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強い寒気南下でも今年は霜注意報がでない東京・大阪等

饒村曜気象予報士
Frost on a leaf(写真:アフロ)

 強い寒気の流入が続いている北海道では各地で霜注意報が発表となっています(図1)。

図1 霜注意報の発表状況(10月17日3時24分現在)
図1 霜注意報の発表状況(10月17日3時24分現在)

 この霜注意報は、霜がおりるときにいつも発表するのではありません。また、必ず夕方までに発表となり、翌朝解除となります。大雨注意報など、ほかの注意報とは全く違った性質の注意報です。

真冬に発表しない霜注意報

 霜は、氷点下(0度以下)の物体の表面に、大気中の水蒸気が昇華し、氷の結晶となって堆積したものです。気温は地表から約1.5メートルの高さで測定しますので、放射冷却等で冷える場合は、気温が3~4度以下であれば、地表面付近では氷点下となって霜がおります。

 植物が活動中に霜がつくと、霜が植物を直接冷やして中の水分が凍って養分が行き渡らなくなるなどで枯れるなどの被害がでますが、冬に入って活動を停止した植物は、寒さに対する備えができていますので、霜による被害は、植物が生育を始めたあとの霜(遅霜)か、植物が活動を中止する前の霜(早霜)のときにおきます。沖縄を除き、冬の最中は、いくら霜がおりても被害は発生しません。

 このため、霜注意報は季節限定の注意報です(表)。

表 霜注意報の基準(気象庁ホームページをもとに作成)
表 霜注意報の基準(気象庁ホームページをもとに作成)

 なお、沖縄県の霜注意報基準は、南大東島地方で最低気温が3度以下、そのほかの地方は最低気温が5度以下となっています。

 遅霜なのか、早霜なのかはっきりしませんが、この気温まで下がるのは真冬です。

早霜の時にも霜注意報を発表しない地方

 気象庁のホームページでは、霜注意報について次のような記述があります。

 霜注意報は、霜により災害が発生するおそれがあるときに発表します。具体的には春、秋に気温が下がって霜が発生することによる農作物や果実の被害が発生するおそれがあるときに発表します。

 しかし、秋の早霜は発表しない地方が少なくありません(図2)。

図2 秋に霜注意報を発表しない地域
図2 秋に霜注意報を発表しない地域

 東京都や大阪府といった大都市だけでなく、西日本に多く見られます。

 これらの地方では、霜がおりそうな気温になる前に、収穫等が済み、早霜による被害がない地方です。

北海道胆振地方・厚真町の場合

 北海道胆振東部地震の被災地である厚真町の今年(平成30年)の霜注意報は、晩霜に対しては、6月9日15時26分発表(解除は10日4時5分)が最後です。

 そして、早霜に対しては、10月3日13時48分(解除は4日4時3分)と10月4日14時12分(解除は5日4時36分)に発表となっています。

 そして、しばらく間を置いて、10月16日15時13分(解除は17日4時35分)に発表となっていますが、週間天気予報を見ると、最低気温が3度以下の日が続きますので、しばらくは、夕方までに霜注意報が発表され、早朝解除の日が続きます(図3)。

図3 各地の天気と最低気温の予想
図3 各地の天気と最低気温の予想

 そして、冬の間は霜注意報が発表されなくなり、厳しい冬にはいってゆきます。

 霜注意報が再開されるのは、春になって植物が生育する頃からです。逆説的になりますが、霜注意報の発表が再開されるということは、春の訪れがきたときです。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

表の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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