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南鳥島近海で台風13号発生が発生、名前は日本が提案した「クジラ」

饒村曜気象予報士
台風13号になりそうな熱帯低気圧の雲(右下、9月26日15時)

夏の暑さの終わり

 全国的に雨や曇りをもたらした秋雨前線に変わって、秋の移動性高気圧が日本列島をおおいはじめました(図1)。

図1 予想天気図(9月27日21時の予想)
図1 予想天気図(9月27日21時の予想)

 厳しかった令和2年(2020年)の猛暑も、猛暑日(最高気温が35度以上の日)は9月中旬以降はなくなり、真夏日(最高気温が30度以上の日)も9月下旬になるとほぼなくなっています(図2)。

図2 夏日、真夏日、猛暑日を観測した地点数の推移(令和2年(2020年)8月~9月)
図2 夏日、真夏日、猛暑日を観測した地点数の推移(令和2年(2020年)8月~9月)

 そして、9月26日の夏日(最高気温が25度以上の日)は、全国の気温を観測している921地点のうち248地点(27パーセント)しかありません。

暑い夏が、遠い昔のような気さえします。

しかし、まだまだ夏の特徴のある台風の季節です。

南鳥島近海の熱帯低気圧

 南鳥島近海には、発達中の熱帯低気圧があって北上中です(図3)。

図3 熱帯低気圧の5日間予報(9月27日3時発表)
図3 熱帯低気圧の5日間予報(9月27日3時発表)

 熱帯低気圧は、台風が発達する目安の海面水温が27度より高い、海面水温が30度以上という海域を進む見込みです。

 このため、まもなく台風に発達し、しかも、29日3時には、中心気圧が970ヘクトパスカルの強い台風となる見込みです。

 ただ、東経150度線よりも東の海域で転向し、日本への直接的な影響はない見込みです。

 昔、著者が行った台風の統計調査によると、9月にこの海域で発生した台風は、北上のち北東進して日本には接近しません(図4)。

図4 台風の進行速度を加味した平均経路(9月)
図4 台風の進行速度を加味した平均経路(9月)

 南鳥島付近の熱帯低気圧の予報は、この平均的な9月の台風経路をとりそうです。

 なお、図4で線に入っている小さな区切りは、平均的に12時間毎に進む距離です。

【追記(9月27日10時50分)】

 南鳥島近海の熱帯低気圧は、9月27日9時に台風13号になりましたので、タイトルと概要文を一部修正しました。

台風のアジア名

 台風には、その年の発生順に台風番号と呼ばれる番号がついていますが、この番号とは別に、アジア名と呼ばれる名前がついています。

 南鳥島の南東海上で、台風が発生した場合、令和2年(2020年)で13番目に発生した台風になりますので、台風13号と命名されます。

 そして、アジア名の表から「クジラ」と名付けられます。

 台風に「クジラ」と名前が付くのは、平成15年(2003年)の台風2号、平成21年(2009年)の台風1号、平成27年(2015年)の台風8号に次ぐ、4代目です。

 アジア名の表は、北西太平洋または南シナ海で発生する台風防災に関する各国の政府間組織である「台風委員会」に加盟する14の国と地域(アルファベット順にカンボジア、中国、北朝鮮、香港、日本、ラオス、マカオ、マレーシア、ミクロネシア、フィリピン、韓国、タイ、米国、ベトナム)が、それぞれ提案した10個の名前、合計140個の名前からできています。

 日本は、長年にわたって台風の影響を受けている船乗りになじみの深い「星座の名前」を使うことにし、「コイヌ」「ヤギ」「ウサギ」「カジキ」「カンムリ」「クジラ」「コグマ」「コンパス」「トカゲ」「ヤマネコ」の10個を提案しています。

 たまたま、台風13号が発生した時に名付けられる「クジラ」は、星座のクジラ座からとられていますが、この星座の一番星は、「ミラ」と呼ばれる赤色巨星で、かつ光量が変わる変光星と、ちょっと変わった星です。

 

 南鳥島の南東海上の熱帯低気圧が台風13号になったとしても、日本から離れた海上で日本には影響がなさそうですが、日本の台風シーズンは10月中旬までです。

 昨年、令和元年(2019年)も、関東甲信地方や東北地方などで大規模な被害が発生した台風19号(東日本台風)が上陸したには、10月12日のことです。

 まだまだ台風に対して、気を抜くことはできません

タイトル画像、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ資料をもとに著者作成。

図4の出典:饒村曜(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計(第2報)進行速度、研究時報、気象庁。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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