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クリスマス寒波の年は猛暑の年

饒村曜気象予報士
雪のイメージ(写真:アフロ)

クリスマス寒波の予想

 平成30年(2018年)の12月は、中旬に強い寒気が南下したために、全国的に平年並みの寒さとなりました。

 その後、寒気の南下が弱まり、気温が高い状態が続いていますが、次にシベリアから強い寒気が南下してくるのがクリスマス(12月25日)の頃です(図1)。

図1 クリスマスの頃の寒気の南下
図1 クリスマスの頃の寒気の南下

 上空約5500メートルの気温は、氷点下36度で大雪の目安となっていますが、この氷点下36度線が北海道まで南下してきます。

 また、氷点下30度で平地でもまとまった雪が降るとされていますが、この北緯30度線は東北地方まで南下してきます。

 年末の頃に、西高東低の強い冬型の気圧配置となって大荒れになることを「クリスマス寒波」といいます。宗教的な意味合いは全くありません。

 広い意味で、年末寒波ということもありますが、狭い意味での年末寒波は、もうすこし暮れも押し迫ったころの寒波をさします。

最近のクリスマス寒波

 最近の新聞記事で、「クリスマス寒波」と記した記事が多いのは、昭和59年(1984年)、平成4年(1992年)、平成7年(1995年)、平成24年(2012年)です。

クリスマス寒波 東京・横浜などで初氷

 二十四日、日本列島は沿海州を中心とする零下50度の大寒気団にすっぽり覆われ、各地で今冬最低気温を記録、また日本海側では大雪に見舞われるなど、クリスマス寒波となった。

出典:朝日新聞(昭和59年12月24日夕刊)

クリスマス寒波 新潟などに大雪警報

 冬型の気圧配置が続く日本列島は二十四日、北海道、東北地方の日本海側や北陸、山陰地方などを中心に雪が降り、大雪警報や注意報が出された。

 気象庁によると、二十四日夕までに、北海道・朱鞠内、新潟・津南、宮城・栗駒、福島・只見などで積雪量が一メートルを超え、新潟、福島県の一部で一時間に五センチ以上の雪が積もった。

出典:読売新聞(平成4年12月25日朝刊)

西日本にクリスマス寒波 雪で名神・北陸道は通行止め

 西日本は二十四日夜から今冬一番の強い冬型の気圧配置に変わり、日本海側を中心に雪となった。二十五日は近畿地方北部や山陰、北陸地方で大雪の恐れがあり、近畿中部でも積雪が予想されるなど〈クリスマス寒波〉に見舞われそうだ。

…阪神大震災の被災地での二次災害の恐れもあり、同気象台は、「強風・高波と大雪に関する情報」を出して警戒を呼びかけた。

出典:読売新聞(平成7年12月25日朝刊)

寒波 冷え込み28日まで=北海道

◆和寒-29.0度/江別-22.9度/札幌-11.3度

 「クリスマス寒波」と呼ばれる強い寒気がシベリアから流れ込んだ影響で、道内は24日、各地で厳しい冷え込みとなった。札幌管区気象台によると、和寒町では同日午後10時5分、富士山頂を除く国内の観測地点で、今冬最も低い氷点下29.0度を記録した。また、道内の173観測地点のうち、江別市(氷点下22.9度)など28地点で12月の観測史上最低気温を、札幌市(同11.3度)など138地点で今季最低気温を更新した。

出典:読売新聞(平成24年12月25日朝刊)

図2 地上天気図(平成24年12月24日9時)
図2 地上天気図(平成24年12月24日9時)

 昭和59年(1984年)、平成4年(1992年)、平成7年(1995年)、平成24年(2012年)と今年、平成30年(2018年)とには共通点があります。

表 クリスマス寒波があった年の夏と冬
表 クリスマス寒波があった年の夏と冬

 それは、いずれの年も、夏が記録的に暑かったということです(表)。

 夏の暑さとクリスマス寒波とには関係があるのか、あるいは、単なる偶然で関係がないのかはわかりませんが、バランスをとろうとする自然の仕組みの奥深さを感じます。

 ただ、クリスマス寒波に続く冬は、寒い冬であったり、暖かい冬であったりと、関連性はなさそうです。

 平成30年(2018年)のクリスマスの頃の寒気南下の予想は、コンピュータに入力するデータが少し違っただけで、結果が大きく異なる性質があり、予想が難しいタイプです。

 図1より寒気が大きく南下することも、南下しないこともありますので、最新の気象情報での確認が必要です。

図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁ホームページ。

表の出典:気象庁資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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