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台風24号の加速予報は11月なみ

饒村曜気象予報士
平成30年台風24号の雲画像(9月29日12時)

全国に影響する台風24号

 沖縄近海に大型で非常に強い台風24号があって、自転車なみのゆっくりとした速度で北上中です。台風を動かす上空の風が弱く、地球自転の影響を受けて自力でゆっくり北上していますが、上空に強い西風が吹いている緯度まで北上すると加速です。

図1 台風の進路予報(9月29日10時の予報)
図1 台風の進路予報(9月29日10時の予報)

 台風の予報は、最新のものをお使いください

 台風が加速するタイミングの予報は、難しい予報のひとつですが、加速した先には、西日本のみならず、東日本、北日本が入ります。つまり、現在、台風24号によって大荒れとなっている沖縄地方だけでなく、日本全国が影響を受ける台風です。

 気象庁の発表した台風予報では、加速タイミングの難しさを反映して大きな予報円となっていましたが、上空に強い西風が吹いている緯度に近づいてきたため、徐々に予報円が小さくなっています。

類似台風は平成16年(2004年)台風23号

 平成16年の台風の発生数は29個と、ほぼ平年なみでしたが、平年より北東に偏った太平洋高気圧の周りを北上することが多く、年間上陸数は10個と、これまでの記録6個を大幅に更新しました。

 日本周辺は海面水温が高く、衰えないまま襲来した台風が多く、日本各地で次々に大きな被害をもたらしました。

 なかでも、宮古島の南東で超大型で強い台風となった台風23号は、秋雨前線を刺激しながら大型で強い勢力で北上し、10月20日12時には高知県土佐清水市に上陸しました(図2)。

図2 平成16年(2004年)10月20日9時の地上天気図
図2 平成16年(2004年)10月20日9時の地上天気図

 上陸時の中心気圧は955ヘクトパスカル、最大風速は40メートルでした。

 季節的には遅い上陸台風でしたが、九州から関東にかけてこれまでの日降水量の記録を上回る大雨となりましたが、短時間に非常に激しい雨が降ったのではなく、台風の移動速度が遅かったために長時間の雨となりました。

 兵庫県豊岡市の円山川の堤防決壊により、豊岡市はほぼ市街地の全域が浸水しましたので、兵庫県では豊岡豪雨災害ということもあります。また、京都府舞鶴市の由良川の堤防決壊では、土地不案内の他府県ナンバーの観光バスやトラックが被災しました。特に、国道175号線を通行中に氾濫に巻き込まれた観光バスの屋根から37人がヘリコプターや救命ボートで救助されたのが印象的な災害でした。

 台風本体による強風・高波、および台風の北側にあった秋雨前線による大雨などが原因で、死者・行方不明者99名がでました。

 台風23号の場合、台風の進行方向の右側より左側で強い風が吹いています。一般的な台風の風とは違う吹き方で、日本海側の地方を中心に、台風の吹き返しの風で大きは被害が発生しました。

季節が進むにつれ高緯度では加速

 台風の進行速度は、台風が高緯度地方に進むにつれ速くなります。

 これは、台風が北上すると、上空に強い西風が吹いている領域に入るためです。

 上空の強い西風は、季節が進むにつれて南に下がってきますので、台風が加速する緯度も、季節が進むにつれて低くなります。

 以前、著者が行った調査によると、上空に強い風が吹いていないために北より(北北西から北北東)に進む台風は、季節が進むにつれて速くなりますが、季節による差は小さく、ほぼ時速20キロが平均です。

 これに対して、東より(北東から東)に進む台風は、台風が高緯度になればなるほど、季節が進めば進むほど、速くなります。

 種子島付近の緯度である北緯30度では、9月なら時速25キロ、10月なら40キロ、11月なら50キロが平均となります。これに対し、関東北部付近の緯度である北緯35度では、9月なら時速35キロ、10月なら50キロ、11月なら70キロが平均となります(図3)。

図3 台風進行速度の緯度別変化と台風24号の加速(図中の黒丸)
図3 台風進行速度の緯度別変化と台風24号の加速(図中の黒丸)

 台風24号の進路予報の速度をみると、北上するにつれての速度の上がりかたが急です。10月の台風のような加速です。

 例年の台風よりも加速が大きいので、あっという間に近づくことを意識し、警戒してください。

 これを見ると、暑い暑いと言っていた平成30年の夏も終わり、日本上空には11月並の寒気が忍び寄っているのかもしれません。

 台風24号に対して、全国で厳重な警戒が必要です。

タイトル画像、図1、図3の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:「饒村曜(1980)、台風に関する諸統計(進行速度)、研究時報、気象庁」をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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