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令和2年のセンター試験の天気は初日の朝が問題

饒村曜気象予報士
受講する高校生(写真:アフロ)

西高東低の気圧配置(冬型の気圧配置)

 4月に入学となると、1~2月に入学試験となりますが、この頃は、一年で一番寒い時期です。

 しかも、天気は、全国各地で大きく異なることが多い季節です。

 令和2年(2020年)の大学入試センター試験は1月18日(土)と19日(日)に行われますが、冬に多い西高東低の気圧配置(冬型の気圧配置)になりそうです。

 冬型の気圧配置になると、日本海側では雪が主体の天気、太平洋側では晴れが主体の天気での試験になります(図1)。

図1 令和2年のセンター試験初日(1月18日)の天気予報
図1 令和2年のセンター試験初日(1月18日)の天気予報

 全国一斉の試験ですので、受験生が天気によって大きな不利となる地方がでないよう、試験に関係する多くの人が、当日の天気予報をもとに対策をとっています。

 つまり、試験を受けるのは受験生だけではありません。試験の関係者は、当日の天気の問題についての試験が行われているのです。順調に試験が行われてあたりまえ、順調でなければ非難をうけるという責任を伴った受験です。

大学入試センター試験が8月に行われたら

 現在の日本の大学のほとんどは、4月入学ですが、欧米の大学のように、大学入学が10月となり、全国一斉試験が8月となった場合はどうなるのでしょうか。

 暑さ対策が必要ですが、多くの年は冬ほどの地域差がでません。ただ、台風がやってくる年があり、その場合は、深刻な影響がでる可能性があります。

 試験関係者に対する「当日の天気の問題」は、1月試験の場合は難しい年が多く、8月試験の場合は易しい年が多くても、極端に難しい年が混じっているという、どちらにしても、大変です。

 試験の規模が全く違いますが、気象予報士試験は、毎年1月と8月に、全国6ヶ所(北海道、宮城県、東京都、大阪府、福岡県、沖縄県)で一斉に行われます。

 令和2年(2020年)1月26日(日)に行われる予定の気象予報士試験は、53回目ですが、この間、気象が原因で中止となったのは、38回(平成24年8月)の沖縄県の1回だけです。

 1月の中止はありません。

 この38回の気象予報士試験では、大型で非常に強い台風15号が沖縄県に接近したための、沖縄県だけの中止で、沖縄県の受験生に対しては、後日、全く違った問題を使って再試験が行われました。

試験前日の南岸低気圧

 令和2年(2020年)のセンター試験では、試験当日の天気よりも、前日の天気に注意が必要です。

 というのは、東日本から西日本は南岸低気圧の通過によって冷たい雨の予報だからです(図2)。

図2 センター試験前日夜の雨分布予想(1月17日9時から21時の12時間降水量)
図2 センター試験前日夜の雨分布予想(1月17日9時から21時の12時間降水量)

 寒気の南下が平年並みと、極端に強くはありませんので、東日本から西日本の広い範囲で予報は雨です。

 しかし、もう少し寒気の南下が強ければ、東日本の太平洋側でも雪の可能性もでてきます。

 日本上空約1500メートルの気温分布をみると、関東北部から北陸地方まで氷点下6度の寒気が南下しています(図3)。

図3 上空約1500メートルの予想気温分布(1月18日夜)
図3 上空約1500メートルの予想気温分布(1月18日夜)

 上空約1500メートルで氷点下6度は、雨が雪に変わる目安ですので、降水現象があれば、北日本と関東北部、北陸地方では雪、その他の地方では雨となります。

 ただ、雨であっても18日(土)の朝は冷え込み、濡れた道路が凍結している可能性があります。

 最新の気象情報の入手に努め、時間に余裕をもって試験会場に向かってください。

前身の共通一次試験は南岸低気圧で雪の中で始まった

 大学入試センター試験が始まったのは、平成2年(1990年)からですが、その前身の「共通一次試験」が始まったのは、昭和54年(1979年)1月13日です。

 このとき、南岸低気圧により、太平洋側で雪が降っています。

 全国225会場で一斉に行われた試験に34万人が挑戦しましたが、青森では大雪注意報が発表となり、関東から山梨、長野も雪景色でした。

 東京は小雪がちらつく天気でしたが、交通機関への大きな影響はなく、試験関係者の努力によって、雪の影響もなく順調に試験が行われました(図4)。

図4 共通一次試験のイラスト
図4 共通一次試験のイラスト

 日本海側の受験生が雪で苦労することが多いのですが、年によっては、南岸低気圧によって太平洋側で大雪となり、太平洋側の受験生が大変な目にあうことがあります。

 天気は多かれ少なかれ、不公平です。これを乗り越え頑張ろう受験生。

図1、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典:饒村曜(平成10年(1998年))、天気のしくみ、新星出版社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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