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高校野球後半は猛暑日のない予報 猛暑順延ルールがあっても良いのでは

饒村曜気象予報士
ヘッドスライディングする選手(写真:アフロ)

高校野球の歴史

 大正4年(1915年)8月18日、大阪府がないの豊中球場で第1回の全国中等学校優勝野球大会が開催されています。

 全国73校から予選を勝ち抜いた10校が参加し、優勝は京都二中でした。

 この、中等学校野球大会は異常な盛り上がりをみせ、東洋一の大球場を作る計画が産まれます。この計画と、台風によって堤防が決壊し、大きな被害が発生した武庫川の改修工事が重なって生まれたのが、兵庫県西宮市の甲子園球場です。

 甲子園球場は、第10回以降の主会場となっています。

 昭和23年(1948年)から、学制改革によって中等学校が高等学校に変わっていますので、大会名が「全国高校野球選手権」と変わり、現在に至っていますが、ほとんどの年で暑さが話題になります。

今年の高校野球の暑さ

 平成29年の高校野球は、8月7日に開会式を行う予定でしたが、台風5号の影響で8月8日に延期となっています。また、8月15日は雨天中止となっています。

 このため、閉会式は予定より2日遅れの8月23日となっています。

 高校野球の開催期間中の最高気温の平均は、約32度と言われていますので、今年は、平年並みの暑さではないかと思われます(表1)。

 大会前半で最高気温が一番高かったのは、8月11日の35.2度ですが、沖縄の興南高校と和歌山の智弁和歌山の対戦中でした。

表1 大会前半の神戸の日最高気温(2017年)
表1 大会前半の神戸の日最高気温(2017年)

3回戦以降の暑さ

 大会前半は最高気温が35度以上という猛暑日は1日だけですが、8月18日から始まる三回戦以降では、猛暑日は予想されていません。

 週間天気予報では最高気温の予想に幅を持たせているのですが、その幅の上限でも猛暑日の予想にはなっていません(表2)。

 準決勝が行われる8月22日の雨が気になりますが、極端な暑さが予想されていませんので、選手の熱闘が期待されます。

表2 大会後半の週間天気予報
表2 大会後半の週間天気予報

過去の記録

 平成28年(2016年:昨年)の高校野球は、8月8日に、甲子園球場の近くの神戸地方気象台では、日最高気温37.2を観測しました。

 これは、平成6年8月8日の38.8度につぐ、大会期間中の最高気温です(表3)。平成6年のときは気象台の予報課長として勤務していましたが、選手や応援団の熱射病が心配しながら最高気温を予報していた記憶があります。

 神戸で最高気温が体温を超えた37度以上という日が、これまでに10回あります。

 このうち、高校野球の大会期間中に記録したのが4回です。

表3 神戸の最高気温の記録
表3 神戸の最高気温の記録

猛暑順延を提案

 気象台の気温観測は、日射の照り返しがなく、日陰の風通しの良い場所での観測ですので、日射の照り返しがあり、日陰ではなく、風通しが悪い場所では、気象台の気温観測より、気温は高くなります。

 つまり、高校野球の大会期間中に体温を超えた日は、これまでに4日ではなく、もっと多いと考えられます。

 真夏の炎天下で、投手は連投になることもしばしば。応援団は炎天下に立ちっぱなし。甲子園の高校野球ではありませんが、高校の野球部の生徒が熱中症で死亡しています。

 選手や応援団の健康を考えたら、雨が降ったら雨天順延になるように、猛暑になったら猛暑順延があっても良いのではないかと思います。

 

 雨天順延は夕方まで待っても試合再開になるかどうかはわかりませんが、猛暑順延は夕方になれば試合再開が可能です。ナイターになるかもしれませんが、試合日程が延びることはありません。一考の余地あると思います。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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