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上陸の可能性もある台風22号 南東斜面は特に大雨に注意

饒村曜気象予報士
気象衛星「ひまわり」の赤外画像(平成29年10月29日0時)

10月の台風

 北上して沖縄本島と奄美大島を襲った台風22号は、進行方向を北から北東に変え、加速しています(図1)。

図1 台風22号の進路予報(平成29年10月29日0時の予報)
図1 台風22号の進路予報(平成29年10月29日0時の予報)

台風の情報については、常に最新のものを入手して下さい。

 10月に日本列島に向かう台風は、沖縄本島がある北緯25度付近までは自転車並みの速度での北上ですが、北緯25度を越えて北上すると、進路を東に変え、急加速するのが一般的です。平均的には、奄美大島付近では10ノット(時速20キロメートル)でも、東海沖では30ノット(時速60キロメートル)に加速します(図2)。

図2 平均進行速度の海域別分布(10月に北東から東へ向かう台風、単位ノット)
図2 平均進行速度の海域別分布(10月に北東から東へ向かう台風、単位ノット)

 台風22号も、奄美大島付近にいたときは時速35キロメートルでしたが、その12時間後の四国沖では時速45キロメートル、24時間後の東海沖では時速55キロメートルと加速しています。その後も、さらに加速し、明日(30日)には温帯低気圧に変わる見込みです。

台風が10月に2個目の上陸か?

 台風22号の予報円の中心は、東海沖から関東の南海上を東進する予報ですが、予報円の北側は、紀伊半島から関東地方が含まれています。

 つまり、少し北上すれば上陸の可能性がある予報です。

 台風21号は、台風の統計がとられている昭和26年(1951年)以降では、歴代3位の遅さで上陸しました(表1)。

表1 上陸日が遅い台風(昭和26年(1951年)以降、上陸日が同じ場合は上陸時刻にかかわらずタイ記録とした)
表1 上陸日が遅い台風(昭和26年(1951年)以降、上陸日が同じ場合は上陸時刻にかかわらずタイ記録とした)

 台風22号がもし上陸すると、歴代2位の遅さとなり、かつ、10月に2個目の上陸となります。10月以降に2個の台風上陸となると、昭和26年(1951年)から昨年までの66年間で4回しかありません(表2)。理由はわかりませんが、4回のうち、3回は平成になってからと、近年は10月以降に複数の台風が上陸した年が増えています。

表2 台風が10月以降に2個上陸した年
表2 台風が10月以降に2個上陸した年

大雨は南東斜面

 沖縄県や奄美大島では台風22号の本体の雨雲により、紀伊半島から九州南部は台風22号によって活発となった秋雨前線により大雨となっています。

 特に、宮崎県では、赤江で24時間降水量が393ミリと観測開始以来の記録、油津で267ミリと10月としての記録を観測しています(図3)。

図3 24時間降水量の日最大値(平成29年10月29日0時40分現在)
図3 24時間降水量の日最大値(平成29年10月29日0時40分現在)

 南海上を台風が通過するときは、台風の風が吹き付ける南東斜面で大雨となります。九州では宮崎県、紀伊半島では三重県が大きな山脈の南東斜面に位置する県です。

 台風の東進に伴って東日本から西日本の太平洋側では大雨に警戒が必要になります。東京でも大雨警報の可能性があります(図4)。

図4 東京地方の警報級の可能性(平成29年10月28日17時発表)
図4 東京地方の警報級の可能性(平成29年10月28日17時発表)

 特に、東日本から西日本の太平洋側で、山の南東斜面にあたる地方では、大雨に警戒が必要です。

タイトル画像、図1、図3、図4の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:饒村曜(1980年)、台風に関する諸統計(第2報)進行速度、研究時報、気象庁。

表1、表2の出典:気象庁ホームページ、国立情報学研究所(デジタル台風)をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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