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動きの速い台風8号が九州上陸へ、台風9号は強い勢力でゆっくり沖縄へ

饒村曜気象予報士
台風8号の雲と台風9号の雲(8月4日15時)

この季節としては動きが速い動作台風8号

 台風8号が本州の南海上にあって、時速30キロで西北西に進んでおり、8月6日(火)未明から明け方に九州上陸の可能性があります(図1)。

図1 台風8号の進路予報(8月5日3時の予報)
図1 台風8号の進路予報(8月5日3時の予報)

台風の進路予報は最新のものをお使いください。 

 台風8号は九州を縦断し、朝鮮半島を縦断して7日夜には日本海西部で熱帯低気圧に変わる見込みです。

 日本付近には、上空に寒気が南下してきませんので、台風8号が北上したあとも、南海上から暖かくて湿った空気が流入してきます。

 このため、西日本を中心に再度の猛暑の可能性もあります。

 資料は少し古くなりますが、以前に、昭和26年(1951年)から昭和53年(1978年)の資料を用いて、台風の進行速度について調べたことがあります。

 8月の台風の統計では、本州の南海上の北緯30度付近を西から北西に進む台風の平均速度は10.5ノット(毎時19キロ)ですから、台風8号は、この季節としては速い速度での九州接近です(図2)。

図2 西から西北西に進む台風の平均速度(8月)
図2 西から西北西に進む台風の平均速度(8月)

 西進速度が速いということは、太平洋高気圧の南端にある上空の偏東風帯が例年より北に上がっていることが考えられます。

 日本付近に猛暑をもたらしている太平洋高気圧の勢力が見かけほど強くはない(長続きしない)のかもしれません。

台風8号の大きさ

 台風の大きさについては、平成12年(2000年)から、強風域(風速が毎秒15メートル以上の範囲)の大きさが800キロ以上を「超大型」、500~800キロを「大型」と呼ぶものの、強風域の大きさが500キロ未満の台風には大きさの表現をしていません。

 台風8号が、小笠原諸島の父島に最接近していた8月4日11時の強風域は、北側330キロ、南側170キロと、平均では250キロですので、「大きさの表現をしない台風」です。

 平成11年(1999年)までは、強風域が200キロ未満が「ごく小さい」、200~300キロが「小型」、300~500キロが「中型」としていましたので、台風8号は「小型の台風」ということになります。

 気象庁が、「小型」など大きさの表現をやめたのは、台風情報が、それほど危険でないと一般利用者に安心感を与えないためです。

 しかし、もともと「小型」や「ごく小さい」といっても台風と名前が付く以上、強い風と雨を伴っています。

 加えて、「小型」や「ごく小さい」台風には、特有の危険性もあります。

 それは、急に風雨が強まることです。

 台風8号が5日夕方に四国沖まできても、九州南部に強い雨や強い風の範囲がかかりません(図3)。

図3 台風8号の雨と風の予測(8月5日15時の予報)
図3 台風8号の雨と風の予測(8月5日15時の予報)

 油断して寝てしまうと、就寝中に風や雨が強まることになります。

 台風8号の防災対策は、雨や風が強まる前の8月5日の日中に行う必要があります。

台風9号の発生

 8月4日15時にフィリピンの東海上で台風9号が発生し、北上中です(図4)。

図4 台風9号の進路予報(8月5日3時の予報)
図4 台風9号の進路予報(8月5日3時の予報)

台風の進路予報は最新のものをお使いください。 

 8月の台風の統計では、フィリピンの東海上の東経130度付近を北北西から北北東に進む台風の平均速度は9ノット(毎時17キロ)と、速い速度での北上はありません(図5)。

図5 北北西から北北東に進む台風の平均速度(8月)
図5 北北西から北北東に進む台風の平均速度(8月)

 発生したばかりの台風9号は、発達しながらのゆっくりした速度で沖縄に向かって北上するということは、今週半ば以降の天気予報に大きな影響をあたえます。

図6 各地の10日間予報(数字は最高気温)
図6 各地の10日間予報(数字は最高気温)

 現在の各地の10日間予報は図6のようになっていますが、台風の進路によっては、また変わるかもしれませんので、最新の気象情報の入手に努めてください。

 夏休みやお盆休で多くの人が海や山へでかけると思います。

 台風の風や雨によって、思わぬ事故に遭遇する可能性がありますので、楽しくて安全なレジャーのためには、まず情報入手です。そして、引き返す(出直す)勇気です。

 危険を冒さなくても、海や山はいつでも待っています。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供に著者加筆。

図1、図4の出典:気象庁ホームページ。

図2、図5の出典:饒村曜(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計(第2報)進行速度、研究時報、気象庁。

図3、図6の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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