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10月の台風上陸が多い紀伊半島 上陸地点より東側の湾は高潮に警戒

饒村曜気象予報士
気象衛星「ひまわり」の赤外画像(平成29年10月22日3時00分)

台風21号が加速

 台風21号が加速しなら北東に進み、勢力を保ったまま紀伊半島から東海地方に上陸の可能性もあります(図1、図2)。

図1 台風の進路予報(平成29年10月22日4時)
図1 台風の進路予報(平成29年10月22日4時)
図2 台風21号の暴風域に入る確率(平成29年10月22日3時の予報)
図2 台風21号の暴風域に入る確率(平成29年10月22日3時の予報)

  台風21号の情報については、常に最新のものを入手して下さい。

 10月に北緯25度より高緯度では、北東、東北東、東に進んでいる(東に向かっている)台風の平均速度は20ノット(時速では約40キロメートル)以上です。

 今後は、台風21号が加速し、あっという間に接近しますので、台風情報に注意が必要です。

 台風21号は10月23日(月)未明にも紀伊半島から東海地方に上陸の可能性がありますが、もし上陸すると、台風の統計資料が整備されている昭和26年(1951年)以降では、歴代3位になります(表1)。

表1 上陸日時が遅い台風(昭和26年(1951年)以降)
表1 上陸日時が遅い台風(昭和26年(1951年)以降)

 上陸が遅い台風のほとんどは、紀伊半島に上陸です。

上陸地点より東側の湾は高潮に警戒

 台風が上陸した場合、上陸地点より東側の湾では、台風の風が海から陸に吹くことから大きな高潮が発生する可能性があります。

 10月20日が新月ですので、現在は潮位が一番高くなる「大潮」に近い潮位です。加えて、黒潮の大蛇行が発生中で、関東から東海地方は潮位が普段より10から20センチメートル高くなっていますので、満潮時と台風接近が重なると非常に危険です。

高潮には厳重な警戒が必要です。

4個連続で紀伊半島上陸

 平成2年(1990年)の台風上陸数は、平成5年(1993年)と同じ6個で、平成16年(2004年)の10個の次いで台風上陸が多い年です。

 そして、平成2年(1990年)の6個目の上陸台風が、台風28号で、11月30日に和歌山県の白浜町の南に上陸しました。

 個人的ですが、当時、気象庁予報課で予報班長をしていました。

 気象庁予報課は6班あり、通常は6日に1度の割合で日勤当番と夜勤当番を行い、北西太平洋の海上警報や全国の予報官への指示などを行っていますが、台風が日本に接近した時は、台風臨時編成をしますので、3日に1度の割合で日勤当番と夜勤当番を行っていました。

 そして、台風臨時編成では台風の上陸情報の担当は予報班長でした。

 台風の上陸情報を書く確率は6分の1ですが、平成2年(1990年)の台風28号の上陸情報を書きました。このとき思ったことは、「あと半日あとなら、12月の上陸台風になった」ということと、「また白浜へ上陸した」でした。

 というのは、偶然ですが、当番の巡り合わせから、紀伊半島に上陸した台風19号、20号、21号の上陸情報を全て書いていましたので、4個連続の台風上陸情報でした(表2)。

表2 平成2年(1990年)に紀伊半島に上陸した4つの台風
表2 平成2年(1990年)に紀伊半島に上陸した4つの台風

 紀伊半島南部では大きな都市が田辺市しかなく、観光名所の白浜町が台風情報での上陸地点の表現として使いますが、このときは、上陸地点の表現に苦労しました。台風28号の上陸地点の表現は、台風19号と同じく「白浜町の南」にしました。

 後に、和歌山地方気象台に台長として赴任しましたので、和歌山とはこのときから因縁があったのかもしれません。

タイトル画像と図1、図2の出典:気象庁ホームページ。

表1、表2の出典:気象庁ホームページなどをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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