には、中国大陸から東進してきた高気圧が、日本付近を3日から4日ごとという周期で通過します。

 この高気圧を移動性高気圧といいますが、移動性とは、「ほとんど動きのない」に対する言葉です。

 春の移動性高気圧と秋の移動性高気圧では、少し状況に違いがあります。

 春の移動性高気圧は、発達しながら通過することが多いため、日本付近は高気圧の中心より西側の領域(後面)に入る期間が長くなります。

 高気圧の後面は、南からの暖かくて湿った空気が流れ込みやすく、また中国からの細かい黄砂の塵がやってくることから、視程が悪くなります。春霞という言葉があるように、空が霞むことが希ではありません。

 これに対し、秋の移動性高気圧は東に進むにつれて衰弱したり、中心が停滞しがちであるため、日本付近は、北方からの澄んだ寒気が流れ込みやすい高気圧の中心より東側の領域(前面)に入る期間が長くなります。

 また、中国大陸も湿っているため、偏西風等にのってくる塵が少ないことから、視程が良くなります。

 このため、「天高く馬肥ゆる秋」と言われるように、天が高くなったように感じます。

 現在、日本列島を通過中の移動性高気圧は、発達しながら通過する予想なので、典型的な春の移動性高気圧です(図1)。

図1 天気図(左は4月26日3時の実況図、右は4月27日21時の予想図)
図1 天気図(左は4月26日3時の実況図、右は4月27日21時の予想図)

 このため、週明けは、ほぼ全国的に晴れの予報です(図2)。

図2 天気予報(上は4月26日の天気予報と最高気温の予報と前日との差、下は4月27日の天気予報と最低・最高気温の予報)
図2 天気予報(上は4月26日の天気予報と最高気温の予報と前日との差、下は4月27日の天気予報と最低・最高気温の予報)

 ただ、高気圧の移動方向が東ではなく、南東ですので気温があまり上がりません。

 日中は日差しがありますので20度くらいとほぼ平年並みに上がりますが、昨日までよりは気温が下がり、北寄りの風が肌寒く感じるのではないかと思います。

 そして、夜になると気温はグッと下がりますので、お帰りが遅い方は、風を通さない上着持参が良いでしょう。

高気圧のコースによる差

 移動性高気圧がきたら概ね晴れますが、どこでも晴れるというわけではありません。

 移動性高気圧がどのようなコースを進むかによっても日本の天気は変わります。

 移動性高気圧が、北緯35度線を西から東に進む場合は全国的に晴天となりますが、これより南を東進する場合、晴天は関東から西の地方だけで、これより北を東進する場合は北日本だけが晴天です(図3)。

図3 移動性高気圧の動きと天気変化
図3 移動性高気圧の動きと天気変化

 日本海北部から関東地方に南東進する場合は、全国的に晴天ですが気温は上がらず肌寒い日となります。

 今週の週明けの移動性高気圧は、この南東進する高気圧です。

移動性高気圧のあとは低気圧の雨

 大きな移動性高気圧の通過後は低気圧の接近・通過で曇りや雨の天気となり、その後、再び移動性高気圧が通過して晴れるというように、天気が周期変化します。

 今週半ばも同じで、ほぼ全国的な雨の予想です(図4)。

図4 昭和の日(4月29日)の天気予報
図4 昭和の日(4月29日)の天気予報

 このため、春と秋の天気は、昔から移ろいやすい人の心に例えられています。

 例えば、「男心と秋の空(春の空)、女心と春の空(秋の空)」という言葉があります。移り変わりながら冷たくなるのが男心で、移り変わりながら熱くなるのが女心、あるいは、その逆ということでしょうか。

 そして、週末の5月1日は立春から数えて88日目の「八十八夜」です。

この時に摘むお茶は、昔から最高級のものとされてきました。

 明治45年(1912年)に発表された童謡「茶摘」では、「夏も近づく八十八夜」と歌われていますが、夏の気配が感じられるのが、八十八夜です。

 一般的には、八十八夜は、霜の心配がほとんどありませんが、もし霜がおりると生育中の植物が大打撃を受けます。

 「八十八夜の泣き霜」という言葉もありますので、八十八夜が過ぎるまでは霜には注意・警戒が必要です。

タイトル画像、図2、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:饒村曜(平成26年(2014年))、天気と気象100、オーム社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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