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台風27号発生 令和元年は「台風の当たり年」とは言わない

饒村曜気象予報士
台風26号の雲(左下)と熱帯低気圧の雲(台風26号の南東方向)

台風27号の発生

 フィリピンの東海上で、11月20日9時に台風27号が発生しました(図1、タイトル画像参照)。

図1 予想天気図(11月20日9時の予想)
図1 予想天気図(11月20日9時の予想)

 台風発生数の平年値は25.6個ですので、すでに平年値を上回っています(表)。

表 台風の発生数、接近数、上陸数(11月19日現在)
表 台風の発生数、接近数、上陸数(11月19日現在)

 また、11月に5個の発生は、台風資料が整備されている昭和26年(1951年)以降では、平成3年(1991年)と昭和39年(1964年)の6個に次ぐ、3位タイの多さです。

 筆者が以前調査した11月の台風の統計によると、この海域で発生した台風は西北西してフィリピンを通過、南シナ海に入り、一部は台湾の南まで北上します(図2)。

図2 11月の台風の平均経路
図2 11月の台風の平均経路

 台風27号も、ほぼ統計通りのコースを予報していますので、例年通りの11月の台風といえそうです(図3)。

【図3追加(11月20日13時)】

図3 台風27号の進路予報(11月20日12時)
図3 台風27号の進路予報(11月20日12時)

 台風予報は最新のものをお使いください

台風の上陸と接近

 台風の中心が北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合を「台風の上陸」といいます。

 令和元年(2019年)は、7月27日に台風6号が三重県南部に、8月6日に台風8号が宮崎市付近に、8月14日に台風10号が広島県呉市付近に、9月9日には台風15号が千葉市付近に、10月10日に台風19号が静岡県伊豆半島に上陸しています。

 これから年末にかけて、台風上陸の可能性はほとんどないと思われますが、すでに、台風上陸は5個と、平年の上陸数の2.7個の約2倍です。

 昭和26年(1951年)以降で一番多く上陸したのは、平成16年(2004年)の10個、平成5年(1993年)と平成2年(1990年)の6個に次ぐ、4位タイの多い上陸数です。

 これは、平成以降、台風の上陸数が増えていることを意味するものではありません。

 台風が1個も上陸しない年も増えており、平均すればほぼ同じ上陸数です。

 つまり、平成以降は、極端になっているのです。

 また、台風の中心が国内のいずれかの気象官署から300キロ以内に入った場合を「台風の接近」といいますが、すでに14個と、平年値を上回っています(発生や上陸と違って、接近は隣接する月に同時にカウントされることがありますので、月の値の合計は年の値にはなりません)。

 台風5号のように、東シナ海を北上して上陸しなかった台風でも、台風の接近により7月20日に長崎県の五島と対馬で大雨特別警報が発表となりました。

 沖縄や小笠原では、11月下旬以降でも、10年に1個くらいは、台風接近の可能性がありますので、台風シーズンが完全に終わっているわけではありません。

「台風の当たり年」とは言わない

 令和元年(2019年)は台風発生数、上陸数ともに平年を上回っていますが、「台風の当たり年」とは言いません。

 「当たり」という言葉は「縁起が良い」「幸運に恵まれた」という意味もあり、農作物の収穫が多かったり、思い通りになった年が「当たり年」ということになります。

 「NHKことばのハンドブック」によれば、NHKは、台風をはじめ地震・津波など災害関連情報を伝えるときには、一般に「明るい語感やプラス・イメージを持つ語」は避けて放送することになっています。

 令和元年(2019年)は、台風の発生、接近、上陸が「多かった年」です。

タイトル画像、図1、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:「饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁」を著者加筆。

表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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