「雨水」直前の寒気と三連休の「春一番」、そして北海道の「雨一番」
「雨水」直前の初雪
令和2年(2020年)2月19日は「雨水(うすい)」、暦の上では、空から降るものが雪から雨に変わり、雪が溶け始めるころとされています。
昔から農耕の準備を始める目安とされ、雛人形を飾るのに適した日とされてきました。
春の気配がしてくるのが「雨水」といえそうです。
しかし、この「雨水」の2日前、日本付近は西高東低の冬型の気圧配置が強まり、西日本では今冬一番の寒気が南下して、九州各地では初雪を観測しました。
暖冬のため、九州各地では初雪が遅れ、2月4日に初雪を観測していた佐賀も含め、大幅に遅い初雪でした(表1)。
しかも、初雪が観測しなかった年もある九州南部の宮崎と鹿児島を除いて、これまでで最も遅い初雪の記録を大幅に更新しています。
令和2年(2020年)2月3日からは、多くの気象台で職員による目視の観測をやめ、機械での観測に切り替えています。
この影響で、初雪の平年値は2月3日からより早い時期に変わっていますが、2月3日までの古い平年値からみても、かなり遅いということにはかわりがありません。
それだけ、顕著な暖冬でした。
しかし、強い寒気の南下も長続きせず、日本付近は高気圧と低気圧が交互に通過する春の天気図となっています(図1)。
福岡も、「雨水」の前に気温が大きく下がり、最高気温が10度に達しない日が続きましたが、「雨水」以後は、最高気温、最低気温ともに平年より高い日が続きます(図2)。
西日本の令和2年(2020年)は、「冬らしい寒さは数日」という、記録的な暖冬でした。
小出しの「春一番」
春を告げるとされる「春一番」は東日本と西日本の現象で、北日本と沖縄にはありません。
気象庁が「春一番」の目安となる定義をきめて、「お知らせ」を発表しているのは、東日本と西日本だけです(表2)。
令和2年(2020年)の立春以降、日本付近は低気圧と高気圧が交互に通過していますが、日本海で低気圧が大きく発達することがなく、強い南風が吹いたのは比較的狭い範囲で短い時間でした。
これは、暖気が大きく北上しても、寒気があまり南下することがないために、低気圧が大きく発達しなかったためです。
高松地方気象台は、2月13日に「2月12日午後から13日明け方にかけて四国地方で春一番が吹いた」と発表しましたが、南寄りの10メートル以上の風が吹いたのは徳島だけでした。
また、名古屋地方気象台が「2月16日に東海地方で春一番が吹いた」と発表したときも、東海の4地方気象台のうち、風速で基準を超えたのは静岡のみでした。
さらに、新潟地方気象台が「2月16日に北陸地方で春一番が吹いた」と発表したときも、北陸の4地方気象台のうち、風速で基準を超えたのは金沢と富山のみでした。
つまり、四国、東海、北陸で春一番が吹きましたが、小出しの「春一番」でした。
2月22日の土曜日も、日本海に低気圧があり、広い範囲で雨が降り、強い南風が吹いて荒れた天気になるおそれがあります(図3)。
このため、春一番が吹くところもありそうですが、低気圧の位置が日本海の北部すぎていますので、吹いたとしても局地的な春一番になりそうです。
「雨一番」
北海道では、春を告げる「春一番」がない代わりに、「雨一番」があります。
立春のあと、はじめて雪をまじえずに雨だけが降る日のことをいい、気象庁の初代広報室長だった平塚和夫さんが昭和60年(1985年)に作った言葉です。
令和2年(2020年)の雨一番は、函館と室蘭で2月13日に観測しています。
函館の2月13日の昼間の天気は「曇り一時雨」、夜の天気は「曇り時々晴れ」でした。
また、室蘭の2月13日の昼間の天気は「曇りのち時々晴れ」、夜の天気は「晴れのち曇り一時雨」でした。
平塚さんの著書によると、函館の平均日が3月2日、室蘭の平均日が3月5日となっていますので、ともに、かなり早い雨一番ということができそうです。
札幌では雨一番がまだ観測されていませんが、2月9日頃の寒さを底に、平年より気温が高い日が多い予報ですので、3月15日という平均日よりは早まるかもしれません(図4)。
今度の3連休は、初日は大荒れになるかもしれませんが、天皇誕生日の2月23日と振り替え休日の24日は、全国的に晴れる所が多く、来週中頃は春本番の陽気になると考えられます。
表1、表2の出典:気象庁資料をもとに著者作成。
図1の出典:気象庁ホームページ。
図2、図4の出典:気象庁資料とウェザーマップ資料をもとに著者作成。
図3の出典:ウェザーマップ提供。