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沖縄では5月末まで低気圧家族により雨が続き、その後は記録的に早い梅雨明けか?

饒村曜気象予報士
低気圧家族(5月23日9時の予想天気図)

低気圧家族

 一つの前線の上で低気圧が順次発生し、発生したばかりの低気圧や発達して最盛期の低気圧などが並んでいる状態を「低気圧家族」と呼ぶことがあります(タイトル画像参照)。

 沖縄付近には梅雨前線が停滞し、この梅雨前線上を次々に低気圧が通過しています。

 低気圧の通過時には雨量が多くなりますので、現在の沖縄は、低気圧が家族ぐるみで多くの雨をもたらしている状態です。

 5月23日(土)も、沖縄県の沖縄本島から先島諸島にかけて、150ミリ以上の大雨が降る見込みです(図1)。

図1 沖縄の36時間予想降水量(5月22日18時~24日6時までの36時間降水量)
図1 沖縄の36時間予想降水量(5月22日18時~24日6時までの36時間降水量)

 このような状況は、月末まで続く見込みです。

 那覇の16日先までの天気予報をみると、24日(日)から28(木)まで連続して傘マーク(雨)が入っていますし、29(金)、30日(土)も黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)です(図2)。

図2 那覇の16日先までの天気予報
図2 那覇の16日先までの天気予報

 しかし、31日(日)以降は、天気ががらりと変わります。

 お日様マーク(晴れ)と白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)の日が連続します。

 天気マークだけからみれば、沖縄は月末に梅雨明けです。

沖縄の梅雨明け

 沖縄の梅雨明けの平年は6月23日で、統計が作られている昭和26年(1951年)以降の69年間で、一番早かったのは平成27年(2015年)の6月8日、一番遅かったのは令和元年(2019年)の7月10日です(図3)。

図3 沖縄での梅雨入りと梅雨明け
図3 沖縄での梅雨入りと梅雨明け

 一番早いのも、一番遅いのも最近のことであり、沖縄の梅雨は年よる変動が大きくなってきた感じがします。

 多くの年では、沖縄付近の梅雨前線は5月末から6月上旬にかけて北上し、九州南部などを梅雨入りにします(表)。

表 各地の梅雨入りと梅雨明け(令和2年(2020年)と平年)
表 各地の梅雨入りと梅雨明け(令和2年(2020年)と平年)

 この期間、沖縄は梅雨の中休みとなりますが、九州南部などを梅雨入りにした梅雨前線が再び南下してくると、沖縄は戻り梅雨となります。

 再び梅雨前線が北上し、戻ってこなくなると沖縄の梅雨明けです。

 令和2年(2020年)の5月末から梅雨前線が北上し、戻ってこないとなると、記録的に早い梅雨明けということになりますが、北上した梅雨前線が南下してくれば、梅雨の中休みということになります。

 この判断は非常に難しい予報です。

平成27年(2015年)の沖縄の梅雨明け

 沖縄の梅雨明けが早かった平成27年(2015年)は、早い梅雨明けか、梅雨の中休みかの判断が非常に難しい年でした。

 沖縄気象台が最初に発表した梅雨明けは5月11日であり、最終的に確定した5月8日ではありません。

24地点で真夏日 石垣32.6度 梅雨明け まだまだ

 高気圧に覆われておおむね晴れた沖縄地方は8日、気温が石垣市伊原間で32.6度、宮古空港で32.2度、那覇で31.3度を記録するなど、28観測地点中24地点で30度を超える真夏日となった。沖縄気象台によると、梅雨前線が13日ごろに沖縄地方に南下してくる見通しで、梅雨明けはまだ先になりそうだ。…。

出典:琉球新報(平成27年(2015年)6月9日朝刊)

沖縄地方梅雨明け 平年より12日早く

 沖縄気象台は11日午前11時、沖縄地方が梅雨明けしたとみられると発表した。平年は23日ごろで12日早く、昨年より15日早い。昨年の梅雨明けは26日で、ことしは「かなり早い方」としている。…。

出典:琉球新報(平成27年(2015年)6月12日朝刊)

奄美・沖縄以外の梅雨入り

 奄美・沖縄地方の梅雨入りから、約3週間後、他の地方でも梅雨入りが始まります。

 年によって、どこが先かということは異なりますが、平年値でいうと、奄美・沖縄地方に次いで梅雨入りするのは九州南部で、5月31日が梅雨入り平年値です(図4)。

図4 九州南部の梅雨入り(昭和26年(1951年)~令和元年(2019年))
図4 九州南部の梅雨入り(昭和26年(1951年)~令和元年(2019年))

 ちなみに。九州南部で梅雨入りが一番早かったのは、沖縄の平年の梅雨入りより早い5月1日です。

 昭和31年(1956年)のことですが、この年は、沖縄地方が4月28日、奄美地方が4月30日と、梅雨入りが異常に早い年でした。

 例外的な年を除くと、九州南部での梅雨入りは、5月下旬から6月上旬です。

 ウェザーマップの鹿児島の16日先までの天気予報では、降水の有無の信頼度が、5段階で一番低いEとか、2番目に低いDが約半分もありますが、5月31日(日)以降は傘マーク(雨)が多くなっており、それまでのお日様マーク(晴れ)多い日々とは違っています(図5)。

図5 鹿児島の16日先までの天気予報
図5 鹿児島の16日先までの天気予報

 平年の梅雨入りから見ても、月末に九州南部等の梅雨入りがありそうです。

 梅雨に入っている奄美・沖縄では、梅雨明けまでは最新の気象情報の入手につとめ、大雨災害等に警戒が必要です。

 その他の地方も、まもなく梅雨に入りますので、防災グッズの準備や防災マップの確認など、大雨に対する準備を急ぐ必要があります。

タイトル画像、表の出典:気象庁ホームページ。

図1、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図3、図4の出典:気象庁資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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