台風1号がフィリピンでも珍しい2月の上陸へ 一般的に被害が大きいのは晩秋の台風

タイトル画像 フィリピンのミンダナオ島に接近中の台風1号の雲(2月19日15時)

台風1号がミンダナオ島上陸へ

 令和3年(2021年)2月18日発生した台風1号は、北西進を続け、まもなくフィリピンのビサヤ7島のいずれかの島に上陸の見込です(図1)。

図1 台風1号の進路予報(2月20日3時発表)
図1 台風1号の進路予報(2月20日3時発表)

 台風1号は、発生直後のあまり発達していない状態での接近・上陸です。

 台風の眼がはっきりし、台風を取り巻く雲バンドがはっきりしてはいません(タイトル画像参照)。

 また、これから海面水温が低い海域に向かい、陸地にかかりますので、大きく発達することはなく、2月23日には南シナ海で熱帯低気圧に変わると予想されています。

 図2は資料が少し古くなりますが、以前に筆者が調査した2月と3月の平均進路です。

図2 台風の2月の平均進路(左)と3月の平均進路(右)
図2 台風の2月の平均進路(左)と3月の平均進路(右)

 統計的にいうと、2月と3月の台風は、北緯10度以下の低緯度で発生することもあって、低緯度を西進することが多いといえます。

 また、2月はフィリピンに接近する台風が少なく、フィリピンに上陸する台風が出始めるのは3月になってからです。

珍しいフィリピンの2月上陸台風

 フィリピンは大小7000もの群島から成っていますが、主要な島というと、ルソン島,ミンダナオ島という2つの大きな島と,この間にあるビサヤ7島(サマル,ネグロス,バナイ,レイテ,セブ,ボホル,マスバテ)、およびミンドロ島,パラワン島の11の島があげられます。

 以前、筆者は、この11の島の上に達した台風を、気象庁の台風経路図から読み取り、これをフィリピンに上陸した台風として調査したことがあります。

 昭和26年(1951年)から昭和56年(1981年)の間に、フィリピンに上陸した台風は、年平均4.5個で(日本の約1.5倍)で、このうち64パーセントがルソン島に上陸しています。

 また、月別にみると、11月が一番多く上陸しています(図3)。

図3 フィリピンの月別台風
図3 フィリピンの月別台風

 台風の発生数の多い7月から9月に上陸数が比較的少ないのは,このころの台風の発生が主として、フィリピンより高緯度の海域であるからです。

 また、2月に上陸した台風は、調査した30年間では0でした。

 3月になると、北にあるルソン島上陸は0ですが、ミンダナオ島など南にある島への上陸が10年に1回くらいでてきます。

 つまり、令和3年(2021年)の台風1号のように、2月に上陸する台風は、かなり稀な台風ということができます。

フィリピンで大きな被害は晩秋台風

 フィリピンで大きな被害をもたらした台風の中には、ルソン島から1000キロ以上も離れて北上した昭和47年(1972年)の台風7号のように上陸しない台風もあります。

 上陸した台風だけではありません。

 図4は、筆者がフィリピン気象台(PAGASA)の資料をもとに、昭和23年(1948年)から昭和56年(1981年)の34年間にフィリピンに大きな被害額の台風ワースト20です。

図4 フィリピンに大きな被害をもたらした台風
図4 フィリピンに大きな被害をもたらした台風

 11月に6個、10月に5個と、圧倒的に晩秋の台風が多くなっています。

 これは、フィリピンの雨季(6月から11月)と関係しています。

 晩秋は発達した台風の接近・上陸が多いことに加え、雨季で雨が多く降っているところに台風によって多量の雨が降るからです。

 ただ、雨季に入る前の4月、5月でも大きな被害が発生することがあり、台風はどの季節でも油断ができません。

 台風被害は、フィリピンだけでなく、程度の差があるものの、アジア各国に及んでいます。

 このため、気象庁は北西太平洋(南シナ海を含む)の台風について、航海している船舶や、アジア各国に予報や情報を逐次提供しています。

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:饒村曜・宮澤清治(昭和55年(1980年)、台風に関する諸統計 月別発生数・存在分布・平均経路、研究時報、気象庁。

図3の出典:饒村曜(昭和61年(1986年))、台風物語、日本気象協会。

図4の出典:饒村曜(平成5年(1993年))、続・台風物語、日本気象協会。