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令和元年の梅雨明けは

饒村曜気象予報士
暑がるビジネスマン(写真:アフロ)

令和元年の梅雨入り

 令和元年(2019年)の沖縄の梅雨入りは平年より7日遅い5月16日でした。

 沖縄県奄美の梅雨入りが5月14日ですので、これより2日遅れて梅雨に入りました。

 その後、6月7日に東海から東北南部まで梅雨入りをし、6月15日には東北北部も梅雨入りをしました(表1)。

表1 令和元年(2019年)の梅雨入り(速報値)
表1 令和元年(2019年)の梅雨入り(速報値)

 東海から東北北部は、上空に北から寒気が流入したり、下層に南から湿った空気が流入することが多かったために、梅雨前線によるものではありませんが、曇りや雨の日が続いたということでの梅雨入りです。

 つまり、曇りや雨の日が多いということでの梅雨入りで、梅雨前線による雨が降っての梅雨入りではありません。

 令和元年(2019年)は、太平洋高気圧の発達が遅れ、梅雨前線が沖縄付近から北へ押し上げられることがなかったため、近畿・中国・四国・九州北部の梅雨入りは6月26日と、平年より2週間以上遅れました。

 梅雨入り、梅雨明けについては、昭和26年(1951年)以降のデータベースが作られていますが、52年前の昭和42年(1967年)以来の遅い記録を更新しました(表2)。

表2 西日本の遅い梅雨入り(近畿と四国で梅雨入りが特定できなかった昭和38年(1963年)を除く)
表2 西日本の遅い梅雨入り(近畿と四国で梅雨入りが特定できなかった昭和38年(1963年)を除く)

 西日本の梅雨入りが遅れた52年前、昭和42(1967年)の梅雨には、西日本各地に大きな豪雨被害が発生し、「昭和42年(1967年)7月豪雨」と命名されました。

昭和42年(1967年)7月豪雨と令和元年の九州南部の記録的豪雨

 昭和42年(1967年)7月上旬(7日~10日)の大雨は、「昭和42年7月豪雨」と、気象庁が命名するほど大きなものでした。

 本州の南岸に停滞していた梅雨前線に、台風第7号から変わった熱帯低気圧から暖湿気流が流れ込みました。

長崎県佐世保市、広島県呉市、兵庫県神戸市といった背後に山地がある都市部で雨によって土中の水分が多く含まれているところに大雨となったため、土砂崩れや鉄砲水が多発し、300名以上の人がなくなる大災害が発生しました。

 梅雨入りが遅れた令和元年(2019年)の西日本も、梅雨入り早々に記録的な豪雨となりました。

 九州南部(鹿児島県と宮崎県)と熊本県では、6月28日からの144時間(6日間)降水量は400ミリを超え、宮崎県えびのでは、1000ミリを超えました(図1)。

図1 総降水量(6月28日22時から7月3日21時までの144時間(6日間)降水量)
図1 総降水量(6月28日22時から7月3日21時までの144時間(6日間)降水量)

 梅雨前線は停滞前線の一種で、もともと南北方向への移動は少ないのですが、令和元年(2019年)6月28日からは、全く動きませんでした。

 このため、太平洋高気圧の縁を回るように、湿った空気が、同じ場所に流入し続けました。高気圧の縁を回るように流入した空気の中には熱帯低気圧(熱低)も含まれています。

 台風や熱帯低気圧は、赤道気団という上空まで湿った空気の塊です。太平洋高気圧のような熱帯気団は、下層は湿っているのですが、上空は乾いています。

 熱帯気団に覆われても、南から暖湿気流が流入して大雨になりますが、赤道気団に覆われると、同じ南から暖湿気流が流入すると言っても、大気全体の水蒸気の量が多い分だけ豪雨となりやすく、より厳重に警戒が必要となります。

梅雨らしい日が続く一週間

 現在、梅雨前線は沖縄付近まで南下していますので、梅雨が明けた沖縄では戻り梅雨、それ以外の地方では梅雨の中休みに入っています(図2)。

図2 予想天気図(7月7日9時の予想)
図2 予想天気図(7月7日9時の予想)

 しかし、週明けは、梅雨前線が北上し、梅雨のない北海道と、梅雨が明けた沖縄を除くと、ほぼ全国的に雨や雨を降らせる可能性がある曇りの日が続きます(図3)。

図3 各地の10日間予報
図3 各地の10日間予報

 来週は、梅雨前線の活動が活発になってきますので、再び雨に対する警戒が必要となります。

 そこで気になるのが今年の梅雨明けです。

令和元年の梅雨明けは

 現在、梅雨明けをしているのは沖縄だけです。

 平年では6月29日に梅雨明けをしている奄美も梅雨が明けていません(表3)。

表3 令和元年の梅雨入り(速報値)
表3 令和元年の梅雨入り(速報値)

 鹿児島県・奄美の名瀬の16日先までの天気予報を見ると、7月9日は雨の確率が高く、降水の有無の信頼度は、5段階で一番良いA、また、11日は晴れの確率が高く、信頼度もAです(図4)。

図4 16日先までの天気予報(名瀬の場合)
図4 16日先までの天気予報(名瀬の場合)

 しかし、10日は晴れの確率が高いものの、雨などの確率もあり、信頼度は5段階で一番悪いEです。

 名瀬の16日先の天気予報から見ると、奄美の梅雨明けは平年より11日遅い、7月10日前後ということができるでしょう。

 同じ鹿児島県でも、鹿児島市の場合は、7月9日から17日まで傘マークが並びます。

 そして、18日から20日は黒雲(雨の可能性がある曇り)マークが並び、晴れマークがでてくるのは21日です(図5)。

図5 16日先までの天気予報(鹿児島の場合)
図5 16日先までの天気予報(鹿児島の場合)

 17日は雨、18日から20日は黒雲の確率が高いのですが、ほかの天気になる確率もあり、17~20日の信頼度はEです。

 20日の晴れマークにしても、信頼度は下から2番目のDです。

 信頼度が低い予報ですが、平年より、一週間ほど遅い21日が九州南部の梅雨明けかもしれません。

 ただ気になるのは、来週から連続する傘マークです。

 特に、11日と14日は雷を伴って激しく降る可能性があります。

 記録的な豪雨となった九州南部では、まだ、土の中に水分が残っており、土砂災害は発生しやすくなっています。

 梅雨明け前の豪雨、つまり梅雨末期豪雨には、厳重な警戒が必要です。

 一方、東京はというと、7月19日までは傘マークや黒雲マークが続き、晴れマークや白雲(雨の可能性が低い曇り)マークがでてくるのは、20日以降です(図6)。

図6 16日先までの天気予報(東京の場合)
図6 16日先までの天気予報(東京の場合)

 信頼度は、19日がE、20日がC、21日がBと、日ごとに精度が高くなっていますので、関東甲信地方の梅雨明けは、ほぼ平年並みの20日前後ということができそうです。

 

 九州南部だけでなく、来週はほぼ全国的に梅雨末期豪雨に警戒が必要です。

 最新の気象情報を入手し、早めの避難行動をお願いします。

図1、図3、図4、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図2、表1、表3の出典:気象庁ホームページ。

表2の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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