Yahoo!ニュース

北海道付近で低気圧の急発達 中心付近より周辺部で暴風

饒村曜気象予報士
北海道の地図(ペイレスイメージズ/アフロ)

東海以西で春一番

 日本海を低気圧が発達しながら通過したため、ほぼ全国的に暴風となり、2月28日には東海地方と四国地方で、3月1日に近畿地方で春一番が吹きました(図1)。

図1 地上天気図(平成30年(2018年)3月1日9時)
図1 地上天気図(平成30年(2018年)3月1日9時)

 今年は、2月14日に北陸、中国、九州北部で春一番が吹いていますので、これで、九州南部を除く東海以西で春一番が吹いたことになります。

 関東地方は本州の南岸に発生した低気圧の影響で南風が弱くなり、暖気が入って気温が20度以上に上昇したものの、春一番にはなりませんでした。

3月2日12時追記:気象庁は3月2日に「関東地方は3月1日に春一番が吹いた」と遡って発表しました。

低気圧がひとつにまとまって発達

 日本海の低気圧と、本州南岸の低気圧の2つの低気圧は、北海道付近でひとつにまとまり、24時間に20ヘクトパスカル以上も中心気圧が急降下するという発達をします(図2)。

図2 予想天気図(平成30年(2018年)3月2日9時)
図2 予想天気図(平成30年(2018年)3月2日9時)

 天気図では、等圧線の間隔が狭いほど強い風が吹きますが、図1も図2も、等圧線の間隔が非常に狭く、強い風が吹いている、あるいは、今後も吹くと予想されることを示しています。

 ただ細かく見ると、等圧線の間隔は、中心付近より周辺部で狭くなっています。つまり、今回の低気圧の場合は、中心付近より周辺部で風が強くなっています。

 北日本や東日本を中心に、非常に強い風が吹き、北日本では猛ふぶきとなる所があり、暴風雪や暴風、高波、大雪に警戒が必要ですが、中心付近より周辺部で風が強くなっていることを意識して防災対応をする必要があります。

 低気圧がまだ離れている段階から風や雪が強くなりますので、早めの対応が必要です。

 また、低気圧の中心付近では意外と風が弱いので油断しがちですが、低気圧が離れてから再び風が強くなって災害が発生することがあります。

5年前の3月2日の北海道

 今から5年前の平成25年(2013年)3月2日も、低気圧がオホーツク海で急速に発達し、北海道各地は突然の猛烈な吹雪に見舞われ、視界がほとんど効かなくなるホワイトアウトとなって車に閉じ込められ、多くの人がなくなっています。

 このときは、南岸低圧はなく、日本海の低気圧が北海道付近で急発達したのですが、低気圧の中心付近より周辺部の等圧線の間隔が狭くなっています(図3)。

図3 平成25年(2013年)3月2日9時の地上天気図
図3 平成25年(2013年)3月2日9時の地上天気図

 北海道の3月2日は、注警報や気象情報はでていましたが、低気圧が接近・通過していた午前中は等圧線の間隔が広いために強い風が吹かなかったことから、安心して車で出かけた人が多かったと言われています。しかし、午後の帰宅前に等圧線の間隔が狭い領域が到来し、猛吹雪に襲われています。

北海道東部の大雪

 北海道東部で大雪となるのは、今回のように、低気圧が接近して多量の暖かくて湿った空気を持ち込んだ時です。

 北海道は気温が低いことで乾いた雪(サラサラした雪)が多いのですが、北海道東部の大雪は雪としては温度が高い湿った雪が70センチも降る見込みです。

 湿った雪は樹木や電線に付着しやすいので着雪害が拡大する恐れがあります。また、重いので、農業施設などの被害も懸念されますし、除雪作業も大変です。

台風以上に危険な低気圧

 今回の発達した低気圧に対し、「台風並みに発達した低気圧」と警戒が呼びかけれれていますが、台風の場合は、風が強いのは中心付近だけです。

 低気圧は、中心付近だけ比べれば台風より風が弱いのですが、中心から離れたところで強い風が吹くことがあり、防災対応は難しくなります。

 

 「台風並みに危険な低気圧」ではなく、「台風以上に危険な低気圧」です。低気圧の中心位置だけでなく、低気圧に伴う風や雪の広がりにも注視する必要があります。

図1、図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事