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梅雨明け間近の日本に迫る台風の卵

饒村曜気象予報士
日本の南海上の積乱雲(7月23日15時)

梅雨明け間近

 7月23日の西・東日本と東北地方は、暖かくて湿った空気が入ったために大気の状態が不安定となり、局地的に激しい雨の所がありました。

 24日も引き続き暖かくて湿った空気が入り、不安定の雨が降ると思われます。

 しかし、梅雨前線はすでに消滅しています(図1)。

図1 地上天気図(7月23日15時)
図1 地上天気図(7月23日15時)

 各地の週間天気予報をみても、北海道を除いて、お日さまマークが続く予報ですので、週初めの不安定の雨が止めば、東北を除く各地で梅雨明けの発表があると思います(図2)。

図2 日本各地の週間天気予報(気象庁による)
図2 日本各地の週間天気予報(気象庁による)

 仮に、7月24日に梅雨明けしたとしても、北陸で平年並み、それ以外の地方では、平年より遅い梅雨明けとなります(表)。

表 令和元年の梅雨明け
表 令和元年の梅雨明け

 特に九州南部では10日も遅い梅雨明けになります。

 令和元年梅雨明けは、「全国的に平年より遅く、特に九州南部と奄美地方で遅かった」といえそうです。

【追記(7月24日12時)】

気象庁は、7月24日昼前に、九州北部、九州南部、四国、近畿、北陸地方に梅雨明けを発表しました。

例年は「梅雨明け10日」

 昔から「梅雨明け10日」という言葉があります。

 梅雨明け後の10日間は、晴天が続いて行楽日和になるという意味ですが、今年は、あてはまらないかもしれません。

 というのは、日本の南海上には発達した積乱雲の塊があるからです(タイトル画像参照)。

 この積乱雲の塊が発達して熱帯低気圧(熱低)になる見込みです(図3)。

図3 予想天気図(7月25日9時の予想)
図3 予想天気図(7月25日9時の予想)

 現時点では、発生した熱帯低気圧が台風にまで発達するかどうかはわかりませんが、北上してくるなら、週末の、それも梅雨明け直後の日本列島を襲うことになります。

 ようやく梅雨が明け、「梅雨明け10日」の週末、行楽を台無しにする台風の襲来です。

発生初期の熱帯低気圧は予報が難しい

 発生初期の熱帯低気圧の予想は、最新のスーパーコンピュータを用いた数値予報でも難しい予想の一つです。

 数値予報では、積乱雲の塊が渦をまく段階になれば別ですが、積乱雲の塊があるだけの段階では、予報精度がかなり落ちます。

 現時点においては、日本の気象庁やアメリカの海洋大気庁(NOAA)、ヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)の予報はバラバラですが、いずれも北上を示唆しています。

 そして、熱帯低気圧(台風)の動向は、週間天気予報を大きく変えさせます。

 前述の図2の各地の週間天気予報には、台風の影響が十分反映されていませんので、週末の行楽には最新の気象情報を用いてください。

 東京の16日先までの天気予報をみると、7月28日(日)は、お日さまマークはありますが、黒雲(雨の可能性がある曇り)マークも、雷マークもついています。熱帯から暖くて湿った空気が流入することで大気が非常に不安定なることを示唆していますが、信頼度は5段階評価で1番低いEです(図4)。

図4 東京の16日先までの天気予報
図4 東京の16日先までの天気予報

 ただ、翌日の7月29日から8月7日までの天気予報は、信頼度が5段階で1番高いAか、2番目に高いBでのお日さまマークです。

 「梅雨明け10日」に荒れることになっても、その後は行楽日和が続きます。

 まずは、週末の天気に注目です。

タイトル画像、図2、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図3、表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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