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台風25号が北上 珍しい10月に日本海へ入る台風

饒村曜気象予報士
台風25号の雲(10月3日16時)

台風25号が日本海へ

 台風25号が南西諸島を通過し、東シナ海を北上して日本海に入る見込みです(図1)。

図1 台風25号の進路予報と海面水温(10月4日3時)
図1 台風25号の進路予報と海面水温(10月4日3時)

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 沖縄の南海上や本州の南海上では、不自然な形で海面水温が27度以下の海域がありますが、ここは、先の台風24号が通ったところです。台風24号が海面をかき回し、下層にある冷たい海水を表層まで運んだために、台風24号の経路に沿って海面温度が低くなった名残です。

 台風25号は、台風24号とほぼ同じコースを通って沖縄地方に接近しましが、これは、海面水温がやや低い海域を通っての接近ということになります。

 このため、一時、猛烈な台風にまで発達した台風25号でしたが、現在は、強い台風に衰えています。それでも、かなり発達している台風にかわりはありません。

日本海に入った10月の台風

 10月に台風が日本海に入ることはほとんどありません。季節が進むにつれ、台風は高緯度まで北上しなくなり、10月の台風の多くは日本の南海上を北東進します。

 台風の上陸数の平年値は、8月が一番多くて0.9個、ついで9月の0.8個、7月の0.5個で、10月の上陸台風は0.2個しかありません。台風の接近数の平年値も同じ傾向です(表)。

表 台風の月別の発生数、接近数と上陸数
表 台風の月別の発生数、接近数と上陸数

 台風の発生数は、7月とほぼ同じ数だけ台風が発生する10月ですが、日本付近まで北上することは少ないため、上陸数・接近数でいうと、7~9月のいわゆる台風シーズンに比べれば数が少なくなります。

 まして、日本海に入る緯度まで北上するとなると、もっと数が少なくなります。日本海に入る手前の海面水温が低い海域で熱帯低気圧に衰えたり、北からの寒気を取り込んで温帯低気圧に変わるケースがほとんどです。

日本海に入った10月の台風の例

 日本海に入った10月の台風の例として、平成6年(1994年)の台風29号があげられます。

 平成6年(1994年)の台風29号は、10月3日に発生したあと、西北西に進みながら発達し、8日には沖縄県の先島諸島の南海上で中心気圧が900ヘクトパスカルの猛烈な台風にまで発達しています(図2)。

図2 平成6年(1994年)の台風29号の経路
図2 平成6年(1994年)の台風29号の経路

 東シナ海の海面水温が低い海域を北上するうちに衰弱し、朝鮮半島に達する頃には中心気圧が970ヘクトパスカル位まで衰えています。

 そして、日本海に入ってすぐの12日3時に温帯低気圧に変わっています。

 最近では、平成28年(2016年)の台風18号があります。この台風も、沖縄本島の南海上で905ヘクトパスカルまで発達したものの、朝鮮半島に達する頃には中心気圧が970ヘクトパスカル位まで衰え、日本海中部に達した5日21時に温帯低気圧に変わっています(図3)。

図3 平成28年(2016年)の台風18号の経路
図3 平成28年(2016年)の台風18号の経路

 このように、かなり発達している台風でも、10月に強い勢力を維持したまま日本海に入ることは難しいのです。

危険な10月の台風

 台風25号の予報のように、10月に発達した台風が日本海を通過するケースは、非常に希ということができます。

 これは、日本周辺の海面水温が、例年に比べて高いためです。

 さすがに10月になって海面水温が下がりはじめ、台風を発達させるほどの温度ではなくなっても、台風の衰弱を遅らせる程度の温度があるからです。

 10月に日本列島に接近・上陸する台風は、7~9月のいわゆる台風シーズンからみると少ないのですが、大きな台風災害が発生した月というと、10月は9月についで多い月です

 これは、台風が急速に発達しやすい月であることに加えて、日本付近に達する頃には猛烈な速度となることが多いためです。北緯35度付近では、10月になると台風の平均時速は約50キロです。台風があっという間に、近づくので油断できません。

 さらに、秋雨前線で降雨が続いているところへの台風接近ということが多いため、大雨による土砂災害が多発する傾向があります。

 台風25号は、シーズン外れの台風という感覚ではなく、夏の台風以上に危険な台風という認識で台風情報を入手してください。

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図3の出典:国立情報学研究所のホームページ(デジタル台風)。

表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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