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鹿児島県奄美は明日にも記録的に遅い梅雨明け、他の地方の梅雨明けは

饒村曜気象予報士
日本の東海上から日本列島を通って中国大陸に延びる梅雨前線(7月17日15時)

梅雨前線の長期停滞

 令和2年(2020年)の梅雨は、例年とは異なった様相となっています。

 九州を中心に記録的な大雨をもたらした梅雨前線は、7月3日以降、日本付近に長期停滞をしています。

 気象庁の関田康雄長官は、7月15日の記者会見で「これほどの長期間の梅雨前線の停滞は記憶にない」と述べています。

 気象庁長官の記者会見の時点でも、雨は3日から13日連続で、西日本を中心に大災害が発生した「平成30年7月豪雨(通称、西日本豪雨)」の11日間を超えています。

 その後も雨は続いており、7月18~19日も、梅雨前線上に発生した低気圧が日本海を通過すため、全国的に雨、それも大雨の所がある見込みです(図1)。

図1 予想天気図(7月19日9時の予想)
図1 予想天気図(7月19日9時の予想)

 気象庁では、5日先までに警報を発表する可能性を「高」「中」の2段階で表現していますが、これによると、18日は静岡県が「高」、長野・神奈川・千葉の各県が「中」となっています(図2)。

図2 早期注意情報(7月18日~19日の予想)
図2 早期注意情報(7月18日~19日の予想)

 また、19日は静岡県と長野県が「中」となっています。

 週末は、低気圧の東進によって、大雨警報を発表するほどの強い雨が降る可能性がありますので、警戒が必要です。

 このような、梅雨前線の長期停滞は、夏の主役の太平洋高気圧がなかなか強くならないことが原因です。

 例年であれば、太平洋高気圧が強まったり弱まったりしながら次第に強くなり、気温も次第に高くなってきます。

 このため、梅雨前線も北上したり南下したり、強まったり弱まったりしながら夏に向かいますので、令和2年(2020年)のように、ほぼ同じ位置に停滞し続けることはありません。

 梅雨期間であっても、連日雨や曇りの日ではなく、梅雨の晴れ間があるのが普通です。

鹿児島県奄美地方の梅雨明け

 令和2年(2020年)は、沖縄地方で6月12日に平年より11日も早く梅雨明けとなりましたが、その他の地方の梅雨明けは遅れています(表)。

表 令和2年(2020年)の梅雨入りと梅雨明け
表 令和2年(2020年)の梅雨入りと梅雨明け

 沖縄地方より1日早く梅雨入りした鹿児島県奄美地方も梅雨明けしていません。

 奄美地方の梅雨明けの平年は6月29日ですので、かなり遅れています。

 それどころか、一番梅雨明けが遅かった、平成22年(2010年)と昭和58年(1983年)の7月15日が過ぎています(図3)。

図3 鹿児島県奄美地方の梅雨明け(昭和26年(1951年)~令和元年(2019年))
図3 鹿児島県奄美地方の梅雨明け(昭和26年(1951年)~令和元年(2019年))

 鹿児島県奄美地方の梅雨明けは、最遅記録更新が確定です。

 加えて、梅雨期間も記録になりそうです。

 これまで最長だったのは、平成22年(2010年)の71日間(5月6日から7月15日)でしたので、令和2年(2020年)7月19日に梅雨明けになればタイ記録、20日以降の梅雨明けなら最長記録となります。

 ウェザーマップの16日先までの鹿児島県奄美大島・名瀬の天気予報をみると、19日は黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)ですが、20日以降はお日さまマーク(晴れ)と白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)の日が続きます(図4)。

図4 名瀬の16日先までの天気予報
図4 名瀬の16日先までの天気予報

 それも、降水の有無の信頼度が5段階表示で一番高いAの日が続きます。

 ここへきて、太平洋高気圧が強まってきたからで、奄美地方は20日、場合によっては19日に梅雨明けになりそうです。

 ただ、太平洋高気圧の強まりは、鹿児島県奄美地方までのようです。

【追記(7月20日14時)】

気象庁は、7月20日11時に、鹿児島県奄美地方が梅雨明けしたと発表しました。

平年より21日遅く、これまでで最も遅い梅雨明けでした。

また、梅雨期間も71日間と、これまでで最も長い梅雨期間でした。

九州南部の梅雨明けは

 鹿児島の16日先までの天気予報をみると、20日からは晴れるのですが、23日からの4連休は、黒雲マークや傘マーク(雨)の日が続きますので、20日頃の九州南部の梅雨明けは難しそうです(図5)。

図5 鹿児島の16日先までの天気予報
図5 鹿児島の16日先までの天気予報

 ただ、降水の有無の信頼度が、5段階表示で3番目のCですので、晴れの方に予報が変われば、20日頃の梅雨明けはありそうです。

 その場合でも、平年の7月14日よりは遅い梅雨明けが確定です。

 四国地方も九州南部と似たような予報ですので、平年の7月18日よりは遅い梅雨明けが確定です。

関東甲信地方の梅雨明けは

 来週の西日本は、太平洋高気圧の張り出しによって、梅雨明けか、梅雨明けでなくても一旦晴れ間のある天気になりそうです。

 最高気温が30度以上の真夏日になり、湿った空気の影響で蒸し暑くなる予報です。

 一方、東日本、特に関東地方の梅雨明けの予報は難しそうです。

 東京の16日先までの天気予報をみても、西日本ほどはっきりした傾向がみられず、少し予報がかわるだけで、梅雨明けの日が変わってくるからです(図6)。

図6 東京の16日先までの天気予報
図6 東京の16日先までの天気予報

 令和2年(2020年)の全国の真夏日(最高気温が30度以上の日)を観測した地点数と夏日(最高気温が25度以上の日)を観測した地点数を日ごとに表示したのが図7です。

 アメダスで気温を観測している921地点での集計ですので、半分(50パーセント)が461地点です。

図7 全国の真夏日地点数と夏日地点数
図7 全国の真夏日地点数と夏日地点数

 例年ですと、5月より6月、6月より7月のほうが、真夏日、夏日ともに多くなります。

 しかし、令和2年(2020年)は、6月より7月が多くなっていません。

 梅雨入りした頃は全国的に梅雨末期のような高温で、現在は、関東を中心として梅雨入りの頃のような低温と、季節の進みとは逆です。

 とはいえ、太平洋高気圧が強まり始め、季節も盛夏に向かって進みだしましたので、今後は、真夏日も夏日も増えてきます。

 梅雨明けをしている沖縄や、梅雨明けをしそうな西日本はもとより、東日本でも熱中症対策をして体調管理に注意が必要です。

タイトル画像、図2、図4、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:気象庁資料をもとに著者作成。

図7の出典:気象庁資料とウェザーマップ資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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