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台風20号は3時間でトラック諸島から南鳥島へ、3時間で南鳥島からマリアナ諸島へ

饒村曜気象予報士
台風19号の雲(中央)と台風20号の雲(右下)(8月19日19時50分)

台風20号の位置

 今週は、週のはじめに北西進を続けている台風19号が、九州南部から沖縄地方にかなり接近しそうです。

 その後、台風19号のあとを追うように北上している台風20号が、週の終わり頃に日本列島にかなり接近しそうです。

 この台風20号ですが、気象庁が8月19日に発表した位置では、9時にトラック諸島近海となっています。それが3時間後の12時には南鳥島近海となっています(図1)。

図1 台風20号の位置(8月19日9時から20日0時)
図1 台風20号の位置(8月19日9時から20日0時)

 トラック諸島の位置と南鳥島(北緯24度17分、東経153度53分)とでは、1500キロくらい離れていますので、単純に言えば、時速500キロで北上したことになります。しかし、実際は北西へ時速20キロで進んでいました。

 同様に、21時には南鳥島にあった台風20号が、3時間後の20日0時ではマリアナ諸島となっています。単純に言えば、時速300キロで南下したことになりますが、実際は西北西へ時速25キロで進んでいました。

 台風20号の進路予報は、大きくぶれることなく、台風19号のあとを追うかのように、北西から西北西に進んでいます(図2)。

図2 台風20号の進路予報(左から8月19日9時、12時、20日0時)
図2 台風20号の進路予報(左から8月19日9時、12時、20日0時)

 これは、気象庁が決めた海域の名称と、その範囲の定義によって発生した現象です。

気象庁が気象情報に用いる海域名

 気象庁では、台風情報など各種気象情報に用いる用語には定義を決めて使用しています。

 海域についても同じで、名称と範囲が定められています(図3)。

図3 気象庁が用いている海域の名称
図3 気象庁が用いている海域の名称

 台風20号は、トラック諸島近海と決めた海域の北部で発生したあと、北西進するうちに、19日12時から21時までの間、南鳥島近海と決めた海域の南東端を通過しため、このような現象が起きました。

 台風の位置は経度、緯度で表現され、これに、わかりやすさのために海域の名称を付加しているのですが、希には、今回のように、かえって紛らわしいこともあります。

週の前半は台風19号、後半は台風20号

 台風の進路予報によって天気予報が大きく変わります。

 しかも、今週は、台風19号と台風20号の2つも台風があるため、天気予報が非常に難しい一週間です(図4)。

 常に最新の台風情報の入手に努め、警戒をお願いいたします。

図4 台風19号と台風20号の進路予報
図4 台風19号と台風20号の進路予報

 台風の予報は最新のものをお使いください

タイトル画像、図1、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図3、図4の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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