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台風2号が発生 過去には4月でも台風上陸がある

饒村曜気象予報士
台風の卵の熱帯低気圧の雲(4月11日15時)

台風2号が発生

 令和3年(2021年)は、2月18日にフィリピンの東海上で台風1号が発生しました。

 台風1号は、西進してフィリピンのミンダナオ島に上陸するかとみられていましたが、上陸前に熱帯低気圧に衰えました。

 その後、しばらく台風の発生がなかったのですが、4月10日ころからフィリピンの東海上で対流活動が活発になってきました。

 そして、対流雲の塊の中からが熱帯低気圧が発達し、気象庁は4月13日9時に、カロリン諸島の熱帯低気圧が24時間以内に台風に発達するとの「熱帯低気圧情報」を発表しました(タイトル画像参照)。

 熱帯低気圧のあるカロリン諸島の海上は、平年より1~2度も海面水温が高い状態が続いており、台風が発生する目安の27度を超える29度以上もあります。

 熱帯低気圧は、4月14日3時に台風2号に発達したあとも、北西進しながらさらに発達を続け、4月18日にはフィリピンの東海上で、中心気圧が940hPaの非常に強い台風に達する見込です(図1)。

図1 台風2号の進路予報(4月14日9時の予報)
図1 台風2号の進路予報(4月14日9時の予報)

台風情報は最新のものをお使いください

 著者が過去に調べた4月の台風の平均経路は、ほとんどの台風が低緯度を西進してフィリピンの東海上に達します(図2)。

図2 台風の4月の平均経路
図2 台風の4月の平均経路

 僅かですが、北上してくる台風もありますが、ほとんどは沖縄近海から小笠原諸島近海を東進します。

 ただ、4月に上陸した台風が0というわけではありません。

台風の最も早い上陸

 気象庁では、台風の気圧が一番低い場所が、九州・四国・本州・北海道の上にきたときを「台風上陸」といいます。

 沖縄本島など、島の上の通過や、岬を横切って短時間で再び海に出る場合は上陸ではありません。

 台風の定義が「中心付近の最大風速が17.2m/s以上の熱帯低気圧」と決まった昭和26年(1951年)から台風上陸についての統計がありますが、一番早い上陸は昭和31年の台風3号で、4月25日7時半頃、鹿児島県大隅半島南部に上陸しました(表1)。

表1 上陸が早い台風(昭和26年(1951年)~令和2年(2020年))
表1 上陸が早い台風(昭和26年(1951年)~令和2年(2020年))

 昭和31年の台風3号は、4月16日15時に発生したあと、フィリピンの東海上で935ヘクトパスカルまで発達しました。

 しかし、フィリピンのルソン島上陸で衰え、さらにバシー海峡付近で転向して北上するにつれてさらに衰え、大隅半島南部に上陸直後の4月25日9時には消滅しています(図3)。

 このため、台風が消えたと報じられました。

図3 昭和31年の台風3号の経路
図3 昭和31年の台風3号の経路

台風三号消える

台風三号は二十五日朝九州の南沖まできて消えた。中央気象台の観測では朝六時、台風の名残とみられる小さな低気圧が宮崎県沖にあるが、陸地では風もなく所によってにわか雨が降っただけ。しかしこのように四月中に台風が日本に近づいたのは、大正六年以来三十九年ぶりという珍しい記録を作った。

引用:昭和31年(1956年)4月25日朝日新聞夕刊

台風の月別上陸数

 台風の統計が作られるようになった昭和26年(1951年)から昨年、令和2年(2020年)までに206個の台風が上陸しています。

 県別には、鹿児島県が一番多く、高知県、和歌山県と続きますが、沖縄県は0です(表2)。

表2 台風の県別上陸数(昭和26年(1951年)~令和2年(2020年))
表2 台風の県別上陸数(昭和26年(1951年)~令和2年(2020年))

 沖縄県は沖縄本島等、島の上を通過することは珍しくありませんが、上陸の定義からいうと上陸数0ということになります。

 台風の月別の上陸数をみると、8月が73個と一番多く、次いで9月の66個になります(図4)。

図4 台風の月別上陸数(昭和26年(1951年)~令和2年(2020年))
図4 台風の月別上陸数(昭和26年(1951年)~令和2年(2020年))

 台風というと9月のイメージがあるのですが、これは、9月の台風は秋雨前線を刺激して大雨を降らせることが多いなど、大きな被害を発生させるからです。

 ただ、近年は9月から10月に上陸する台風が増えています。

 平成13年(2001年)以降では、8月と9月がほぼ同じ数だけ上陸していますし、10月に上陸する台風も7月に上陸する台風並みの数となっています。

 台風上陸が、夏から秋に少し移動している感じがします。

 発生した台風2号は、まだ日本から離れています。

 しかし、過去には4月の台風で影響を受けたことがあります。

 最新の台風情報の入手に努め、注意してください

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

図3、表2の出典:気象庁ホームページ。

図4、表1の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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