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今年の春分の日は、長く降り続く危険な「なごり雪」

饒村曜気象予報士
都心の積雪(ペイレスイメージズ/アフロ)

 昭和を代表するフォークソング「なごり雪(作詞・作曲:伊勢正三)」をかぐや姫、イルカなどが歌ったことによって、春に向かって最後に降る雪のイメージが広がっていますが、雪の多い地方で春になっても消えずに残っている雪という意味もあります

「なごり雪」に対応する「雪の終日」

 「なごり雪」は気象用語ではありません。対応する言葉は、春に向かって最後に降った雪のことをさす「雪の終日(しゅうじつ)」です。

 伊勢正三は、出身地の大分県の津久見駅の情景を想定して、この歌を作ったそうですが、九州北部の「雪の終日」の平年は、2月下旬から3月上旬ということになります。

 「東京を離れる君が見る季節外れの雪は、東京で君が見る最後の雪かもしれない」と、歌詞の中では東京の駅が舞台となっていますが、東京の雪の終日の平年(平成22年までの30年間の平均)は、3月11日です。

 東日本の太平洋側では、これから3月22日にかけて前線を伴った低気圧が本州の南岸を発達しながら北東に進む見込むです。関東甲信地方には寒気が流れ込むため広い範囲で雪や雨が降る見込みです。しかも、山沿いを中心に大雪の可能性もあります。

 週間天気予報によると、この低気圧通過後は気温は上昇しますので、「なごり雪」になるかもしれません(図1)。

図1 東京の3月の気温(21日以降は予報)
図1 東京の3月の気温(21日以降は予報)

長く降り続くと危険な雪

 太平洋側の地方では、雪に対しての対策があまり行われていないことから、日本海側の地方に比べて少しの雪でも交通機関が大混乱します。

 特に、長時間降り続く場合は、弱い雪でも積雪が増え、交通機関の混乱は増します。

 平成26年(2014年)2月14日から15日にかけて甲府で積雪が114センチメートルに達する大雪が降りましたが、この時も、1時間に5から10センチという降雪が長時間にわたって降り続いています。このため、119年間の記録である49センチを大幅に越えた積雪となっています(図2)。

図2 平成26年(2014年)2月14日から15日にかけての甲府の積雪と降雪
図2 平成26年(2014年)2月14日から15日にかけての甲府の積雪と降雪

 予想天気図では、前線を伴った低気圧の西側に別の低気圧が予想されていますので、今回の降雪は比較的長時間の降雪になります(図3)。

 この別の低気圧は、前線を伴った低気圧が発達したあとに閉塞してできた閉塞低気圧です。暖かくて水蒸気を豊富に含んだ空気が上空に持ち上げられ、下層に寒気が入っています。このため大雪になりやすい天気図です。平成26年(2014年)の大雪のときも、閉塞低気圧でした。

図3 予想天気図(3月22日9時の予想)
図3 予想天気図(3月22日9時の予想)

 平成26年(2014年)の甲府の積雪まではゆかないにしても、除雪するそばから積ってゆくという、危険な降り方をします。特に、甲信地方では、大雪警報級の可能性が高くなっていますので、気象情報に注意して警戒が必要です(図4)。

図4 長野県南部の警報級の可能性(3月20日17時発表)
図4 長野県南部の警報級の可能性(3月20日17時発表)

北日本と西日本も風に警戒

 図3の予想天気図でわかるとおり、低気圧から離れている北日本と西日本は等圧線が混んでいますので、広い範囲で暴風の可能性があり警戒が必要です。

 低気圧に近い東日本では、等圧線の間隔がこんでいませんので、風がそれほど強くなりませんが、山沿いを中心に大雪に警戒が必要です。

 いずれにしても、全国的に大荒れの休日になりますので、最新の気象情報の入手に努め、最初のスケジュールに固執する無理な行動を避け、無事故の休日にして欲しいと思います。

図1、図2の出典:気象庁ホームページの資料をもとに著者作成。

図3、図4の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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