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台風15号が上陸か、昔で言えば急に風雨が強くなる「豆台風」

饒村曜気象予報士
東日本に接近中の台風15号(9月8日4時50分)

台風15号が東日本へ

 強い台風15号が小笠原近海から向きを北に変え、東日本に接近中で、場合によっては静岡から関東南岸に上陸する可能性があります(図1)。

図1 台風15号の進路予報(9月8日3時の予報)
図1 台風15号の進路予報(9月8日3時の予報)

 台風15号の進路予報は最新のものをお使いください

 台風15号が上陸したとなると、令和元年4個目の上陸台風ということになります。

 令和元年は台風の発生個数が平年より少ないのですが、上陸した台風は、7月の台風6号、8月の台風8号と台風9号の3個も上陸し、平年の上陸数は2.7個を上回っています。

 台風15号により風速25メートル以上の暴風域に入る確率は、静岡県から関東沿岸にかけては70パーセントを超えています(図2)。

図2 台風15号の暴風域に入る確率の分布
図2 台風15号の暴風域に入る確率の分布

 3時間ごとに暴風確率が一番高い時間帯を見ると、9月8日(日)21時から24時か、9日(月)0時から3時です。

つまり、この時間帯に台風15号の最接近が予想されています(図3)。

図3 横浜・川崎で暴風域に入る3時間ごとの確率時系列
図3 横浜・川崎で暴風域に入る3時間ごとの確率時系列

 つまり、日曜から月曜にかけての真夜中の接近ですので、東日本で台風15号に備えるには、きょう、8日(日)の日中しかありません。

昔でいえば「豆台風」

 台風15号の特徴を一つあげると、台風の強さの割には大きさが小さい台風で、中心付近では急に風が強まることがあります。

 9月8日3時現在で、中心気圧が960ヘクトパスカル、最大風速が毎秒40メートル(最大瞬間風速が60メートル)と発達しているにもかかわらず、最大風速が25メートル以上の範囲(暴風域)は90キロしかありません。

 台風の進行速度が時速30キロですから、単純計算すると、台風中心が通った場合でも、暴風が吹くのは3時間前、少しずれた場合は、これよりも直前ということになります。

 このように、台風15号は、かなり接近してから急に暴風が吹く台風です。

 気象庁では、安心を与えてしまうなどの理由から、台風情報等で使用を控える用語になっていますが、昔は、「豆台風」といわれ、新聞等でも使われていた言葉です(表)。

表 気象庁での「豆台風」、「風台風」等の用語の取り扱い(気象庁ホームページより)
表 気象庁での「豆台風」、「風台風」等の用語の取り扱い(気象庁ホームページより)

 気象衛星がない時代、豆台風は発見が遅れがちでした。

 豆台風が襲来し、被害が出てから気がつくということも少なくありませんでした

 現在は、気象衛星の登場で、小さい台風(豆台風)であっても、発生初期から正確にとらえることができますので、不意打ちはありません。

台風15号の暴風の範囲

 台風15号の暴風の範囲は狭いものです。

 9月8日18時には台風15号が静岡県沖に接近してきますが、暴風が吹いているのは海上です(図4)。

図4 台風15号と東シナ海の熱帯低気圧の雨と風の予報(9月8日18時の予想)
図4 台風15号と東シナ海の熱帯低気圧の雨と風の予報(9月8日18時の予想)

 東日本の沿岸部では、この段階ではそれほど強い風が吹いていなくても、台風15号の北上と共に、急に風や雨が強まることを示しています。

 台風15号による雨は、9月8日6時から9日6時までの24時間に、関東・東海で300ミリ、伊豆諸島で200ミリです。

 その後、台風の北上に伴って東北地方を中心に雨が降り、9日18時までの36時間では、東北地方南部でも200ミリに達する可能性があります(図5)。

図5 36時間降水量の予想(9月8日6時から9日18時)
図5 36時間降水量の予想(9月8日6時から9日18時)

 局地的に雷を伴った猛烈な雨が降り大雨となる可能性がありますので、土砂災害や低い土地に浸水、河川の増水や氾濫に警戒してください。

東シナ海に熱帯低気圧

 台風15号とは別に、東シナ海に熱帯低気圧があります。

 次第に勢力を強めていますが、最大風速が17.2メートル以上になるまで発達して台風にはならず、台風13号のように朝鮮半島に向かう予報です(図6)。

図6 予想天気図(9月9日21時の予想)
図6 予想天気図(9月9日21時の予想)

 しかし、台風にまで発達しなくても、この熱帯低気圧は強い雨雲を伴っていますので、沖縄では8日(日)昼過ぎまで雨で、所により激しく降るでしょう。

 また、8日(日)は、四国の太平洋側と九州でも、所により強い雨が降る見込みです。

 台風15号に注目が集まっていますが、西日本・沖縄では、東シナ海の熱帯低気圧に伴う雨雲にも注意が必要です。

 図6には、南の端に気圧が低い部分があります。

 近い将来、ここに熱帯低気圧が発生し、台風にまで発達する可能性もありますので、台風に警戒すべき期間は、まだまだ続きます。

タイトル画像、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図2、図3、図6、表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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