Yahoo!ニュース

台風9号が発生 週明けには沖縄・西日本に接近

饒村曜気象予報士
日本の南海上の雲分布(8月28日15時)

台風9号の発生

 令和2年(2020年)8月28日15時、フィリピンの東海上で台風9号「アジア名はメイサーク」が発生しました。

 8月になってから7個目の発生ですが、平年の発生数が5.9個ですので、格段に多い訳ではありません(図1)。

図1 8月の台風発生数
図1 8月の台風発生数

 現在、熱帯の海上には、積乱雲が多く発生しているものの、台風9号以外にまとまっている雲はなく、あと2日位では台風に発達しそうもありません(タイトル画像参照)。

 したがって、8月は7個発生で確定しそうです。

 台風の統計がとられている昭和26年(1951年)以降では、昭和51年(1976年)と昭和35年(1960年)の10個発生があります。

 8月に台風がやや多く発生したものの、観測史上初の7月の発生数0など、それまでが非常に少なかったため、台風発生の少ない年になりそうです。

 昭和26年(1951年)以降、8月末までに台風発生数が一桁の年は7例ありますが、ほとんどの年は年間発生数が20個前後です(表)。

表 台風発生数が8月末までで一桁の年
表 台風発生数が8月末までで一桁の年

 平成22年(2010年)は、8月末までに8個発生で、年間では14個の発生でした。

 ただ、台風発生数が少ないということは、台風災害が少ないということではありません。

 台風9号も要警戒です。

一般的な8月の台風

 図2は、著者が以前調査した8月の台風の一般的な進路です。

図2 令和2年(2020年)の台風9号(図中の星印付近)と8月の平均経路図
図2 令和2年(2020年)の台風9号(図中の星印付近)と8月の平均経路図

 これによると、8月にフィリピンの東海上で発生した台風の多くは、北西部して台湾から中国大陸に上陸するか(図のA)、北上して沖縄から朝鮮半島に上陸します(図のB)。

 なお、図2で沖縄付近に円が描かれていますが、これは、迷走したり、あるいは動きが遅くなることを示したものです。

 いずれにしても、8月にフィリピンの東海上で発生する台風は、予報が難しい台風です。

 加えて、令和2年(2020年)の夏は、日本近海の海面水温が平年より高い状態が続いており、現在、日本の南海上では、30度以上もあります。

 台風が発生・発達する目安とされる海面水温は27度といわれていますので、台風が発生すると急発達の可能性があります。

台風9号の進路予報とその影響

 発生直後の台風9号はほとんど停滞していますが、今後、北上しながら発達し、8月31日(月)には非常に強い勢力で沖縄地方に接近するおそれがあります(図3)。

図3 台風9号の進路予報(8月28日15時発表)
図3 台風9号の進路予報(8月28日15時発表)

 台風情報は最新のものをお使いください。

 沖縄や奄美地方では早ければ、8月30日(日)ごろから影響がでてくる見通しですので、新しい台風情報の入手に努めてください(図4)。

図4 雨と風の分布予報(8月30日9時の予想)
図4 雨と風の分布予報(8月30日9時の予想)

 来週の週初めは、台風の進路によっては、西日本も大荒れの天気になるおそれがありますので、沖縄や奄美地方だけでなく、西日本も今後の台風情報に注意してください。

 台風の直接の影響は、8月30日以降ですが、間接的影響は現れています。

 北海道や東北北部では前線が停滞する影響で雨となり、29日(土)は北海道の日本海側北部で大雨のおそれがありますが、東北南部から東日本・西日本では、広く太平洋高気圧におおわれます(図5)。

図5 予想天気図(8月30日9時の予想)
図5 予想天気図(8月30日9時の予想)

 晴れて強い日射に加え、大気の下層には、台風9号周辺にある暖かくて湿った空気の流入が続きますので、今週末も東日本や西日本を中心に猛烈な暑さが続く見込みです。

 気温は軒並み35℃前後まで上がり、朝晩もあまり気温が下がらず、熱帯夜も続く見通しです。

 しかも、下層に暖かくて湿った空気が流入すると、大気が不安定になり、積乱雲が発達しやすくなります。

 つまり、落雷が発生し、局地的な大雨の可能性が高くなっています(図6)。

図6 8月29日(土)夕方と30日(日)夕方の発雷確率
図6 8月29日(土)夕方と30日(日)夕方の発雷確率

 台風9号に関する最新情報の入手につとめ、警戒することが重要ですが、その前に、熱中症や落雷、局地的な大雨にも警戒が必要です。

タイトル画像、図3、図4、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図1、表の出典:気象庁資料をもとに著者作成。

図2の出典:「饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁」に著者加筆。

図5の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事