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日本の南海上で台風14号発生 10月台風の特徴

饒村曜気象予報士
日本の南海上で台風になりそうな熱帯低気圧の雲(10月4日21時)

遠くなった夏の暑さ

 日本列島はほぼ東西にのびる前線による帯状の雲が広がり、北日本や北陸を中心に雨のところが多くなっています(図1)。

図1 地上天気図(10月4日21時)
図1 地上天気図(10月4日21時)

 晩秋の寒気がこの前線のところまで南下しているのですが、この前線の南下は北日本までです。

 このため、高気圧に覆われている東日本の太平洋側と西日本は、晴れて気温があがりましたが、真夏日(最高気温が30度以上の日)のところは全国の気温観測地点数の3%くらいしかありません。

 殺人的といわれた令和2年(2020年)も、猛暑日(最高気温が35度以上の日)を観測したのは9月中旬までで、夏日(最高気温が25度以上の日)も50%を大きく下まわっています(図2)。

図2 令和2年(2020年)に全国で猛暑日、真夏日、夏日を観測した地点数の推移
図2 令和2年(2020年)に全国で猛暑日、真夏日、夏日を観測した地点数の推移

 夏は遠くなった感じがしますが、日本の南海上には、夏を代表する熱帯低気圧の雲の塊があります(タイトル画像参照)。

熱帯低気圧の発生

 日本の南海上では対流活動が活発で、積乱雲があちこちで発生していましたが、次第に渦を巻き始め、令和2年(2020年)10月4日15時に熱帯低気圧が発生しました。

 そして、10月4日21時に、気象庁は今後24時間以内に台風に発達するとして、熱帯低気圧情報を発表しました(図3)。

図3 発達している熱帯低気圧の進路・強度予報
図3 発達している熱帯低気圧の進路・強度予報

 台風の発生・発達の目安は海面水温が27度以上ですが、日本の南海上の熱帯低気圧は30度以上という非常に高い気面水温で、しかも、熱帯低気圧(台風)が進む海域は28度以上です。

 熱帯低気圧は台風14号となり、強い勢力にまで発達して沖縄本島にかなり接近する見込みです。

 海面水温は、いつもの年より1度以上高いことが原因と考えられます。

(10月5日11時追記)

 日本の南海上の熱帯低気圧は、10月5日9時に台風14号に発達しました。

統計的に見た10月の台風

 少し古い資料ですが、10月に発生する台風は、ほとんどが北緯10度から20度の間です。

 日本の南海上で台風14号が発生した場合は、20度以北での発生ですので、10月としては高緯度での発生となります(図4)。

図4 台風の月別・緯度別発生数(昭和26年(1951年)~52年(1977年)、図中のOの太線が10月)
図4 台風の月別・緯度別発生数(昭和26年(1951年)~52年(1977年)、図中のOの太線が10月)

 また、台風の10月の平均経路を見ると、北緯15度位を西進するものが多く、一部は北上して日本の南海上を東進するものもあります(図5)。

図5 10月の台風の平均経路
図5 10月の台風の平均経路

 日本の南海上の熱帯低気圧の予想進路は、10月の平均経路より、10度位北を西進しているともいえます。

10月から12月の台風発生数

 台風発生数の平年値(昭和56年(1981年)から平成22年(2010年)の30年間の平均値)からみると、10月から12月には、台風は7.1個発生しています(表)。

表 台風の平年値と令和2年(2020年)の台風
表 台風の平年値と令和2年(2020年)の台風

 台風の統計が作られている昭和26年(1951年)以降、令和元年(2019年)までの69年間では、台風が平均7.3個発生しています(図6)。

図6 10月から12月の台風発生数
図6 10月から12月の台風発生数

 一番少なかったのは平成22年(2010年)と平成23年(2011年)の2個、一番多かったのは昭和27年(1952年)の13個です。

 令和2年(2020年)は、台風の発生が少なかったため、これから、過去最多タイの13個が発生して、初めて平年値の約26個です。

 つまり、令和2年(2020年)は、台風の発生が平年より少ない年になりそうです。

 このことは、台風被害の少ない年ということを意味しません。

 熱帯低気圧が台風14号となって接近する沖縄は、最新の台風情報の入手に努め、警戒してください。

 また、台風14号が過ぎ去ったあとも、しばらくは台風に対して警戒が必要です。

 5年に1回は10月以降に台風が上陸しており、昨年は、10月12日に上陸した台風19号により、大きな被害が発生しました。

 10月もまだ台風シーズンです。

タイトル画像、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図1、表の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ資料をもとに著者作成。

図4、図5の出典:饒村曜(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計(第2報)進行速度、研究時報、気象庁。

図6の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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