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年末寒波が南下、年明けに弱まっても帰省帰りに再び寒波

饒村曜気象予報士
雪下ろし作業(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

低気圧の最低気圧

 カムチャッカ半島の南にある低気圧の気圧が938ヘクトパスカルまで発達する見込みです。

 低気圧は、台風のように、中心付近だけが気圧が特に低いというものではなく、中心付近の観測が常に行われているわけではありません。このため、天気図を解析して低気圧の中心気圧を求めていることから、熱帯低気圧のように最低気圧のランキングは作られていません。

 しかし、一番低いというものはあります。

 それは、平成5年(1993年)1月10日に、イギリスとアイスランド間の低気圧で、912ヘクトパスカルと解析されました。

 台風では、昭和54年(1979年)の台風20号で記録した870ヘクトパスカルなど、900ヘクトパスカルを下回るものがありますが、低気圧では910ヘクトパスカルを下回るものはなさそうです。

 日本に影響を与える北太平洋で、930ヘクトパスカル位まで低気圧が発達するのは、平成23年(2011年)1月17日の932ヘクトパスカルをはじめ、ほぼ30年に1回位です(表)。

表 低気圧による最低気圧の記録(解析値)と台風による最低気圧の記録(観測値)
表 低気圧による最低気圧の記録(解析値)と台風による最低気圧の記録(観測値)

 今が、その30年に1回かもしれません。

強い冬型の気圧配置

 大陸には中心気圧が1060ヘクトパスカルという優勢な高気圧があり、カムチャッカ半島南部にある低気圧によって、日本付近は西高東低の冬型の気圧配置となっています。

 大陸の高気圧とカムチャッカ半島南部の低気圧の気圧差は、120ヘクトパスカル以上にもなり、日本付近の等圧線の間隔が非常に狭くなっています(図1)。

 等圧線の間隔が狭ければ狭いほど強い風が吹きます。

 このため、全国的に強い風が吹き、北日本や北陸地方では暴風雪が吹き荒れています。

図1 予想天気図(12月29日9時の予想)
図1 予想天気図(12月29日9時の予想)

日本上空の寒気

 年末寒波は、上空約5500メートルで氷点下42度以下で、12月としては、非常に強い寒気です。それが北海道に入ってきています(図2)。

図2 上空約5500メートルの気温(12月29日朝)
図2 上空約5500メートルの気温(12月29日朝)

 上空約5500メートルの気温が氷点下36度というのが大雪の目安になっています。

 この氷点下36度は、12月27日には北海道中部でしたが、29日には東北地方まで南下してきました。

 そして、年始にかけて東北地方に停滞します(図3)。

図3 上空約5500メートルの気温(1月1日夜)
図3 上空約5500メートルの気温(1月1日夜)

 これだけ強い寒気が南下すると、氷点下30度線、氷点下24度線も大きく南下することが多いのですが、こちらはあまり南下せず、北陸地方で温度差が大きくなっています。

 年末寒波は、北日本・北陸が中心です。

 そして、1月3日には、氷点下36度は千島まで北上します(図4)。

図4 上空約5500メートルの気温(1月3日夜)
図4 上空約5500メートルの気温(1月3日夜)

 しかし、1月5日(金)には再び南下してきますので、帰省帰りの交通機関が心配です。

図5 上空約5500メートルの気温(1月5日朝)
図5 上空約5500メートルの気温(1月5日朝)

東京の年末年始の気温

 東京の12月からの気温の推移は図5のようになります。

図6 東京の12月の気温(12月28日以降は予報)
図6 東京の12月の気温(12月28日以降は予報)

 年末寒波の影響で12月28日以降、平年より気温が低くなりましたが、年始に向けては最低気温はほぼ平年並み、最高気温は平年より若干低くなります。

 ただ、気温の予報範囲は大きく、ちょっとしたことで違った印象の正月になると思います。

タイトル画像、図2、図3、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図6の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

表1の出典:饒村曜(平成23年(2011年))、低気圧の最低気圧、近代消防、近代消防社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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