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記録的な大雪が降らなくなった北陸地方と、降るようになった東北地方

饒村曜気象予報士
気象衛星「ひまわり」の赤外画像(平成29年12月28日8時、気象庁ホームページ)

積雪の深さのランキング

 西高東低の冬型の気圧配置が続いており、北日本や北陸地方で積雪の深さが増えています(図1)。

図1 地上天気図(平成29年12月28日6時)
図1 地上天気図(平成29年12月28日6時)

 気象庁が観測している積雪の深さのランキングでは、北海道や東北地方が上位に入っており、北陸地方は上位10箇所には入っていません。

 平成29年12月28日7時現在の積雪の深さのランキング(7位までを表示)は、次の通りです。

平成29年12月28日7時現在の積雪

1 青森県酸ケ湯 246センチ

2 北海道上川地方朱鞠内 192センチ

3 北海道上川地方幌加内 168センチ

4 北海道上川地方音威子府 166センチ

5 山形県肘折 162センチ

6 福島県桧枝岐 157センチ

7 岩手県湯田 142センチ

 地球温暖化で気温が高くなると、大気中の水蒸気量が増え、降水量が多くなります。冬季の北陸地方も降水量が増えますが、雪ではなく雨で降ることが多く、記録的な大雪にはなりにくくなっています。

 これに対し、北日本では、気温が高くなるといっても、今の温暖化では雪で降る気温ですので、記録的な大雪となることもあります。

降雪の深さのランキング

  明治27年(1894年)から観測がある青森県青森と、大正11年(1922年)から観測がある新潟県高田について、気象庁がホームページで公開している降雪の深さの上位10位を見ると、高田では昭和61年(1986年)が最も新しい記録であるのに対し、青森では平成17年(2005年)など、平成になってからの記録が2つも入っています(表)。

表  青森県青森と新潟県高田の降雪の深さの上位10位
表  青森県青森と新潟県高田の降雪の深さの上位10位

青森市の大雪

 青森市は、人口が30万人クラスの都市では、世界で最も雪の多い都市のようで、昭和20年(1945年)2月21日の積雪の深さが209センチであったように、積雪が2メートルを越したことがあります。

 近年、暖冬傾向で積雪が少ないのですが、それでも年によっては、身長ほどの積雪を観測することがあります。図2は、青森で積雪1m87cmを観測した平成17年(2005年)3月3日の前日、3月2日の気象衛星「ひまわり」の可視画像です。

図2 気象衛星「ひまわり」の可視画像(平成17年3月2日15時の可視画像)
図2 気象衛星「ひまわり」の可視画像(平成17年3月2日15時の可視画像)

 平成17年(2005年)の青森市の大雪のときは、冬型の気圧配置が西から弱まり、寒気が流れ込んでいることを示す積乱雲の雲列は日本海北部にしかありませんが、日本に向かってV字型に開いているように見える雲列の一番南側が青森市にかかっています。

 ここは、周囲から空気が集まり、より発達している雲列です。この年は年始から冬型の気圧配置が断続的に現れ、青森県等の東北北部や北陸地方の山沿いでは大雪被害が発生し、防衛庁(現防衛省)では新潟県と青森県の除雪支援を行いました。

現在の気象衛星

 気象衛星「ひまわり」からは、平成17年(2005年)の青森市の大雪のときのようなV字型に開いているような雲列は見られませんし、日本海で発生する雲の位置が24時間前と比較すると、大陸から離れてきました(図3)。

図3 気象衛星「ひまわり」の赤外画像(左:12月27日8時、右:28日8時)
図3 気象衛星「ひまわり」の赤外画像(左:12月27日8時、右:28日8時)

 今回の記録的な大雪は峠を越しましたが、冬型の気圧配置が続きますので、北日本や北陸地方は引き続き雪に警戒が必要です。

 気温が低いので積雪はなかなか減らず、雪に苦労する年末年始になりそうです。

タイトル画像、図1、図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

表の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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