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台風5号が四国接近 高潮災害以外の災害は台風中心よりも広がりに関係

饒村曜気象予報士
気象衛星「ひまわり」の赤外画像(平成29年8月7日6時)

 台風5号が四国地方にかなり接近し、近畿地方に向かっています。

 どこに上陸するか等、台風の位置に注目されがちですが、高潮以外の災害は中心よりも広がりに関係しています。

台風位置が強調されるのは高潮

 台風5号は、当初、8月6日の昼過ぎには九州南部に上陸と見られていましたが、進路をやや東寄りにとり、九州上陸はありませんでした。

 その後、台風5号は四国に接近し、四国に上陸、あるいは四国をかすめて紀伊半島上陸の可能性もあります(図1)。

図1 台風の24時間詳細予報(平成29年8月7日6時)
図1 台風の24時間詳細予報(平成29年8月7日6時)

 台風が接近すると、防災関係者は、高潮防災の観点から、台風の中心位置はどこにあるかということに注目します。

 高潮を引き起こす主な原因は2つあります。1つは、低い気圧による海面の吸い上げです。気圧が1ヘクトパスカル低くなると、海面は約1センチ上昇します。もう1つの原因は風による吹き寄せで、風が海から陸に向かって吹いているときは、吹き寄せによって海面が高くなります。風が強くなれば、この吹き寄せ効果は急激に大きくなります。

 大きな高潮になるかどうかは、湾の奥に向かって風が吹くかどうかで決まるため、台風の中心位置がどこにあるかというにが重要な情報だからです。

図2 高潮が大きくなる場合の説明図
図2 高潮が大きくなる場合の説明図

 太平洋側沿岸の多くの湾のように、南に開いている湾では、図2のように台風が通過すると大きな高潮となります。台風の進行方向の右側は、左側に比べて風が強いと言われますので、南に開いている湾のすぐ西側を北上したときは、台風の右側の強い風が湾の奥に向かって吹くことになり、大きな高潮が発生します。

 しかし、高潮以外の災害は、台風の中心よりも、台風の風や雨の広がりに関係しています。

暴風域の半径の予報

台風の中心付近で、風速が毎秒25メートル以上の風が吹いている範囲が暴風域です。

暴風警戒域は、台風が予報円の中を進んだ場合、暴風域に入る可能性のある場所です。

気象庁は暴風域の半径の予報をしていませんが、簡単な計算から暴風域の半径を求められます。というのは、暴風警戒域の半径は、暴風域の半径と予報円の半径の和であるからです。

従って、暴風警戒域は、暴風域が大きくなる(台風が発達する)ほど、予報円が大きくなる(予報が難しくなる)ほど大きくなります。

暴風警戒域の半径=暴風域の半径+予報円の半径 より、

暴風警戒域の半径ー予報円の半径=暴風域の半径  となります。

台風5号の強度予報では、12時間後の予報円の中心が大阪付近にくる18時頃まで、最大風速は毎秒30メートルとかわりがありません。しかし、この頃から暴風域の大きさが小さくなり、18時間後の8月8日0時には暴風域がなくなり、暴風警戒域もなくなっています(表)。

表 台風の24時間強度予報(8月7日6時)
表 台風の24時間強度予報(8月7日6時)

台風5号の暴風域と雨の範囲

台風第5号の暴風域の範囲が狭くなる予想であっても、まだ広い範囲が暴風域であり、警戒が必要です。

また、台風の中心をとりまく雨雲がかかる地域は大雨になりますが、加えて、台風の東側では、台風から少し離れていても、南から暖湿気流が流入し、大雨の可能性があります。

台風周辺では暴風雨に警戒が必要なことは言うまでもありませんが、台風の動きが早くありません。

西日本や東日本の広い範囲では、8日にかけて、暴風や高波、土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に厳重な警戒が必要です。

台風の中心付近だけが警戒ではありません。

図2の出典:饒村曜(2014)、天気と気象100 一生付き合う自然現象を本格解説、オーム社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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