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暑さに弱っているときの猛烈残暑

饒村曜気象予報士
炎の文字(ペイレスイメージズ/アフロ)

残暑

 立秋(今年は8月7日)後の暑さを残暑と言います。

 日毎の平均気温を見ると、一年で一番暑いのは立秋の頃ですので、最高気温が30度以上の真夏日の約半分は立秋後です(表)。残暑のほうが暑くなることは珍しいことではありません。

表 平年の真夏日(1981年から2010年までの平均)
表 平年の真夏日(1981年から2010年までの平均)

 暑中見舞いを出すのは立秋までで、立秋以降に出すのは残暑見舞いです。

 暑中見舞いは、「これから暑い日が続きますので」という将来の暑さについて、残暑見舞いは「暑い日が続いていますが、暑い日はしばらく続きますので」という現在の暑さについての相手への気遣いです。

9月の残暑は猛烈残暑

 最高気温が30度以上の真夏日は、東京では約50日、大阪では約70日もありますが、近年は都市化の影響などで増加傾向にあります。そして、北海道以外では9月でも真夏日があり、九州南部や沖縄では10月も真夏日があります。

 立秋は暦の上での秋ですが、実際に秋が進むとともに日差しは弱まり、太平洋高気圧が勢力を弱める一方で、オホーツク海高気圧が勢力を強めてきます。朝晩には涼しくなって秋を感じる日や、一時的に太平洋高気圧の勢力が増して残暑を厳しく感じることもあります。

 しかし、夏の暑さで体力が弱まっている人は、気温は真夏より低くても、体感では厳しい暑さと感じます。

 このため、9月の残暑を「猛烈残暑」と呼ぶことがあります。

 しかし、今年、平成30年(2018年)は全国的に梅雨明けが早く、しかも、7月23日に埼玉県熊谷で41.1度という、観測史上第一位の高温を記録するなど、立秋前に殺人的な高温となっています。

 その時に比べれば、気温が低くなっているとはいえ、長期間の暑さで体力が弱まっているときの暑さです。

 立秋早々ですが、猛烈残暑と呼んで良いと思います。

台風を寄せつけない太平洋高気圧

 地上天気図ではそれほど強くは見えないのですが、西日本上空を覆っている太平洋高気圧の勢力は強まり、台風を寄せつけません。

 宮古島付近を通って東シナ海に入った台風14号は、当初は東シナ海を北上して日本海に入り北日本に向かうと考えられていましたが、太平洋高気圧の強まりと北西に進んで中国大陸に向かうという予報に変わっています。また、小笠原諸島近海で発生した台風15号も北上して本州に接近することなく、日本の南海上で熱帯低気圧に変わる可能性があります(図1)。

図1 地上天気図(8月12日6時)
図1 地上天気図(8月12日6時)

 太平洋高気圧が強いため、西日本を中心に強い日射によって、今日、12日も九州を中心に気温が上がり、13地点が最高気温35度以上の猛暑日、東北から東日本、西日本130地点で最高気温が30度以上の真夏日という、各地で暑い予想となっています。

 この猛烈残暑は、西日本を中心に15日くらいまでは続きますので、十分な睡眠や、こまめな水分補給につとめ、夏バテせずに、秋を待ちたいと思います(図2)。

図2 週間天気予報(天気と最高気温)
図2 週間天気予報(天気と最高気温)

表の出典:饒村曜(2014年)、天気と気象100、オーム社。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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