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台風19号が発生し、非常に強い勢力でフィリピンへ

饒村曜気象予報士
フィリピンの東海上の台風19号の雲(10月29日6時30分)

台風19号発生

 10月29日3時に台風19号(アジア名はコーニー)がフィリピンの東海上で発生しました。

 令和2年(2020年)は、台風の統計が作られている昭和26年(1951年)以降、初めて7月の発生数がゼロとなるなど、7月までは台風の発生が少なかったのですが、8月以降は、発生ペースがあがっています(表)。

表 令和2年(2020年)の台風発生数と上陸数および台風の平年値
表 令和2年(2020年)の台風発生数と上陸数および台風の平年値

 台風19号は、令和2年(2020年)10月の6個目の台風となります。

 10月に発生する台風は、ほとんどが北緯10度から20度の間であり、台風19号も、北緯16.7度で発生しています。

 しかも、台風15号から連続して発生位置が次第に東へ移動しています(図1)。

図1 令和2年(2020年)10月に台風が発生した海域(台風14号から台風19号)
図1 令和2年(2020年)10月に台風が発生した海域(台風14号から台風19号)

 ひょっとしたら、対流活動の活発な領域が東へ移動する「マッデン・ジュリアン振動(MJO)」がおきているのかもしれません。

「マッデン・ジュリアン振動(MJO)」は、昭和47年(1972年)にマッデンRoland A. MaddenとジュリアンPaul R. Julianによって発見された、赤道上の風と気圧に40日から50日の周期性のことです。

 おもにインド洋で発生する数千キロメートルスケールの巨大雲群が赤道に沿って毎秒5メートル程度の速度で東へ進み、多くは太平洋の日付変更線付近で雲は消滅する現象です。

 この現象に伴う対流活動の活発な領域では、熱帯低気圧の発生が促進されという研究もあります。

フィリピンの東海上はまだ夏

 台風19号は、台風17号や台風18号のあとを追うように、西進を続け、フィリピンを通過後に南シナ海に達する見込みで、日本への直接的な影響はない見込みです(図2)。

図2 台風19号の進路予報(10月29日3時)
図2 台風19号の進路予報(10月29日3時)

 台風予報は最新のものをお使いください

 台風19号は、台風が発達される目安とされる海面水温27度以上の暖かい海域を西進することもあって、この後、急速に発達し非常に強い勢力となる見込みです。

 台風17号や台風18号はフィリピンを通過して、東シナ海に入ってからの発達でしたが、台風19号は非常に強い勢力になってからの上陸です。

 また、台風19号の東海上には活発な積乱雲の塊があり、これが熱帯低気圧となる見込みです(図3)。

図3 10月30日21時の予想天気図(図中でSTSが台風19号、TDが熱帯低気圧)
図3 10月30日21時の予想天気図(図中でSTSが台風19号、TDが熱帯低気圧)

 この熱帯低気圧が台風にまで発達するかどうかは不明ですが、もし発達すれば、台風20号となり、10月で7個目の発生ということになります。

 日本列島は秋の盛りで、10月29日は十三夜の月見の日ですが、フィリピンの東海上は。まだまだ夏が残っています。

 そして、この海域の対流活動は、その北にある高気圧の勢力を強め、寒気が南下しにくくするなど、間接的に日本の天気に影響を与えます。

タイトル画像、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁資料とウェザーマップ資料をもとに著者作成。

図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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