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台風13号は8月の台風によくある「東北地方付近まで自転車並みの速度で北上」

饒村曜気象予報士
迫る雨雲(8月7日18時の衛星画像)

自転車並みの速度で北上

 台風13号が自転車並みの速度で北上し、東日本沿岸か東北地方沿岸にかなり接近し、台風が西寄りの進路を進んだ場合には上陸する可能性もあります。

 台風13号は、日本上空を流れている強い西風(ジェット気流)が北海道付近にあるため、なかなか加速せず、自転車並みの速度で北上します(図1)。

図1 台風13号の進路予報(8月8日6時の予報)
図1 台風13号の進路予報(8月8日6時の予報)

台風13号の進路予報は最新のものを利用してください

 台風13号が加速するのは、台風が東北地方付近に達した8月10日(木)以降です。

 このことは、台風13号の影響が長く続くことを意味します。暴風や強雨の期間が長くなりますので、台風情報に注意し、十分な警戒が必要です。

夏はいつも台風の速度が遅い

 月別に台風がどのような経路をとりやすいか、ということは昔から重要なテーマとして研究され、その結果として台風の主要経路の図が作られています(図2)。

図2 台風の月別主要経路の図
図2 台風の月別主要経路の図

 台風が北上してくるのが7月から(一部は6月から)10月までであることや、北上する台風は、秋が深まるにつれて、偏西風に乗って東へ向きを変える位置(転向点)がより低緯度に変わってくる、などを簡潔に示している優れた図です。

 このため、この図が広く浸透して、多くの人の台風進路のイメージを作っています。

 しかし、それぞれ独自の顔を持つと言われるほど多様な台風をまとめ、1ヶ月分を1本の線で表しているために実用的には不十分です。

 特に、日本上空の偏西風が弱い8月の台風は、動きが遅く、複雑な動きをしますので、1本の線では表せません。図2の表現では無理があります。

 図3は、以前に著者が台風に関する資料が整備されている昭和26年(1951年)から27年間の資料を用いて作成した8月の平均経路図です。台風の月別存在頻度分布から、台風の存在しやすい海域を求め、これと別に、月別に求めた海域別の進行しやすい方向を組み合わせて作りました。

図3 台風の存在分布と進行方向と進行速度を加味した8月の台風の経路
図3 台風の存在分布と進行方向と進行速度を加味した8月の台風の経路

 図3には、平均的に12時間で進む距離を小さな横棒で示してありますが、これが速度を表しています。また、沖縄付近でループを描いているのは、ここで必ずループをするという意味ではなく、この付近で台風が停滞したり、迷走しやすいことを示しています。

 図3によると、8月には日本の南海上の北緯20℃付近で台風の発生が多く、台風13号の予報のように、自転車並みの速度で東北地方付近まで北上するか、本州の南海上を自転車よりは少し速い速度で西日本の南海上を西進します。

お盆期間の台風

 沖縄本島の南東海上(四国の南海上)には熱帯低気圧の雲の塊があります(図4)。

図4 気象衛星の雲画像(8月8日8時)
図4 気象衛星の雲画像(8月8日8時)

 熱帯低気圧は発達しながら台風14号になるとの予報がでています。台風がまだ発生していない段階ですので、進路予報は難しいのですが、台風が発生した場合は、お盆期間に南西諸島に近づく可能性もあります。

 現在北上している台風13号だけでなく、日本の南海上に存在する熱帯低気圧にも注意が必要です。

8月8日17時追記および図5の追加:沖縄本島の南東海上(四国の南海上)にあった熱帯低気圧は、8月8日12時に台風14号になりました。

図5 台風14号の進路予報(8月8日15時の予報)
図5 台風14号の進路予報(8月8日15時の予報)

台風14号の進路予報は最新のものを利用してください

タイトル画像、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図5の出典:気象庁ホームページ。

図2、図3の出典:饒村曜(昭和61年(1986年))、台風物語、日本気象協会。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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