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台風2号の動きはまるで4月の台風

饒村曜気象予報士
平成31年の台風2号(2月25日15時00分)

猛烈な台風

 韓国提案のウーティップ(蝶の意味)と名付けられた台風2号は、2月25日15時に中心気圧915ヘクトパスカル、最大風速55メートル、最大瞬間風速75メートルの猛烈な台風となりました。

 そして、台風2号の中心付近には、小さな円形の眼がはっきり見えるようになりました(タイトル画像参照)。

 眼が小さければ小さいほど、円形に近ければ近いほど発達した台風ですので、このようにクリッとしている小さな眼の台風は、最大級に発達している台風です。

 北半球が一番寒くなる2月は、台風の発生が一番少ない月ですが、猛烈な台風にまで発達したのは初めてのことです。

 台風が発達するかどうかの目安は、海面水温27度です。

 一般的に海面水温が27度以上であれば台風が発達、27度以下であれば台風が衰弱と言われていますが、台風2号は、今後、フィリピンの東海上を西進する予報です(図1)。

図1 台風2号の進路と海面水温(2月25日21時)
図1 台風2号の進路と海面水温(2月25日21時)

 海面水温だけから見ると、海面水温が27度前後の海域を進みますので、急速には衰弱しないと考えられます。

 もし、台風2号が北上するなら、海面水温がどんどん低くなる海域に入ってきますので、急速に衰弱したと思われます。

この海域で西進するのは4月

 今年、平成31年(2019年)の1月1日15時、南シナ海西部で台風1号が発生しました。

 気象庁が台風の統計をとり始めた昭和26年(1951年)以降で、最も早く発生した台風です。

 しかし、台風は暖かいと多く発生するということから、その年の台風シーズンは、北半球の気温が1番低くなって、これから暖かくなる2月下旬から始まるといってよく、台風1号は前年のシーズンの名残です。

 しかし、台風2号の発生は、平成31年(2019年)の台風シーズンが、早くも始まったということができます。

 図2は資料が少し古くなりますが、以前に筆者が調査した2月と3月の平均進路です。

図2 台風の2月の平均進路(左)と3月の平均進路(右)
図2 台風の2月の平均進路(左)と3月の平均進路(右)

 2月と3月の台風は、北緯10度以下の低緯度で発生することもあって、低緯度を西進することが多く、マリアナ諸島付近やフィリピンの東海上を北上することがあっても、そこから西進することはありませんでした。

 しかし、4月になると、フィリピンの東海上を西進する台風がでてきます(図3)。

図3 台風の4月の平均進路
図3 台風の4月の平均進路

 真冬は偏東風が赤道付近に南下していたのが、4月ごろになると北上してくるからです。 

 台風2号は、これから西進するということは、台風2号の上空を吹いている風が偏東風ということを意味しています。つまり、フィリピンの東海上の上空では、すでに4月ごろの風が吹いているということもできます。

 台風2号は4月の台風と考えておいたほうが良いかもしれません。

 4月の台風なら、台風の統計をとりはじめた昭和26年(1951年)以降の68年間に、沖縄から300キロ以内に接近した台風が4個、小笠原諸島から300キロ以内に接近した台風が5個、沖縄と小笠原諸島の両方に接近した台風が1個あります。

 つまり4月の台風なら、10年に1回は日本に影響します。

 そして、昭和31年(1956年)の台風3号は唯一の上陸台風で、九州南部に上陸しています(図4)。

図4 唯一の4月上陸台風となった昭和31年(1956年)の台風3号の経路
図4 唯一の4月上陸台風となった昭和31年(1956年)の台風3号の経路

 これから長い台風シーズンが始まります。台風に対して油断することはできません。

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図3の出典:饒村曜・宮澤清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計ー月別発生数・存在分布・平均経路ー、研究時報、気象庁。

図4の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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