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台風5号が九州南部へ 過去の死者が多い台風は土日を中心に上陸

饒村曜気象予報士
気象衛星「ひまわり」赤外画像(平成29年8月6日0時)

台風5号が日曜日上陸

 台風5号が鹿児島県の屋久島近海にあって、動きが遅くなっています。

 このため、九州南部・奄美地方では、海上を中心に猛烈な風が吹き、海は猛烈なしけとなっています。

 また、1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨が降り続き、奄美地方では記録的な大雨となっています。大雨の範囲が島の上と狭いので特別警報は発表になりませんが、気象庁では奄美地方や屋久島などに対して、「50年に一度の大雨」ということで特別警報並みの警戒を呼びかけています。

 さらに、積乱雲が発達したことで、奄美地方などでは、落雷や竜巻などの激しい突風に注意が必要な状況になっており、記録的短時間大雨情報や、竜巻注意情報が発表となっています(表)。

表 鹿児島県で発表された記録的短時間大雨情報・竜巻注意情報(平成29年8月5日)
表 鹿児島県で発表された記録的短時間大雨情報・竜巻注意情報(平成29年8月5日)

 台風5号は、今後、強い勢力を維持したままゆっくり北上する見込みです。

 このため、台風5号は8月6日の朝には九州にかなり接近し、その後、上陸するおそれがあります。つまり、日曜日上陸という危険な台風になりそうです(図1)。

図1 台風の進路予報(8月6日3時)
図1 台風の進路予報(8月6日3時)

日曜に上陸する台風は危険

 大昔の台風については、災害についての詳細な記録が行われていませんので、台風資料が整備された昭和26年(1951年)以降に日本に上陸した台風でみてみます。

 昭和26年から今年の台風3号まで、193個の台風が日本に上陸していますが、そのうち死者・行方不明者100人以上という大惨事をもたらした台風は13個あります。

 伊勢湾台風や洞爺丸台風、狩野川台風など、なだたる名前の台風が含まれていますが、この13個の台風は、すべて金曜日〜月曜日の上陸です(図2)。

 火曜~木曜には、死者・行方不明が100人以上の台風が上陸しません。

 さらにいえば、死者数の多かった昭和9年の室戸台風は金曜日、昭和20年の枕崎台風は月曜日、昭和22年のカスリーン台風は月曜日に上陸しています。

図2 台風が上陸した曜日別の死者が100名以上の台風
図2 台風が上陸した曜日別の死者が100名以上の台風

 気象庁では、台風の気圧が一番低い場所(気圧中心)が、九州、四国、本州、北海道という4島上にきたときを「台風上陸」と定義しています。沖縄本島など島の上を通過した場合や、岬の先端を横切って短時間で再び海に出る場合も上陸とはしていません。このような定義において、日本に上陸した台風の平年値(昭和56年から平成22年の平均)が2.7個です。 

 そして、上陸日を曜日で分類すると、どの曜日もほぼ7分の1の数が上陸しています。

 つまり、台風がカレンダーを見ながら、週末には日本観光にゆきたいと考えているからではありません。

 台風が曜日を選んで上陸するのではなく、金曜~月曜に上陸した台風は、死者数が増加する傾向があるからです。

 土曜・日曜はレジャーなどで、台風への関心がうすれがちになることや、防災機関の機能が十分発揮できないことがこの遠因となっていると考えられています。

深夜に上陸する台風も危険

 台風が上陸した時刻を調べると、夜間のほうが昼間より1.5倍程度多くなっています。

 これは、太陽からの日射で陸地が加熱されている影響とも言われていますが、この上陸数の昼夜の割合の差以上に、大惨事をもたらした台風が上陸するの割合は夜間で多くなっています。

 特に、0~3時に上陸した台風で顕著です。多くの人が睡眠中で、避難などが遅れがちになることや、防災機関の機能が十分に発揮できないことが懸念されている要注意の時間帯だからです。

図3 台風が上陸した時刻別の死者が100名以上の台風
図3 台風が上陸した時刻別の死者が100名以上の台風

人的被害は減らせる

 台風災害での物的被害は不可抗力の面もあり減らすことが難しい場合もありますが、台風に不意打ちはありませんので、人的被害は減らすことができます。

 少なくとも、金曜~月曜に上陸する台風は、火曜~木曜に上陸する台風なみに、夜間上陸する台風は,昼間上陸する台風並みには減らすことはできます。

 台風5号のように、動きが遅い台風は、強い雨や風の期間が長くなり、危険な台風です。

 台風5号が日曜上陸だからといっても、過去の台風のように大きな災害にしてはならないと思います。

       

タイトル画像と図1の出典:気象庁ホームページ。                 

図2、図3の出典:饒村曜(2014)、天気と気象100 一生付き合う自然現象を本格解説、オーム社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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