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サイパン島を襲った台風26号が太平洋高気圧を強化

饒村曜気象予報士
サイパンを直撃した直後の台風26号の眼(10月25日8時)

猛烈な台風26号

 猛烈な台風26号が、マリアナ諸島のサイパン島を直撃し、905ヘクトパスカルを観測しています。

 風速計が風で壊れたため、正確な最大風速や最大瞬間風速はわかりませんが、丈夫な風速計を壊すほどの猛烈な風によって大きな被害がでています。

 台風26号は、海面水温が29度以上の非常に暖かい海域を西進したため、最盛期でサイパン島直撃ですが、これから海面水温が27度から29度の海面水温の海域を西進します(図1)。

図1 台風の進路と海面水温
図1 台風の進路と海面水温

 このため、サイパン島直撃時に気象衛星から見えていた、小さくて丸い台風の眼が見えなくなり、少し衰弱しています。

 とはいえ、まだまだ海面水温の高い海域で、非常に強い勢力で太平洋高気圧の南側の東風に乗って西進中です。

台風は太平洋高気圧を強化

 発達した台風の中心付近では、強い上昇気流によって多量の空気が上層に運ばれ、台風の周囲で下降しています。そして、この下降気流が台風の北にある太平洋高気圧を強めています。

 このため、太平洋高気圧が日本付近に張り出して晴天をもたらすとともに、台風の北上を妨げる蓋の役割をします(図2)。

図2 太平洋高気圧の蓋
図2 太平洋高気圧の蓋

 サイパン島を直撃する頃は、北西から西北西進と、少しは北上成分があったのですが、現在は、太平洋高気圧の強まりもあって、しばらくは西進を続ける見こみです。

ルソン島に接近する頃は

 台風26号がフィリピンのルソン島に近づくと、西進する台風としては、珍しく大きな予報円となります。

 これは、この頃になると太平洋高気圧が弱まり、日本をガードしなくなるからです(図3)。

図3 日本をガードしなくなった太平洋高気圧
図3 日本をガードしなくなった太平洋高気圧

 季節が進んでいますので、台風がすぐ北上というわけではありませんが、台風を動かしていた東風が弱まり、台風の動きが読みづらくなり、その結果として予報円が大きくなったのです。

 ルソン島の東海上ということは、少し北上すれば沖縄県の先島諸島です。

 沖縄県では、台風26号が北上しなくても、台風からのうねりが入ってきますので、台風の動向に注意が必要です。

タイトル画像、図1、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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