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猛暑原因の太平洋高気圧の動向の鍵、南海上の水蒸気の塊

饒村曜気象予報士
気象衛星画像と地上天気図(7月23日6時)

記録的な厳しい暑さ

 東日本から西日本では記録的な暑さが続いています。

 これは優勢な太平洋高気圧が日本列島を覆い、さらにその上を上空にあるチベット高気圧が覆っているためで、いわば、布団の二枚重ね状態だからです。

 このような状態となると、日本付近は「鯨の尾型」という天気図になります。太平洋高気圧を鯨に例えると、その尾っぽが西日本から東シナ海にでき

図1 鯨の尾型の天気図(平成25年8月12日9時)
図1 鯨の尾型の天気図(平成25年8月12日9時)

ます(図1、タイトル画像)。

 7月22日の日曜日は、岐阜県の郡上市八幡で最高気温39.8度、名古屋市で39.5度と40度に迫る気温となり、全国の猛暑日(最高気温が35度以上)は今年、平成30年最多の237地点となりました。気温を観測しているのが927地点ですので、全国の26%が殺人的な暑さになりました。また、最高気温が30度以上の真夏日は72%(667地点)にもなっています。

週末の太平洋高気圧

 週明けの7月23日(月)も、関東から西では記録的な暑さとなる見込みで、熱中症には最大限の警戒が必要です。

 週間天気予報をみると、南から暖かくて湿っている空気が流入して局地的な雷雨のおそれがあっても、全国的には厳しい暑さはしばらく続く見込みです(図2)。

図2 週間天気予報
図2 週間天気予報

 ただ、日本列島上空の太平洋高気圧には変化が出始めています。

 日本列島上空の優勢な太平洋高気圧は、次第に2つに割れ、西日本を中心としたものが次第に中国大陸に移動して小さくなります(図3、図4、図5)。

図3 日本上空の太平洋高気圧(7月19日朝)
図3 日本上空の太平洋高気圧(7月19日朝)
図4 日本上空の太平洋高気圧(7月23日朝)
図4 日本上空の太平洋高気圧(7月23日朝)
図5 日本上空の太平洋高気圧(7月29日朝)
図5 日本上空の太平洋高気圧(7月29日朝)

 これに呼応して、太平洋高気圧の上に張り出していたチベット高気圧も中国大陸に後退します。

 鯨が日本近海から去り、記録的な厳しい暑さから、例年の夏の暑さにもどるかもしれません。その鍵を握っているのが、日本の南海上にある積乱雲の塊(水蒸気の塊)です。

日本の南海上の水蒸気の塊

 気象衛星「ひまわり」には、上空の水蒸気が多い場所を白く撮す機能があります。

 7月23日6時の水蒸気画像によると、中国大陸に台風10号による水蒸気の塊、東シナ海西部に熱帯低気圧による水蒸気の塊があり、南鳥島付近にも熱帯低気圧による水蒸気の塊があります。それだけでなく、日本の南海上にも、いくつかの水蒸気の雲の塊があります(図6)。

図6 気象衛星「ひまわり」による水蒸気画像(7月23日6時)
図6 気象衛星「ひまわり」による水蒸気画像(7月23日6時)

 日本の南海上では、まだはっきりした渦が出現しているわけではありませんので、位置や動きなど不確かな要素が多いのですが、日本の南海上にある水蒸気の塊の中から熱帯低気圧が発生し、台風まで発達して北上してくると、少し弱まり始めた太平洋高気圧を壊す可能性があります。

 気象庁が発表した7月24日21時の予想天気図には、日本の南海上に熱帯低気圧が出現しています(図7)。 

図7 予想天気図(7月24日21時の予想)
図7 予想天気図(7月24日21時の予想)

 発達した台風は、気圧の場を大きく変えますので、厳しい暑さが和らぐかもしれませんがこんどは、暴風雨による大災害をもたらす可能性があります。

 不確かな要素が非常に多いのですが、今後の日本の南海上の積乱雲の動向に注意が必要です。

図1の出典:饒村曜(平成26年)、天気と気象100、オーム社。

タイトル画像、図2、図3、図4、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図7の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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