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再び寒気南下で日本海側の大雪 豪雪のあとは寒気南下も暖気北上も危険

饒村曜気象予報士
福井地方気象台露場に出現するキジ

再び大雪

 福井県は強い寒気南下で豪雪となり、県の大動脈である国道 8号線が3日間もストップするなど大災害が発生しました。その後、寒気の南下は弱まりましたが、小休止です。本州の南岸を低気圧が通過したあとは寒気が再び南下し、3連休明けの2月13日頃まで西高東低の冬型の気圧配置が強まって大雪の恐れがあります。

 寒気南下が弱まったときに雪の表面が少し融け、それが凍結したあとの大雪です。氷の上に新雪が積もりますので、表層雪崩(新雪雪崩)が起きやすい状態になります。表層雪崩は、思いがけない場所で発生したり、思いがけない距離を駆け下ったりすることから死者が多い雪崩です。

 豪雪のあとに、寒気が南下すると新雪雪崩に注意する必要があります。

 逆に、豪雪のあとに、暖気が北上すると積雪が地面付近から滑り落ちる全層雪崩(底雪崩)に注意する必要があります。表層雪崩のように思いがけない距離を駆け下ることはありませんが、大きな破壊力があります。また、暖気が北上すると、後述するように融雪洪水に注意する必要があります。

 豪雪のあとは、その雪が融けるまでは、寒気南下でも、暖気北上でも注意が必要です。

荒川水門

 福井地方気象台は福井市街地を流れる足羽川の右岸にあり、ときどきキジが出現する自然が残っている場所に位置しています。そして隣には荒川水門があります。

 福井市は徳川幕府の親藩である松平藩の城下町として栄えました。城下では九頭竜川という高いところにある大きな川から水を引いて利用し、低いところにある足羽川という大きな川に排水していました。

 荒川水門は、城下町の排水などを集めた荒川と足羽川の合流点に昭和30年(1955年)に作られた水門で、足羽川の水位が高くなったときに閉めることになっています。しかし、設置から約50年、排水ポンプをフル稼働させて市街地の内水氾濫を防ぐことはあっても、水門を閉めるという最終措置には至りませんでした。

 その荒川水門が、平成16年(2004年)に二回閉鎖となっています。

 2月の融雪洪水のときと、7月の福井豪雨のときです。

 7月の福井豪雨のときは、足羽川左岸の堤防が決壊して大きな被害が発生しました。決壊場所は、荒川水門や福井地方気象台のちょうど対岸です。

 しかし、足羽川右岸は荒川水門の閉鎖によって足羽川からの大量の水の流入を防いでいます。荒川から足羽川への排水ができなかったことから右岸も内水氾濫で水浸しとなっていますが、さらなる被害の拡大はありませんでした。

 福井地方気象台も床上浸水でしたが、ギリギリ通常業務を普段通りに継続できる床上浸水でした。このため、気象台で被害があったことは、最後までマスコミに報じられることはありませんでした。

 2月の融雪洪水のときは、あわや堤防決壊というところまで水位が上がりましたが、河川敷にゴミが大量に流れ着いて掃除が大変だったという被害があった程度で、融雪洪水のことは忘れられています。

福井豪雨の年の融雪

 平成16年(2004年)2月22日の福井県は、日本海にある低気圧に向かって暖気が入り、20度近くまで気温が上昇し、前線通過時にはまとまった雨が降っています(図1、図2)。

図1 福井市の気象(平成16年(2004年)2月)
図1 福井市の気象(平成16年(2004年)2月)

 このため、足羽川上流の山地の雪解けが一気に進み、下流の福井市付近の水位が急上昇したのです。

図2 地上天気図(平成16年(2004年)2月22日9時)
図2 地上天気図(平成16年(2004年)2月22日9時)

 福井県などの北陸地方では、これから大雪と雪崩に警戒が必要ですが、春先に向けては、融雪洪水にも警戒が必要です。

図1、図2の出典:気象庁ホームページ。

タイトル画像:著者撮影。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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