台風5号が西日本接近 進路である程度決まる大雨の分布
日本の南海上をゆっくり進んでいる台風5号は、台風を動かす上空の風が弱く、進路が定まっていませんでしたが、ようやく進路が「西日本に接近」と絞られてきました。
このため、大きかった予報円が少し小さくなりました。
台風5号の進路予想
台風5号は、時速10~15キロメートルと自転車並みの速度で北西から西北西に進んでおり、予報円の中心を通れば、奄美大島近海を通って東シナ海に入り、その後、九州を通って日本海に進みます。
予報円が小さくなってきましたので、九州上陸の可能性が高まったと言えそうです(図1)。
鹿児島県奄美大島北部で暴風域に入る確率は4日の夜には80%を超えています。また、鹿児島市でも6日の午前中の暴風域に入る確率は30%を越えてきます(図2)。
西日本では、これから台風による暴風と雨に対する警戒が必要ですが、雨については、台風の中心付近だけでなく、台風から少し離れた場所でも警戒が必要です。
台風の雨は4つに大別
台風による降雨を大きく分類すると、台風域内の雨である「台風中心のうず性降雨」と「地形性降雨」、
台風内だけとは限らない「前線による雨」と「らせん状に台風を取り囲む降雨帯(アウターバンド)による雨」の4つに大別できます。
一般に、夏の台風の雨は台風中心の「うず性降雨」と「地形性降雨」が主で、これに「台風のアウターバンド」による雨が一緒になったものす。このため、夏の台風の雨は中心付近が多く降りますが、梅雨期や秋は、これに「前線による雨」が加わるため、広範囲で多くの雨が降ります。
ここで、「台風のうず性降雨」というのは、台風の規模にもよりますが、一応中心から200~300キロメートルの範囲で強く降っています。台風中心付近の渦が強まれば(最大風速が大きくなれば)、それだけ中心付近の上昇気流が強まって水蒸気がさかに雨粒となり、その結果として、強い雨が降ります。「風の強い台風ほど雨も多い」ということです。
また、「地形性降雨」とは、地形の起伏によって大気が強制上昇させられることにより、山の風上側に降る雨のことで、風速が強ければ強いばど,地形の傾きが急であればあるほど強い雨になります。一般に山岳地方の風上側では、平地に比べて2倍~3倍も降ることがあるのは、この地形性降雨のためです。
台風の上陸または接近により、この4つの降雨が重なって台風の雨となるのですが、このうち主たる雨であるうず性降雨や地形性降雨は、台風の進路が似ていると似た降り方をしますので、台風の降雨分布は、台風の進路が似ていると似た分布になります。
台風進路別の大雨が降る地方
台風5号の雨は、日本付近に前線がなく、典型的な夏の台風です。
図3は、昔調査した、総雨量が500ミリ以上の豪雨をもたらした台風の割合です。
明治25年(1892年)から昭和53年(1978年)の336台風について、タイプ別に、図示したものです。北西進して九州北部に進む台風では、台風が通過する九州・四国地方よりも、東海地方で500ミリ以上の雨が降る割合が大きい、という特徴があるのがめだちますが、ほとんどは、進路に向かって右側で値が大きくなっています。
紀伊半島から九州南部の雨に注意
北上して九州を襲う台風の場合、総雨量が500ミリ以上になる確率は、九州南東部で40%と高いのですが、紀伊半島の南東部でも30%と高い確率です。
九州を回り込むように日本海に入る台風の場合でも、総雨量が500ミリ以上になる確率は、九州南東部、四国南東部、紀伊半島南東部で20%です。
つまり、統計的には、台風5号が北上して九州を直撃、あるいは、九州を回り込むように日本海に入る場合、いずれにしても、紀伊半島から九州南部では大雨に警戒が必要となります。
図3の出典:饒村曜(2012)、天気ニュースの読み方・使い方、オーム社。
他の図の出典:気象庁ホームページ