Yahoo!ニュース

シルバーウィークは日本の南海上で熱帯低気圧が北上

饒村曜気象予報士
日本列島をおおう秋雨前線の雲と北上中の雲の塊(9月18日15時)

秋雨前線で寒気南下

 秋雨前線が日本列島に停滞し、全国的に曇りや雨の日が多くなっています。

 秋雨前線は、夏から秋へという季節の変わり目に現れます。

 沖縄付近に出現し、次第に北上する梅雨前線と違い、北日本で出現し、次第に南下するのが秋雨前線です。

 秋雨前線が現れると、厳しい残暑も終わり、朝晩は涼しさを感じるようになります。

 記録的な猛暑とか、殺人的な猛暑といわれた暑さも、秋雨前線が出現した9月中旬以降は少し納まっています。

 9月9日以降で猛暑日(最高気温が35度以上の日)を観測したのは、9月18日に山梨県南部町の35.0度しかありません。

 また、気温を観測している観測地点の過半数は夏日(最高気温が25度以上の日)ですが、真夏日(最高気温が30度以上の日)は、一時的に10パーセントを割り込んでいます(図1)。

図1 夏日、真夏日、猛暑日を観測した地点数の推移(令和2年(2020年)8月~9月)
図1 夏日、真夏日、猛暑日を観測した地点数の推移(令和2年(2020年)8月~9月)

 真夏日は、9月17日~18日に少し増えましたが、そのあとは減る見込みで、事実上は、9月18日が最後の残暑となりそうです。

 秋のお彼岸の期間は、「秋分の日」を中日として前後3日間、計7日間です。

 令和2年(2020年)は、秋分の日が9月22日(火)ですので、9月19日(土)から9月25日(金)までがお盆です。

 そして、9月21日(月)が敬老の日で祝日、9月22日(火)が秋分の日で祝日ですので、シルバーウィークと呼ばれる連休の期間と重なります。

 昔から、「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉があります。

 彼岸になれば、季節の変わり目を実感できるという意味ですが、令和2年(2020年)も、言葉通りになりそうですが、懸念もあります。

 それは、暖気を北上させる熱帯低気圧の存在です。

熱帯低気圧で暖気北上

 日本の南海上には積乱雲の塊ができはじめ、北上を始めています(タイトル画像参照)。

 気象庁が発表している予想天気図では、9月19日(土)には、西日本の南海上の北緯20度付近に熱帯低気圧が発生しています。

 それが、9月20日(日)には、西日本の南海上の北緯24度付近まで北上しています(図2)。

図2 予想天気図(左は9月19日9時、右は9月20日9時の予想)
図2 予想天気図(左は9月19日9時、右は9月20日9時の予想)

 図2で「熱低」と書いてあるのが熱帯低気圧で、20日(日)9時までは、台風に発達しない予想となっています。

 20日(日)9時以降に台風になるかどうかわかりませんが、気象庁では、24時間以内に台風に発達すると予報した時には、台風予報と同様に、5日先までの進路予報と強度予報を発表しています。

 ただ、台風になる、ならないにかかわらず、熱帯低気圧は暖かくて湿った空気を北上させています。

 日本付近の前線は、熱帯低気圧の北上によって活発化し、大雨になる可能性がありますので、シルバーウィークは、熱帯低気圧の動向に注意です。

 昔、著者が行った台風の統計調査によると、9月にこの海域で発生した台風は、北上のち北東進して関東の南海上にかなり接近しています(図3)。

図3 台風の進行速度を加味した平均経路(9月)
図3 台風の進行速度を加味した平均経路(9月)

 図3では、平均的に12時間毎に進む距離毎に区切りをいれてあります。

 今回の熱帯低気圧が、台風のような動きをすれば、4日後くらいには関東地方にかなり接近することになります。

 

 熱帯低気圧が台風になるかどうか、どこまで北上してくるか、前線を刺激してどこで大雨になるかなど、気になる点が多い熱帯低気圧です。

 シルバーウィークは、熱帯低気圧の動向に要注意です。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:ウェザーマップ資料をもとに著者作成。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:饒村曜(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計(第2報)進行速度、研究時報、気象庁。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事