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次の台風発生は危険な海域

饒村曜気象予報士
台風が近づく空(写真:アフロ)

台風15号の深刻な後遺症

 静岡県から関東地方に記録的な暴風をもたらし、9月9日5時前に千葉市付近に上陸した台風15号は、10日15時に日本の東海上で温帯低気圧に変わりました。

 台風15号による東京電力管内では、平成23年(2011年)3月11日の東日本大震災以来で最大規模となる約93万軒で停電が発生しました。

 当初、東京電力ホールディングスは、台風15号による停電の軒数を11日未明までに約12万軒まで縮小する計画でしたが、被害が大きかった千葉県で10日夜に雷雨があるなどで作業が遅れ、全面復旧は13日になりそうとの報道があります。

 台風15号が持ち込んだ暖気に、晴れたことによる強い日射で、日本列島は記録的な暑さが続いていますが、その中での長期間の停電です。

 猛暑の中でクーラーが使えない、冷蔵庫の中身がダメになる、携帯電話が使えない(基地局の機能停止と個人端末の電池切れ)といった電気そのものの問題だけではなく、電気がないと機能しなくなる水道の問題があります。

 水が使えない、トイレが使えないなど、長時間の停電の影響は、社会生活を根本的に麻痺させますので深刻です。

 台風15号が9月5日15時に南鳥島近海で発生したときの進路予報では、台風15号は8日夜から9日にかけて、東京湾へやってくるというもので、予想通りです(図1)。

図1 台風15号の台風予報(9月5日15時の予報)
図1 台風15号の台風予報(9月5日15時の予報)

 しかも、これから発達し、暴風域を伴なって東京湾に襲来するという強度予報も予想通りでした。

 精度が良くなっている台風予報を、どのように発表し、どのように伝え、どのように利用するか、各方面で新たな課題がでてきたのが台風15号であったと思います。

台風16号発生か

 千葉県の停電など、台風15号の後遺症が続いていますが、フィリピンの東海上で台風が発生しそうです。

 というのは、現在の熱帯には3つの台風の卵となる雲の渦巻きがあるからです(図2)。

図2 気象衛星から見た3つの台風の卵(9月11日15時)
図2 気象衛星から見た3つの台風の卵(9月11日15時)

 一番東のマーシャル諸島近海のものと、フィリピンのすぐ東海上のものは、熱帯低気圧になるまで時間がかかりそうですが、真ん中のフィリピンの東海上にあるものは、すでに熱帯低気圧になっています。

 そして、気象庁では、この熱帯低気圧が24時間以内に台風になって北西進すると予報しています(図3)。

図3 予想天気図(9月12日9時の予想)
図3 予想天気図(9月12日9時の予想)

 場合によっては、台風が2個、3個と発生するかもしれません。

 複数の台風があると、「藤原の効果」により、お互いに影響しあって複雑な動きをします。

 このため、複数の台風があると、進路予報誤差は大きくなる傾向があります。

9月の台風

 資料は少し古くなりますが、以前に、昭和26年(1951年)から昭和52年(1977年)の資料を用いて、台風について調べたことがあります。

 9月に北緯20度以南で発生したほとんど台風は、西進から北西進して、沖縄の南東海上にやってきます。

 そして、その海域から北上して西日本・東日本に接近するものと、そのまま西進を続けてバシー海峡から南シナ海に向かうものに分かれます(図4)。

図4 9月の台風の平均経路(数値は空間平均した存在数、1951~1977)
図4 9月の台風の平均経路(数値は空間平均した存在数、1951~1977)

 台風がどのタイミングで、どこで発生するかによって台風の進路は大きく変わりますが、コンピュータの計算した三連休の中日、9月15日の雨や風の予報では、沖縄の南東海上に風が渦を巻いています(図5)。

図5 秋の三連休中日の雨と風の分布(9月15日9時の予想)
図5 秋の三連休中日の雨と風の分布(9月15日9時の予想)

 沖縄の南東海上の風の渦は、これから発生する台風に対応するのかもしれません。

 新たに発生する台風とした場合、三連休明けに西進して中国大陸に向かうか、それとも北上して西日本から東日本に接近するかは、現時点では何ともいえません。

 ただ、この風の渦は、中心を取り巻く環状ではなく、少し北東に伸びていて、関東地方は台風から離れている時点から雨が降りだす可能性があるなど、単純な予報ではなさそうです。

 雑節に「二百十日(立春から数えて210日目で9月1日頃)」と「二百二十日(立春から数えて210日目で9月11日頃)」があります。

 台風によって被害がではじめるので注意するのが「二百十日」、大きな被害がではじめるので警戒するのが「二百二十日」という意味で設けられたものと思います。

 というのは、過去に記録的な大災害が発生した台風の多くは、9月中旬から下旬と、「二百二十日」以降です。

 また、過去に記録的な大災害が発生した台風の発生海域は、現在、次の台風が発生する可能性があるとしている、フィリピンの東海上で発生した台風です。

 台風が発生した場合は、最新の台風情報に注意して警戒する必要があります。

図1、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料に著者加筆。

図3の出典:気象庁ホームページ。

図4の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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