Yahoo!ニュース

上空に氷点下45度以下の強烈な寒気 年末の帰省は厳重警戒

饒村曜気象予報士
空港(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

クリスマス寒波

 移動性高気圧が通過し、南から暖気が入ったことから、全国的に気温が高い日が続いていましたが、大陸から高気圧が日本付近に張り出してきました(図1)。

図1 予想天気図(12月23日9時の予想)
図1 予想天気図(12月23日9時の予想)

 このため、日本付近はクリスマスの頃から西高東低の冬型の気圧配置が強まり、寒気が南下してきます。

 クリスマス寒波です。

 ただ、このクリスマス寒波は、当初の予想より大規模なものではなく、強い寒気の南下は北日本までになりそうです。

 東京では、誤差幅を考えた場合の最高気温の最大値はクリスマス寒波が来て平年より低くなりますが、誤差幅を考えた場合の最低気温の最小値はクリスマス寒波がきても平年並です(図2)。

図2 平成30年(2018年)12月の東京の気温(22日以降は週間天気予報による)
図2 平成30年(2018年)12月の東京の気温(22日以降は週間天気予報による)

 つまり、クリスマス寒波がきても、東京では極端な寒さにはなりません。

 ただ、その後にやってくる年末寒波は違います。

年末寒波

 日本付近にクリスマス寒波が南下している頃、バイカル湖付近には非常に強い寒気があります。そして、この強い寒気が東進して、年末に日本を襲います。

 北海道の上空約5500メートルでは、12月28日夜に氷点下45度以下の予想と、大雪の目安となっている氷点下36度より、はるかに低い気温です(図3)。

図3 年末寒波(12月28日21時の上空約5500メートルの気温)
図3 年末寒波(12月28日21時の上空約5500メートルの気温)

 札幌の高層気象観測(21時)では、12月の上空約5500メートルの気温の極値は、昭和59年(1984年)12月24日の氷点下45.8度です。次いで、平成14年(2002年)12月26日の氷点下45.4度、平成21年12月18日の氷点下45.3です。

 記録を更新するかもしれない強い寒気が南下してくる予報です。

 もし最低気温の記録を更新すれば、今年、平成30年(2018年)12月4日に12月として一番高い気温である氷点下16.5度を観測していますので、同じ月に最高の極値と最低の極値を観測したことになります。

 札幌の上空約5500メートルの気温は、真冬になれば氷点下45.8度以下になることがありますが、このときは、地表面や海面が冷えています。

 地表面や海面がまだ冷えていない初冬は、同じ温度の寒気であっても、真冬のときよりも、大気の上下の温度差が大きくなります。大気は非常に不安定となり、積乱雲が発達しますので、普段でも温度以上に危険なのですが、今回は記録的な温度です。

 強い年末寒波により、日本海側の地方では大雪や暴風雪となり、交通機関が混乱する可能性が高くなっています。寒気が強いと、太平洋側の地方であっても、雪雲が脊梁山脈の隙間から入ってきますので雪となり大きな影響を与えます。

 年末年始は、帰省で多くの人が移動しますので、交通機関の乱れは大きな影響を与えますので厳重警戒です。

 最新の気象情報の入手に努め、早めに、余裕を持って行動することが大切です。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

図3の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事