移動性高気圧が通過 秋の気象・気候と健康
移動性高気圧のあとは気圧の谷
春から夏に移り変わったときに梅雨があったように、夏から秋に移るときに秋雨があります。このため、「日本は四季 (春・夏・秋・冬)」ではなく、「六季 (春・梅雨・夏・秋雨・秋・冬)」という見方もできます。
秋雨前線は日本の南海上に南下し、沖縄を除いて、ほぼ晴天をもたらした移動性高気圧が日本の東海上に去り、その後にある移動性高気圧も日本列島を通過しつつあります(図1)。秋雨という季節が終わって、秋という季節に入っています。
そして、26日(火曜)以降は、低気圧などの気圧の低い領域が接近し、全国的に雨や曇りの天気になりそうです(図2)。秋は天気が周期的に変化しやすくなり、変化しているうちに次第に気温が下がって冬に向かいます。
暦の季節
私たちの生活は、太陽の動きに基づいた太陽暦を用いていますが、昔は月の運行に基づいた太陰暦を用いていました。月の形を見れば日付が分かるなどから便利でしたが、太陽の位置と無関係であるため、暦と四季の周期との間にはずれが生じ、農耕等では不便でした。
そこで中国の華北地方では、古代から季節を知る目安として、太陽の運行を元にした二十四節気と、節気を初候、次候、末候に分けた七十二候が暦に導入されました。
これが日本にも伝わり、日本でも農作業等で重宝されました。ただ、大陸の気候ですので、二十四節気で表現されている説明は、海に囲まれた日本の気候に比べると、約一ヶ月進んでいますが、節気名はそのまま取り入れています。
立秋(8月8日頃)といっても、まだ暑い盛りですし、白露(9月8日頃)といっても、平地で露が降りるには少し早いと思います。個人的には、日本人が暦の季節をそのまま修正しないで使っていたのは、季節の先取りとして使い、現象がおきる前に対策をとるという昔の人の防災上の知恵ではないかと思っています。
ただ、七十二候については、説明を少し変えて、より使いやすいものにしてきました(表)。
秋の気象病と季節病
秋は春についで気圧や気温の変化が大きい季節です。リュウマチや喘息など、そのときの気象と関係がある病気(気象病)は、気圧や気温が急激に変化するときに病状が悪化しやすくなるといわれていますので、春についで秋もそのような現象がおきます。気象要素の値そのものとは大きな相関関係がないようです。
また、秋という季節は、次第に気温が低下し、昼が薄暗くなりますので、人間の情緒を沈静化し、「もの思いにふける秋」になります。この程度が過ぎると鬱病(うつびょう)という季節病になります。
さらに、秋は柿などの新鮮な果物を初め、食べ物が豊富で美味しいので、食欲の秋となり、夏の疲れを癒(いや)しますが、食べ過ぎると、肥満という季節病になります。
「柿が赤くなると医者が青くなる」という諺(ことわざ)があります。柿が色付く頃は食べ物が豊富で過ごしやすくなるので病人が少ないという説と、柿は栄養価が高く、ビタミンCなどが豊富なので、病気に掛かりにくいという説がありますが、両方とも正解でしょう。このように、秋には健康と食べ物についての諺が、いろいろと残されています。
秋の気象病や季節病に注意し、秋の実りで夏の疲れを早く癒して欲しいと思います。
図の出典:気象庁ホームページ
表の出典:饒村曜(2012)、お天気ニュースの読み方・使い方、オーム社。