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初めて発表となった「顕著な大雪に関する気象情報」 きっかけは3年前の北陸地方の集中的な大雪

饒村曜気象予報士
日本海北部の雲の渦巻きと日本海全体に広がる寒気南下を示す雲(1月8日15時)

今冬一番の寒気が南下

 令和3年(2021年)1月7日から8日の日本付近は、大きく見ると西高東低の冬型の気圧配置となり、今冬一番の寒気が南下してきました(図1)。

図1 地上天気図(1月8日15時)
図1 地上天気図(1月8日15時)

 気象衛星では、日本海北部に雲の渦巻きがあり、小さな低気圧に対応しています。

また、雲の渦巻きの西側の日本海では、ほぼ全体に寒気南下を示す筋状の雲が広がっています(タイトル画像参照)

 このため、東北の日本海側から北陸地方、西日本の日本海側のみならず、普段は雪の少ない九州でも雪が降りました。

 特に、北陸地方では短時間に強い雪が降り、初めて「顕著な大雪に関する気象情報」が発表されました。

顕著な大雪に関する富山県気象情報

令和3年1月7日22時14分発表

砺波で7日22時までの3時間で23センチの顕著な降雪を観測しました。

この強い雪は8日朝にかけて続く見込みです。西部南の平地では、大規模な交通障害の発生するおそれが高まっています。

顕著な大雪に関する気象情報

 「顕著は大雪に関する気象情報」は、1月7日の富山県(砺波)に続き、1月8日には富山県(朝日)、福井県(大野市・福井市)、石川県(加賀南部の山地)、新潟県(上越市高田)でも発表となっています(図2)。

図2 北陸の大雪(1月7日から1月8日)
図2 北陸の大雪(1月7日から1月8日)

1月8日に発表された「顕著な大雪に関する気象情報」

富山県・朝日で6時までの3時間で22cm

福井県・大野市で9時までの6時間で39cm

福井県・福井市で11時までの6時間で24cm

石川県・加賀南部の山地(白山市白峰大道谷の県の観測所)で12時までの6時間で54cm

新潟県・上越市高田で16時までの3時間に26cm

石川県・珠洲で19時までの6時間で25cm

【追記(1月10日13時)】

1月9日に発表された「顕著な大雪に関する気象情報」

福井県・福井市で14時までの6時間で25cm

1月10日に発表された「顕著な大雪に関する気象情報」

新潟県・糸魚川市南押上(県の観測所)で4時までの3時間で26cm

 この、「顕著な大雪に関する気象情報」は、試験運用が始まったのは平成30年(2018年)12月25日からで、新潟県、富山県、石川県、福井県の4県が対象でした。

 正式運用は平成31年(2019年)11月13日からで、試験運用の4県に山形県、福島県の会津地方が加わった6県が対象です。

 過去6時間に顕著な降雪が観測され、その後も大雪警報の発表基準を一定量上回ると思われる時に発表されます。

 数年に一度の記録的な大雪への注意を速やかに呼びかけることで、市民生活への影響の低減を狙っている情報で、記録的短時間大雨情報の雪版ともいえるでしょう

 「顕著な大雪に関する気象情報」発表のきっかけとなったのは、同年2月に発生した福井県を中心とする北陸の大雪です。

平成30年(2020年)2月の北陸の大雪

 平成30年(2020年)2月3日から6日にかけて日本海北部を低気圧が東進し、5日には石川県輪島市の上空約5500mには、大雪の目安となる氷点下36度以下の寒気が南下し、冬型の気圧配置が強まりました。

 このため、5日から6日にかけて北陸地方を中心に大雪となっています。

 特に福井県は、嶺北を中心に雪が降り続き、6日には平地で積雪が1m超える大雪となり、福井市では昭和56年(1981年)の五六豪雪以来37年ぶりに積雪130cmを超えました。

 このため、北陸自動車道は通行止めが続き、坂井市からあわら市にかけての国道8号線では約1500台の車が立ち往生し、福井県は14時に自衛隊に災害派遣を要請しました。

 また、各地で車が立ち往生して渋滞が発生し、福井県内のJRや私鉄は終日運休となり、6日に予定されていた私立5高校の入試が9日に延期となりました。

福井新聞(平成30年(2018年)9月1日朝刊より)

気象庁 提供へ概算要求

県要望の記録的大雪情報

県会代表質問で知事説明

 県会は31日、本会議を再開し、県会自民党と民主・みらいの2会派3議員が代表質問した。

2月の記録的な大雪の対策について、西川一誠知事は「最初動の気象情報が重要。県の要請を受け、(気象庁は)記録的大雪情報の提供を行うために2019年度概算要求を行っている」と説明した。国に対して正確な気象情報の提供を求め、冬季に向け対策の実効性の向上を図っていくとした。(牧野将寛)

 田村康夫議員(県会自民党)の質問に答えた。

 県は、国への19年度重点提案・要望に、「短時間で集中的な降雪となり、さらに警報が継続すると予想される場合において『記録的短時間大雨情報』に相当する基準を新たに設けること」と明記していた。

 西川知事は「国は冬季道路情報連絡室を設置する。県も除雪車両への衛星利用測位システム(GPS)導入などで広域的な除雪を行う。(関係機関が時系列でどう動くかを示す)タイムラインの作製など万全にする」と述べた。

今後の大雪

 1月9日も、上空の非常に強い寒気は過ぎ去ったとはいえ、寒気が流れ込んでいます。

 日本海側を中心に大雪になる所があり、特に北陸では、断続的に強い雪が降り、さらなる積雪の増加に厳重な警戒が必要です。

 10日朝までに予想されている雪の量は多い所で、北陸で100cm、岐阜で70cm、東北や近畿北部、中国地方で50cmなどとなっており、北陸では、その後も雪が続く見込みです(図3)。

図3 24時間予想降雪量(1月9日6時から1月10日6時まで24時間)
図3 24時間予想降雪量(1月9日6時から1月10日6時まで24時間)

 北陸では、最新の気象情報の入手に努め、交通への影響やなだれなどに厳重な警戒が必要です。

タイトル画像、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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