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前線のない小さな低気圧は大気が不安定

饒村曜気象予報士
Thunders in the night(写真:アフロ)

日本上空に強い寒気

 日本上約5500メートルに氷点下30度という寒気が日本海に南下しています(図1)。

図1 上空約5500メートルの気温(3月17日朝)
図1 上空約5500メートルの気温(3月17日朝)

 この寒気は東進し、あすには日本の東海上に抜ける見込みです。

 この上空約5500メートルで氷点下30度という寒気は、冬場であれば、平地で雪が降る温度ですが、早春となって地表付近の気温が高くなっているので、雨のところが多くなっています。

 逆に、地表面付近の気温が高いということは、冬場に氷点下30度の寒気が入ってくるときより上下の温度差が大きくなり、大気が不安定となることを意味しています。

 大気の状態が不安定となるため、晴れていても急な強い雨や落雷などに注意が必要となります。

 3月16日(土)には、西日本や東日本の所々で雷雨となり、大阪や箱根で雹(ひょう)が降ったりしましたが、17日(日)も状況は同じです。

前線のない小さな低気圧

 高層天気図では、日本上空に寒気が入ってくればすぐわかりますが、地上天気図からではよくわかりません。

 しかし、強い寒気が入ってくる場合は、すぐにわかります。

 地上天気図に前線を伴っていない小さな低気圧ができるからです。

 逆に、地上天気図に小さな低気圧が解析されている時は、上空に強い寒気を伴っており、大気の状態が不安定となるため、積乱雲の発達に警戒が必要ということを意味しています。

図2 地上天気図(3月17日3時の実況と21時の予報)
図2 地上天気図(3月17日3時の実況と21時の予報)

 図2左は、17日3時の地上天気図ですが、日本海西部に小さな低気圧があります。この低気圧の上空に強い寒気が入っています。

 図2右の17日21時の予想天気図には、関東付近に小さな低気圧があり、上空の寒気は日本の東海上に抜けつつあることを示しています。

大気不安定のときの注意事項

 「大気の状態が不安定」について、気象庁ホームページでは次のように説明しています。

「大気の不安定」とは、上空に冷たい空気があり、地上には温められた空気の層がある状態です。温かい空気は上へと昇り、冷たい空気は下へと降りようとするため対流が起きやすくなります。地上付近の空気が湿っているときは、さらに大気の状態が不安定となり、積乱雲が発達しやすくなります。

図3 翌日の午後に屋外で行動する場合にチェックすべき気象情報
図3 翌日の午後に屋外で行動する場合にチェックすべき気象情報

 気象庁では、大気が不安定な時に発生する急な大雨や雷、竜巻から身を守るために、気象情報の見方をホームページでまとめています(図3)。

 そして、「空の様子に注意し、積乱雲が近づく兆しを感じたら、しばらく避難!」と呼びかけています。

 「真っ黒い雲が近づいてきた」「雷の音が聞こえてきた」「急に冷たい風が吹いてきた」というのは、積乱雲が近づいている兆しですので、しばらく避難をし、「自分の身は自分で守る!」という意識が大事です。

次の寒気は

 3月16~17日に寒気が日本付近を通過したあとは、太平洋高気圧が勢力を強め、ほぼ一週間は全国的に気温が上昇します(図4)。

図4 各地の10日間予報
図4 各地の10日間予報

 さくら開花のたよりが西日本や東日本の太平洋側から聞かれると思います。

 ただ、さくらの開花後、強い寒気が南下してきますので、花に嵐ということになるかもしれませんが、気温が低くなって満開はすこし遅くなります(図5)。

図5 上空約5500メートルの気温(3月23日夜)
図5 上空約5500メートルの気温(3月23日夜)

 今年は、花見に適した期間が長くなりそうです。

図1、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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